RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
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DOOBEEIS / DOOBEEIS


1.BLACK BOARD
2.BLUE SHIT
3MEET SEX
4.FOOD
5.SUNSHINE BLEEZE
6.CRAZY NIGHT
7.CRAZY NIGHTRO
8.LONG FOREST
9.PURPLE RAIN
10.SEX BUS
11.ASS HOLE
12.MARIACCHIE
13.WATER ROOM feat.CHIYORI
14.GET HIGH CALL
15.WEWING
16.TAILS UP

★★★★★★★☆☆

KILOとのGoodfellaz解散後、CAMELBACK、O LA WU-TANGなどの一員として活動を続けてきたGOUKIと、THINK TANK率いるBLACK SMOKER RECORDS所属・Garblepoor!のMCとしてならすHIDENKAによるユニット・DOOBEEISの1stアルバム。老舗FILEレコードより、2010年12月17日発売。

どちらかと言えば、音楽的にはGOUKIの取り分よりも、HIDENKAによるGarblepoor!やTengokuplanworldの経験が多くつぎ込まれた作品と言えそうだ。DJ ITAOやTPWが共犯となってアブストラクトなビートの上に王道なサンプリングを施し、混濁の中で清流を紡ぐような、澄清で病んだ音色の数々が本作の多くを構成する。

そこに乗る2人のラップは相変わらず職人的な巧さを備える。しかし、リリックが意図的に断片的なものであるため、こういう「全部見せない」ことにアートを見出すような作品性が、HIPHOPヘッズの中でも万人受けするものでないことは明白だ。

日常の何気ない場面を言葉に収めて、壊して、再構築して、芸術にする。その日常のサンプリングによる破壊⇔想像(創造)活動に間違いなくHIPHOPは埋まったし、HIPHOPに日常は埋まった。ある意味かなり裏技ながら、本作はどの日常描写型のラッパーよりもHIPHOPと自らの日常の親和性を高めたとも言えるだろう。従って、曰く "想像を掻き立てるような音楽" を目指したその目的は間違いなく達成されている。しかし、だからこそこういう作品については、具体的な言葉を並べ立てて読者の方のイメージを固定してしまえばしまうほど、その成功した意図を侵害することになる。よって、「BLACK BOARD」、実験を全て詰め込んだ、本作を1曲に纏めたようなドゥームな長尺曲「Long Forest」、感覚主義の極み「Ass Hole」、散々聴き手を振り回しながら勝手に音楽享楽主義に果てる「WATER ROOM」辺りは特に良かった。これ以上はもう言わない。

結局、目的を完遂したからこそ、そのリリックに深く感銘を受けることも、聴いてて楽しくなることも、カッコ良さにドカンと打ちのめされることも無い。しかし、確かな技術と熱量のもとに変化球と抽象性だけで仕立てた本作は、ただ流れるだけで、そこにある色んなものを芸術に見せる柔らかな音楽だ。

なお、2011年2月11日には、ダブバンド・BOOTが本作を更に再解釈、再構築し直したリミックスアルバム『9th Dope』がリリースされる。DOOBEEISが、リスナーの感覚に更にスパイスを加えようと暗躍を続ける。

補論:
結局DOOBEEISがツボにハマったのは、イマジネーションのHIPHOPだからだと思う。フロウが発展するにつれて90年代の脚韻式は言葉足らずでリズムがないものとして淘汰され、日本語を無理なく詰め込めるフロウの潮流で、HIPHOPはより「自己を語る」ことに適した音楽になった。

それを武器に一気にパーソナルラップが台頭してきたわけだけど、フロウの発展に伴いそのリリックが具体的な描写を重視するにつれて、HIPHOPはどんどん聴き手にイマジンが必要な音楽ではなくなっていった。

そういう「言葉を伝えること」が出来るラップこそがさもHIPHOP的であるとされるような現代にあって、あえてその言葉を意図的に切り貼りし、聴き手の感覚を刺激しようとしたDOOBEEISのアルバムは、だからこそアートだし、イマジネーションのHIPHOPだと思う。

よって、まるごと現行のHIPHOPの特性を逆手にとって投げ返したみたいなこのアルバムは、難解だけど痛快で、日本語がラップに適応するにつれて反比例的に得てしまう芸術的(イマジネーション的)な弱点を補完するアルバムなのです。

