「Set Off The Speaker」以外はインストであり、あくまでもきたる新作に向けての前哨戦。『Big Farm』に向けてまずは小農場を案内する、ヘッズに対するオリエンテーションといったところだ。
ベースとギターが仲良しな「In Da Farm」が力強い音圧と共に流れてくると、メンバーの入脱退を繰り返しながらも、やっぱり韻シストの強さは不動だと実感する。 "こんなHIPHOP お前好きか?" と問いかけながらまったり流す「Set Off The Speaker」にも、彼らの変わらぬ姿勢が見て取れて安心する。揺らがないベースの部分での円熟味を感じさせながらも、 "過激なバンド いつも挑戦" と歌うように、本作からはベースのSHYOUがボーカルで参加することもあるようだ。実際この曲でもその歌声でオーガニックな味付けを施しており、彼らのスタイルのうち、特に「焔」や「Relax Oneself」のような、スロウな曲において幅が広がりそうだ。バンドの力量、2MCのラップ共に相変わらず揺るぎ無いので、こうしたほんのスパイスを混ぜ込みながら自身のスタイルを求道してくれれば、新作も期待出来るものになりそうだ。
腕の見せどころであるDISソング「さからうな!」はスタイルと抜群の親和性を見せたぶんまだ聴けるが、リリックが聴けるようになっても、今度はフロウの貧弱さが気になるようになる。オンビートで単調な乗せ方しか出来ないラップを延々と聴いていると、「LAST OF SAMURAI」で縦横無尽にビートを駆け巡る般若との差は、フロウに関しても大きいのかもしれないと思った。