RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
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White Out / SEEDA×S.L.A.C.K.×ZEEBRA


1.White Out
2.White Out(Sky Beatz Remix)

★★★★★☆☆☆☆☆

SEEDA主導による企画シングル。税込400円。2010年12月22日発売。

オリジナル版「White Out」の方はかなり好みが分かれるだろう。S.L.A.C.K.製のトラックは、意図的にビートの力を極限まで削ぐことでその浮遊感を増している。S.L.A.C.K.が言うように "凄い遠くまでWhite" な大雪原が広がるかのような音。ただ、そんな落ち着いた音の上で3人が吐くのは恋愛とクリスマスネタなんかであり、フロウも何ら食ってかからず、毒気を抜かれたラップに終始している。それ自体が悪いわけではないが、静の音と静のラップを組み合わせても、互いに寄り添って安定したクオリティにはなれど、このメンバーに抱く期待度との隔たりは大きい。

その点では、一転してネオン輝く街のクリスマスを連想させるようにお祭り感を増した「White Out(Sky Beatz Remix)」の方が、トラックとラップの静動のバランスをあえて崩しているぶんだけまだ楽しい。特に、オリジナル版ではビートを抜きに抜かれてなんかクサい男にしか聴こえなかったZEEBRAは、こっちの方が断然良い。こういう華やかな音をもらえば、この3人の中でも最も映えるあたりはさすが。フロウ巧者の2人に続きながらも、トーキングモジュールで煽る煌びやかなトラックと、自らの声との兼ね合いだけでキャラが立ってる。
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11:02 | SEEDA×S.L.A.C.K.×ZEEBRA | comments(0) | -
Going! Going! Gone! / アルファ


1.Going! Going! Gone!
2.ある晴れた日の午後にふと思う
3.コロンブス feat.つぶやきシロー
4.Dreamer Come True
5.ファンキーさん
6.Money Shaker feat.JUN
7.U・S・O

★★★★★★☆☆☆☆

アルファの2ndミニアルバム。2007年2月21日発売。

Going! Going! Gone!」でこれまでのスタイルもへったくれもない音が耳に飛び込んできたとき、「あぁ、これが迷走か」と寂しく思った。言い訳程度のノイズが入る以外、何の特徴も無い凡百のポップスラップと大差無い。次の「ある晴れた日の午後にふと思う」で活きの良いドラムが聴こえてきて期待したら、子供の声で合いの手が入ってくるあからさまなやり口に頭を抱えることに。

でもここからは、不安に思ったほどにはあっち側に行きすぎておらず、少し安心した。つぶやきシローに1ヴァース任せてしまう無茶苦茶なギャグラップ「コロンブス」や、らしいスペースサウンドの下でドラムが跳ねる「Dreamer Come True」あたりは、昔からの遊び心と一般受けを折衷した感じでまだ聴ける。まぁ、それでも昔に比べれば妥協している感は拭えず、あくまでも相対的な評価においてなのだけれど。

結局、全盛期らしいぶっ飛んだアルファを聴けたのは、DJ SUZUKIが痺れを切らしたように本気のダンスチューンを仕組んだ「Money Shaker」と、どうしても大衆意識にならざるを得ない状況にある本作でのラップをほぼ排除した「ファンキーさん」だったという。後者は懐かしいハウスHIPっぽい四つ打ちに、ピアノループが心地良く絡む。

これ以降のアルファは知らないけれど、評判を聞くにどうやら怪しいことになっているようで。本作にまだ辛うじて残っている、アルファにしか出来ないHIPHOPを、どうか貫いてほしい。繰り返すが、「Going! Going! Gone!」や「U・S・O」で見せた音楽は、やるのがアルファじゃなくても良い音楽だ。
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06:25 | アルファ | comments(0) | -
I'm Back / D.O


1.I'm Back 
2.Don't Listen feat.JASHWON and PIT GOb 
3.EVERY SMOKIN' feat.SEEDA , SMITH CN
4.OTO feat.ZEEBRA , JESSE , L-VOKAL , T2K , Toul Roll

★★★★★☆☆☆☆☆

練マザファッカーのリーダー・D.Oの逮捕後初となるシングル。2010年9月8日発売。

彼のホニャホニャした声のラップは特に好きでも嫌いでもないのだけれど、そのエンターテイメント性は大好き。MUNARI製の晴れやかな音が復帰を祝福する「I'm Back」で返り咲いた彼だが、その中で警察とマスメディアに喧嘩を売りつけ、クソッタレと罵り、最後には "冗談だって 愛してるぜメーン" と茶化す。そんでもってどこにI'm Backしたのかと言えば、仲間と焚きまくり、自殺を考える人に "何言っても無駄さっさと死んじまえ" "逆に死なねぇなら殺してぇぜ"(「Don't Listen」)と食ってかかる、相変わらずの地下生活へバックしたわけで。恐れることなく、逮捕前と何ら変わらず好き勝手にやる姿勢が最高だ。