2011/1/31 twitterの呟きより抜粋・一部改変

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18:46 | DOOBEEIS | comments(3) | -
P.P.P. / ピンゾロ a.k.a.鬼二家


1.イントロ 
2.青二才の疾走 
3.手の鳴る方へ 
4.ブランコ ~ピンゾロ風味ix~ 
5.埋め合わせ 
6.ホステス feat. 鎮座DOPENESS 
7.唇をかみしても 
8.P.P.P. 
9.ばくち feat. K.E.I 
10.ホステス ~閉店業務ix~ tracked by D-EARTH

★★★★★★☆☆☆☆

ラッパーの鬼、先日惜しくも解散した犬式からドラムにKakinuma、ベースにThe FUNKY PERMANENTSのTOMの3ピースHIPHOPバンド・ピンゾロの1stアルバム。2010年12月8日発売。

鬼の特徴は大別して「卓越した情景描写による、自身の生々しい経験のリリックへの投影」が可能であること、「独自の歌フロウが生み出す独特の昭和感」の2つに纏めることが出来る。元々はSac『Feel or Beef』収録「挨拶」のようなゴリゴリのセルフボースティングにも力を入れていた鬼だが、自身の半生を綴った初期のソロ作「小名浜」が熱烈な支持を得て以降、彼のラップは1stソロアルバム『獄窓』まで内面的な向きを強くし、前述の特徴のうち、前者を後者が補強する傾向が強まった。本作は鬼が後者の「昭和感」を全面に打ち出して創作すればどうなるかという、これまでの活動に対置出来る作品と言えるだろう。

そのため、ラッパーとしての鬼のウェイトは比較的軽く、その空気を纏って気ままに歌い、音を垂れ流す鬼達を楽しむ作品に仕上がっている。とっても解放された歌声で鬼がスウィングする「青二才の疾走」をどう捉えるかで、この作品への光の当て方が変わってくるだろう。

ただ鬼を辿ってこのユニットにまで手を出す人は、鬼のラップに元々潜むこうした性質を理解しているはずなわけで、その意味では既存のファン向けにやりきった企画ユニットとしては安全牌に当たるのかもしれない。むしろ歌とラップの狭間で心地良く揺れ動く「手の鳴る方へ」は「こっちサイド」に重点を置いた本作の鬼が最高点を叩き出した曲だろう。どう見ても同じ傾向の横滑りをしている吟遊詩人・鎮座DOPENESSとの「ホステス」も、下世話でねっとりしたグダグダ感が良い。ベースが前線に張って自己主張するサウンドも味がある。鎮座はスタイルの都合上当たり外れが激しい印象があるが、当てれば本当に良い一発を打つ。今回の鎮座はそっちだ。

鬼のファンが買う作品としては「唇をかみしめても」のような全編歌フロウの曲も悪くないし、つまりはそういう作品だろう。二次的に手を出す作品としては問題無いが、ゴリゴリラップする鬼を求めている方には不向きだろうし、初心者が風の噂を頼りに安易に手を出すと、クエスチョンマークが頭に浮かんだまま35分が過ぎる可能性はある。HIPHOPの持つフレキシブルな可能性のひとつを提示して見せたアルバムであることも決して否定出来ないのだけれど。


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00:56 | ピンゾロ a.k.a.鬼二家 | comments(6) | -
Greedy / MATCH


1.Intro (all about me) pro. RYU-JA for Nitemen
2.Greedy pro. JIGG for Gunsmith Production
3.My World. feat.GAS FACE pro. YANKEE-J
4.It's My Flow. feat.AKLO. Y's pro. SKY BEATZ
5.Chillin' Da Club pro. SKY BEATZ
6.無数の幸せ. feat.GEN ONE (Ice Dynasty. Light Hill). M-CITY(Light Hill) pro. JIGG for Gunsmith Production
7.One Two. feat.GAS FACE. RICK(CRIXX) pro. Nao The Laiza for Focus
8.Run This Hood. feat.YOOSEE pro. Raven Raver for Savanna Tokyo
9.On Fire pro. JIGG for Gunsmith Production
10.Pain pro. SKY BEATZ
11.Free pro. RYU-JA for Nitemen

★★★★★★★☆☆☆

沖縄普天間に生まれ育ち、単身東京に乗り込んで活動を続ける22歳の若手・MATCHの1stソロアルバム。2011年1月12日発売。

AKLO以降の潮流にあるいわゆるSWAGラップは、センス自慢というリリカルな側面はもちろん、その特徴はやはりラップの技法そのものにあるのではないかと思う。ラップに緩急は無く、曲の中ではほとんどラップスピードは変化しない。そこで単調さを抑制するために押韻主義でラップを組み立てると90年代のような脚韻ラップに立ち戻る。対してSWAGラップは一定速度のラップスピードの中で、フロウによる緩急(要するにラップスピードは変えないが、各所で言葉の「間」を変化させることでリズムを生む)、日本語の語順をそのままリリックに持ち込むこと、この2つを組み合わせることで「いかにスムースなフロウを生み出せるか」、その錬度によってスワッガーとしての技量が試されるジャンルと言える(そして、ラップ技法の点に限れば、これをずっと昔から持ちこんでいるのがラッパ我リヤのQであるということも、当ブログではしつこく主張していく)。

そして、ネット上にフリーアルバムを垂れ流しては奔放に楽しむのが規範とすら思えるようなところがあるSWAGラップにあって、突如正規のアルバムを打ち込んできたのがこのMATCHだ。GAS FACE、RICK(CRIXX)、ICE DYNASTYのGEN-ONE、そしてAKLOと、フリー音源を荒らし回っている面々も多数参加した本作は、王道なSWAGラップスタイルを地で行く一方、正規アルバムだからこそのSWAGらしからぬ決意、熱意も同居する作品に仕上がっている。それは何よりも、自らのルーツ、沖縄を歌った直後に、決意表明、そしてSWAGラップへと流れていく「Intro(all about me)」に、その曲名通り集約されている。

SWAGサイドで言えば、前述のラップスピードを限りなくスロウにとって、その中である意味この手のフロウの本領を示して見せる「Chillin' Da Club」、バキバキに尖ったサウンドや金拝主義全開の開戦宣言が本作を象徴する「Greedy」などのソロ曲も光っている。もちろん客演との絡みも抜群で、各方面で話題となった「It's My Flow」はこのスタイルのフロウの応酬がスリリング。AKLOが流石に一歩抜け出したところもあり、彼のヴァースだけフリーキーすぎて空気が違う気もするけれど。

そして本作で最も光っていたのが「One Two」だろう。Nao The Laizaによる低音シンセがグイグイ切り込んでくるトラックは、この手のHIPHOPには珍しくラップを急かせる速さなのだけど、その上でナンパソングをハードコアに繋ぐラップが三者三様で痺れるほどカッコ良い。特に、RICK(CRIXX)のラップにこれまでの音源ではさしたる印象を抱くこともなかったのだが、この曲でトリを務める彼は、ハーコーさとチャラさのバランス加減が最も上手く様になっていて華があった。

一方で、アイデンティティーや、伝えたい主張ありきで音やラップが規定されてしまう「Run This Hood」、「Pain」などはパンチも弱く、その点で不満が残らないわけではない。リスナーの要求にだけ応えろなんて暴論を吐くつもりは毛頭ないが、そもそもSWAGラップを辿って本作を手に取ったリスナーにこの手のメッセージソングを求める層がどこまでいるのかも怪しい。

しかし、まだ正規音源で足跡を残した者が少ないSWAGラップにとって、本作の持つ意義は決して小さくない。全国のレコード店でSWAGの存在を販促ポップに背負い、まだAKLOもKLOOZも知らない純現場主義なリスナーにもアピールするに十分な強度を持った好盤だ。11曲でSkit無しの40分弱というタイトな構成も、20曲73分のアルバムなんかだと2回に分けないと体が持たない僕のような虚弱リスナーにも優しいベストサイズ。

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15:39 | MATCH | comments(0) | -
DESERT RIVER / DESERT RIVER


1.クリッククラック Produced by OHLD for 7070Production
2.My D Produced by OHLD for 7070Production
3.Party Stuff Produced by OHLD for 7070Production
4.MOON Produced by ROBERT G & TOM HUDSON

★★★★★★★☆☆☆

SEEDA、BRON-K、OHLDによる企画物ユニット・DESERT RIVERの4曲入りシングル。2010年12月24日発売。

NYのビートに影響を受けたSEEDAとOHLDが、そのビートありきで始めたというDESERT RIVER。音数やミックス、ラップの際のブレスの収録までとことんこだわったというサウンドは、バキバキのトラックながらも、事実大音量で聴こうがひとつひとつの音が耳に痛くなく、クリアに聴こえる。「鳴り」という点においては、文句の付けようもない。

前節で述べたアプローチが全てSEEDA主導の下で行われたということで、本作も幾らかはSEEDAのネクストレベルへの前段階として位置付けることも出来る。「My D」なんて、このビートにキッチリラップを乗せることが出来ただけで一定のレベルのラッパーを自称して良いんじゃないかと思うくらいの変則ビートだが、その上で前作『BREATHE』よりも、より横断的なフロウを開拓して見せるSEEDAにはとことん唸らせられる。

この曲と「クリッククラック」が本作のメインディッシュとなるようだが、前述したような、NYでの在り方を意識した音へのこだわりに、スパイスとして投入したBRON-Kも見事に効いている。ソロアルバム収録の「なにひとつうしなわず」が受けて以降、どうにも歌フロウへの(過剰な)傾倒が見られたBRON-Kだが、前半2曲ではベーシックなラップスタイルを音に組み込み、彼の原初的な力を感じさせるラップを披露してくれる。特に先ほども挙げた「My D」は、SEEDAだけでなく、快楽主義的なラップを聴かせるBRON-Kも劣らずカッコ良い。味のある歌詞を書く割に、HIPHOP的にはありだけど一般的にはグレーゾーンな領分で思いっきりそれを発揮するからこの人は面白いんだと実感する。

後半の2曲は、SEEDA、OHLDが先導した楽曲にBRON-Kを組み込むという「デザリバ本来の作り方」ではなく、BRON-Kと(アディッショナルボーカルを務める)桜木カオリにデザリバサウンドが合わせたといった趣の、要するに方法論が前半と正反対に感じられる作り。そうなった途端BRON-Kが思いっきり歌いだしちゃうのはちょっぴり寂しかったりするんだけれども。それでもSEEDAが上手く合わせる(というかいいかげんオールマイティ過ぎるやろ…)エロソング「Party Stuff」はそこそこ良い。

デザリバが活動を続けるかどうかはこの作品の受け次第らしい。その実験精神と、BRON-Kの起用法などのリスナーを置いてきぼりにしない現実的なバランスはとても上手く噛みあってると思うので、前半のノリで続くのであれば是非お願いしたいところ。
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19:31 | DESERT RIVER | comments(0) | -
MOCCOS MOST WANTED / DOSMOCCOS


1.The Show
2.Buaaa!!!
3.Friday Night feat.COMA-CHI
4.Explosion Remix feat.Speech Defect
5.偉大なる1歩
6.蟷螂女 feat.ahhco
7.もっとMOCCOS
8.Skit
9.俺のしろ
10.Nice Middle
11.真昼のテーマ
12.ONE, Two, Three
13.You Gotta Groove feat.ULTRA NANIWATIC MC’S
14.Life feat.東田トモヒロ

★★★★★★★☆☆☆

餓鬼レンジャーの名作『UPPER JAM』収録の「ばってんLINGO」をきっかけに結成された、ポチョムキン、KEN-1-LAW、そして本作からメンバーとなったDJ MO-RIKIの3人組による、DOSMOCCOSの2ndアルバム。2007年4月4日発売。

日本のHIPHOPも、ラッパー自身の「HIPHOPをやる意味」がそのまま音楽性に投影されるようになってから久しい。それは各々のラッパーにとっての入口に過ぎず、聴き手には本来何ら関係のないことであるのだが、それすらも強みに変えて「パーソナルなインセンティヴに依る音楽で大衆に訴える」という矛盾を抱えた荒技を繰り出せるのも、この音楽の魅力だろう。

だが同時に、いつの時代になってもこんなHIPHOPだってあって良い。DOSMOCCOS。今や絶滅危惧種とも言える、ファンキーなパーティーラップの求道者。前作『Natural High』では、地元である熊本を意識したローカリズムが、聴き手をリミットするような内向き感を生みだしていて凄く聴き辛かった彼ら。本作では割り切ってパーティーアルバムに仕立てた結果、DJ 大自然、GP、DJ MO-RIKI、Speech Defectなどが提供するトラックと併せて、はちゃめちゃで整合性がないほど楽しい、全身の体液飛び散るクサいお祭り気分が味わえる。

特に、遂に復調軌道に乗ったポチョムキンのラップがキレるGPとの「Buaaa!!!」、KEN-1-LAWも気合いの入ったラップを聴かせる「蟷螂女」、テクニカルに聴かせる快速ミドルの「もっとMOCCOS」なんかは彼の独壇場だ。1stアルバム『DAY BEFORE BLUE』をリリースしたCOMA-CHIが参加した「Friday Night」も、波に乗る両者の純粋なスキル合戦が楽しい。こんなラップテクの応酬も、テーマを狭く定めない、テンプレまんまなパーティーチューンだからこそ出来たことだろう。

中盤までの勢いが素晴らしいだけに、アルバムを綺麗にまとめようとスローダウンする後半は、やや迫力に欠ける。それでもULTRA NANIWATIC MC'sとの共演や、前作同様、東田トモヒロに締めてもらう「Life」なんかは相性の良さで持ったところもある。次の3rdアルバム『CHAMP ROAD』の完成度の高さを知ってしまうと本作はまだ発展途上にあったのだと痛感するが、それでも前作に比すならば、ずっとクオリティの高い作品に仕上がっている。


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15:38 | DOSMOCCOS | comments(0) | -
REAL RIDE SHIT / YOUNG BERY


1.Intro
2.Real Ride Shit
3.FREAKY feat.RYUZO
4.JUNK FOOD
5.skit feat.Mr.OZ
6.MJG-MARK
7.STREET x STREET feat.RUFF NECK
8.Every Ghetto

★★★★★☆☆☆☆☆

ANARCHY擁するRuff Neckから、YOUNG BERYのデビューミニアルバム。RYUZO主宰のR-RATED RECORDSより、2006年5月31日発売。

名古屋や京都のシーンに顕著なゴリゴリのハードコア感に、Ruff Neckらしいゲットーイズムを上手く織り交ぜることで、過去に酷評したNaughtyのソロ作よりは一本芯の通った作品となっている。もちろんそれは、単純にNaughtyと比べて、YOUNG BERYのラップがリズムにきちんと乗ることが出来ていることに依るところも大きい。

ただこのタイプのHIPHOPは音楽としての振り幅がさして広くないがゆえに、どうしても何か突出した部分を見せつけないと聴き手をブチのめすことは出来ない。LUCHAやBUGZYらによる仰々しいドラムとシンセによるトラックは安定して下地を整えてはいるが、YOUNG BERYが圧倒的な何かを見せつけてくれなければ、有象無象の「京都・名古屋スタイル」の中に埋もれてしまう。特にANARCHYに備わっている以上の、もしくは備わっていない何かを打ち出せなければのし上がれないのがクルーの同胞として厳しいところ。

クルー総動員で畳み掛ける「STREET × STREET」はANARCHY、JCの2枚看板の活躍もあり、素直にノれる快速ナンバーに仕上がっている。ミドルテンポのビートで、ガッツリラップを絡めることが出来る曲だと、やはりRuff Neckはフィジカル的に映える。だが結局、肝心のソロ曲ではYOUNG BERYに飛ばされることはなかった。安定して平均以上を打ち込んではいるが、これまで散々聴いてきた、紋切り型のハードコアHIPHOPの定石を忠実に踏んでいる以上の作品ではない。

ちなみに下に埋め込んだ24 Bars To KillのYOUNG BERY、NAUGHTYによるREMIXは、彼らのソロ作よりもずっとラップが勇んでいて良い。ただ、 "空まで轟かす JCのぶんまでカマすこのヴァース" と歌っているのはどういう意味なのだろう。単にJCがこのREMIXに参加出来なかったという意味なのか、それとも…。深読みし過ぎなのかもしれないが、気になる。

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23:52 | YOUNG BERY of Ruff Neck | comments(0) | -
FONKY&LOVE / 韻シスト


1.Beginin'
2.Hey you
3.Walkin'
4.BANDSTARAP
5.本ky団 ~Don't miss it~
6.Jungle Boogie
7.unspoken heart(instrumental)
8.浮き草 feat. no-boo from tick
9.Peace
10.チャバカ(Drhyme)
11.シンフォニー
12.skit
13.nocturn feat.KN-SUN, GEBO, MONCHI & AFRA
14.焔

★★★★★★★★☆☆

韻シストは大阪を中心に活動を続ける生バンドHIPHOPグループ。メンバーは多少の入脱退を経て、2ndフルアルバムとなる本作でのメンバーはBASI、サッコン、FUNKYMICの3MCと、BassのSHYOU、Drumsのクーマ、A.Saxの林 未来彦、GuitarのTAKUによる7人体制。2006年10月25日発売。

やっぱり生音のHIPHOPの強味は「音が生きていること」であると思う。ルーツをあくまで黒人音楽に持ち、ニクいまでにとことん楽しくなるようなファンクミュージックを提供してくれる。サンプリングとは違う、生きた音が飛び跳ね、程良いキャラ立ちを確保した安定感抜群の3本マイクと見せる息の合った連携は、この手のHIPHOPならではの、それもかなりの手練によってのみ成せる業だ。JABやatiusに代表されるこの周辺のラッパーに特有の、関西弁とはまた違うイントネーションのラップを駆使する3MCの声もとても温かく、楽しそうに跳ね回る音達にそっと寄り添う。

デビューミニアルバムにして名作である『Relax Oneself』のような音と言葉入り乱れる賑やかさは影を潜めるようになったが、音と言葉、その相互間の錬度は確実に上昇したと言えるだろう。特に以前はサックスの前のめり感なんかは凄かったわけだが、そうした自己主張のせめぎ合いを抑えた結果、「Hey you」のようにラップと音がカツッと息を合わせることの出来る曲が多くなったのだと思う。音と言葉が同居するジャンルである以上、好みの問題はともかく音楽としての熟練度は確実に上昇したと言えるだろう。

その辺のバランス感覚を基盤にした上で、あえてその按配を崩して魅せる技術が付いたのも大きい。作中で異彩を放つ「本ky団〜Don't miss it〜」は、ベースを最前線に駆り出して真っ黒に染めた音が凄い。彼らの言葉を借りれば、まさに "こんなサウンド出す奴中々いねーよ" だ。

一方でシンガーのno-booパートをメインにした「浮き草」のようなスロウな曲も丁寧にこなしている。いわゆる「トラック」と異なり、バンド型のHIPHOPは必ずしもバックトラックとしての役割に限定されるわけではない。よってその音の立ち位置(と技術)のバランスが成否を分けるわけだが、HIPHOPのための生音として鋭敏に練られた本作での韻シストは、その意味で穴が無い。

nocturn」では、加減を知らない高速ラップで目立とうとするGEBOも、何とか下世話なノリに持ちこもうとする "ハメ撮りフーリガン" MONCHIも、纏めて韻シストサウンドの中に優しく包み込んでいく。現在の日本のバンド型HIPHOPの中では、頭ひとつ抜きん出た存在ではないだろうか。翌年発表された3rdアルバム『GOURMELOGIC』はまだ未聴なのだけれど、発売当時の各所での絶賛が強く印象に残っているので、是非聴いてみたい。


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00:53 | 韻シスト | comments(4) | -
OASYS / KREVA


1.道なき道
2.かも
3.たられば feat SONOMI
4.最終回
5.エレクトロ・アース・トラックス
6.Oasys
7.Changing Same
8.Reprise~道なき道~

★★★★★★★★☆☆

KREVAのソロ初となるミニアルバム。2010年9月15日発売。音楽制作に新たなシンセサイザー・OASYSを導入しての一枚。

何を隠そう前作『心臓』を聴いてない僕なので(HIPHOPブログなのにそれで良いのかっていうね、ほんとに)前作との対比で本作を語ることは出来ないが、相変わらずポップスの面からも理解されやすいメロウネスを散りばめながらも、ヘッズも納得させるビート強度を保っているのはさすが。新機材の影響か、よりハイファイ感が増しているが、耳に痛くは無く、鳴りが良く低音と高音の差が激しいぶん、かなり奥行きのあるサウンドに仕上がっている。

インスト、もしくはそれに近い楽曲が3曲にYOUNG PUNCHのカバー「エレクトロ・アース・トラックス」を積んだこのミニアルバムは、そうしたサウンド面での実験と、助詞を基軸に廻す「かも」「たられば」、ネット批判と自分の心情を、メロディアスで壮大な音に包んで吐露する「最終回」といったリリック面での実験を上手く掛け合わせた作品と言える。

特に暗にネット批判を匂わせる「最終回」は、根底のメッセージこそありふれたものだが、リリックでの聴かせ方が上手い。強がらずに、誹謗中傷に対して弱さを見せながら、 "終わりだなんて言わないで欲しい" と悲痛に歌うこの曲。僕は、KREVAと言えば失恋モノだろうが結局はナルシズム全開で余裕綽々と歌うところしか想像出来なかったので、かなり衝撃だった。また、この曲の一番盛り上がるよう設計されている部分は、そこがメッセージの核心であることと併せて「HOOK」ではなく「サビ」に近い。その横断的な音楽活動は、これからもやっぱり多くの批判を生むのかもしれない。けれども、ジャンルを、マスとコアを、自由に横断出来ること。本作で改めて示したそれ自体が貴重な才能であることもまた、全くの真だ。


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00:50 | KREVA | comments(2) | -
WHITE BOOK / AKTION


1.Twenty Four / Produced by INOVADER 
2.Still Neva Enuff feat.ZEEBRA / Produced by タイプライター 
3.Change feat.ラッパ我リヤ&JAMOSA / Produced by GEEK a.k.a.DJ TAIKI 
4.Get Wet / Produced by USK TRAK 
5.Too Much Information feat.CHAPPA RANKS,MAGASA,DOGMA&単駆 / Produced by DJ RYO 
6.バチアタル2008 feat.D.O&HIRO(RISING SUN) / Produced by INOVADER 
7.正眼 II feat.UZI / Produced by DJ RYO 
8.1972 / Produced by DJ YUTAKA 
9.風feat.KM-MARKIT / Produced by TAKE-C 
10.Letter For Myself feat.OJ Flow,JUNNOSK8&MACKA RUFFIN / Produced by DIORI a.k.a.D-Originu 
11.Our Life Story feat.BIG RON&RICHEE(GHETTO INC.) / Produced by Mr.Itagaki a.k.a.Ita-cho 
12.30年後の俺feat.マイク眞木&Lil Prophet / Produced by YOSHI (BREDREN) 
13.Ash to ash Dice to dust(INOVADER REMIX) / Remixed by INOVADER 
14.Outro / Produced by INOVADER

★★★★★★★☆☆☆

2010年に解散したZEEBRA率いるクルー・UBGの一員であるAKTION(真木蔵人)の1stアルバム。2008年7月16日発売。

ZEEBRAからの影響が色濃く反映されたラップとTAKE-Cミックスによる綺麗に音の抜けるトラックが組み合わさった、UBGらしいマッチョイズム溢れる一枚。それを自身の趣味であるサーフィンと掛け合わせて典型的なHIPHOPヴァリューを描写した、ノリの良い「Get Wet」、親子3代に渡ってマイクを繋ぐ「30年後の俺」(マイク眞木が食ってんな〜)を除いては、特殊なバックグラウンドを持つAKTIONにしか出来ないHIPHOPが詰まっているわけではない。

ただ、愚直なまでにマスキュリニティ描写に徹し、UBGらしくあろうとする姿は、UBG作品の持つ魅力を純粋に抽出することが出来ていると思う。何ら新しいものはないが、彼らの音楽の肉体的な強さが好きなリスナーを十分に満足させ得るものではある。

ZEEBRA『THE RHYME ANIMAL』のアウトロ「平和'98」のトラックを流用して物語を始める「Twenty Four」で幕を開け、続く「Still Neva Enuff」では、アホみたいに前のめりなタイプライタービートの上でZEEBRA「Neva Enuff」を7年越しに受け継ぐ。あるいはRICHEEとBIG RONを迎えた「Our Life Story」も、前年に発売されたZEEBRA『World Of Music』の「This is 4 The Locos」に重ねることが出来るかもしれない。UZI『No.9』収録の佳曲「正眼」を引き継いだ「正眼 II」だって、相変わらず男臭くて原曲と並び立つ渋味を誇っている。音楽的な冒険はあまりなく、その点をやや面白みに欠けると捉える方もいようが、UBGの歴史に根差した自らの憧れと経験、音楽的なルーツをとことん大事に温めてソロ作に投影したという意味では、とても真摯なアルバムと言えるだろう。

最後に、その汗臭さに耳当たりの良いブルージーな触感を加え、唯一多少の冒険をした「Change」も、ラッパ我リヤとの相性の良さもあって本作を代表する1曲になっている。まぁ、なんと言ってもこの曲はヴァースの後半から日本語の文法をほとんど崩さずにライム、メッセージ、フロウ全てを両立させたQのキレっぷりが最注目ポイントなんだけど。


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