もはやこっちがメインなボートラに関しては、明らかに別の意味でヤバそうなメンツでの「EVERY SMOKIN'」は完全に力を抜いて作った緩い出来。だが、ラストの「OTO」の良さは特筆されてしかるべきだろう。よたついたキーボードのループがなんとも心地良い落ち着いたマイクリレー。Toul RollのHOOKも力まずスムースで、最後に控えるZEEBRAまで5分半が苦痛無く流れる。日本のマイクリレーで、それもD.O主導のこのメンツでこういう曲は珍しくて良い。きっちり聴いたときに気付く、そこかしこに溢れる辛辣なメッセージも○。

500円4曲入りシングルのコストパフォーマンスとしては、何ら不満は出ない。これからのD.Oが何ら今までと変わらないことをリスナーに確信させるものとしては、本作は十二分にその役目を果たしたと言える。
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01:58 | D.O. | comments(0) | -
アルファ葉 / アルファ


1.フジヤマ
2.男闘呼塾
3.サムライ feat.洛陽船
4.プッチライマー
5.ALIEN 21(BLUESBREAKER PLUS ALPHA MIX)
6.仏恥義理(CUT-O-BEE MIX)

★★★★★★☆☆☆☆

アルファが「もののはずみで」出したらしいデビューミニアルバム。2000年7月5日発売。イラストは、メンバーの親戚らしいリリーフランキーによるもの。

デビュー作らしい大味な作り。方向性こそ今と変わらないが、まだまだこの頃は綺麗にまとまっていない。でも、もちろんその勢いだけの部分が良い部分もあって、DJ TATSUTAの、いつもの大人しいFG打ち込みトラックを "目指すはオデキ顔が意図的な子だ" なんてライムで踏み荒らして回る「男闘呼塾」あたりは元気で素敵だ。DJ SUZUKIが手を替え音を変えラップを後方支援するスタイルの原型とも言える「サムライ」には、TWINKLE擁する洛陽船をフィーチャー。アルファの3人がまだ若いように、TWINKLEのラップもまだ今ほどの粘っこさは持っていないが、この電子音上で繰り広げられる、4人が4人とも全く協調する気の無い好き勝手感は今聴いても楽しい。アルファを期待して聴いても、貴重なTWINKLEラップを期待して聴いても満足出来る佳曲だ。

自分たちのサウンドと、王道のHIPHOPネタをまんまぶつけてブレンドしてみた「ALIEN21(BLUESBREAKER PLUS ALPHA MIX)」が凄く聴き辛い一方で、両者を小節ごとに分けてキックしていく「仏恥義理(CUT-O-BEE MIX)」では見事に合わせる辺り、「テクノ遊ばしてるだけじゃなくてこんなことも出来んだよ」というメッセージが伝わってくるようで、その後の成りあがりを見るに頼もしい限り。彼らのスタイルがデビューから一貫していること、そしてその源にはきちんと先人たちが築いたHIPHOPが流れていること。それを確認出来るだけでも、今からでも意義深い作品だろう。
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17:16 | アルファ | comments(0) | -
甜茶DEAD STOCK / ABNORMAL BULUM@


1.EBINOMA
2.but beautiful... feat.僕 des GARCONS
3.HOSINOKINKA
4.リアル鬼ゴ
5.ユゲだskill
6.容ギ者ブルマ
7.Very Roll
8.黙秘権 feat.DJチル村
9.夜バイ at Midnight feat.PAPICO
10.百式≒愛毒(Love Song??)
11.乱茶DEAD STOCK
12.ボーナストラック(インスト)

★★★★★★☆☆☆☆

ABNORMAL BULUM@は、MONCHI、アンジキジョイ、NAGAN SERVERの3MCに、トラックメイク、ライブDJを務めるDJ 拓音aka MASS CUT ヘルツェゴビナ、ちゅ〜やんaka 僕des GARCONS、DJ チル村を加えた計6名から成る、神戸を拠点に活動していたグループ。2010年に4thアルバム『AEGU』を発表後、6月20日に無期限の活動休止を発表した。本作は、そんな彼らが2005年5月28日に発売した1stアルバム。

正直、本隊のアルバムを全て持っているわけではないのだけれど、本作に限って言えば、その後の活躍を予感させるポテンシャルは見せつけながらも、やや総体的なインパクトに欠ける作品ではある。トラックを作り始めて3カ月らしいMASS CUTヘルツェゴビナがほとんどを手掛けるトラックは王道的な90年代式HIPHOPサウンドであり、コンスタントに平均点以上を叩き出す。が、それ以上ではあり得ない。

そしてそれ以上に、ラップが凄くまとも。変態ソングであるはずの「Very Roll」や「夜バイ at Midnight」すら、流し聴きするとなんか良い感じのヴィンテージ感溢れる正統派HIPHOPだったかのような印象に終わる(※MONCHI除く)。従って、初っ端でMONCHIが "お前らはつまみ つまり枝豆" とかっ飛ばす「EBINOMA」やウッドベースが渋い「ユゲだskill」など魅せる曲が幾つか仕込まれてはいるものの、ABUNORMAL BULUM@らしいオリジナリティに溢れているというよりは、公式に上手く乗っ取り、手堅いスキルで一定のハードル越えを果たしたといった形だ。カッコ良いんだけれど、今の彼らならもっと自分色に染め上げることが出来るはず。特に本作でのNAGAN SERVERのラップの印象の薄さはヤバイ。どちらかと言えば好きなラッパーであるけれど、本作ではマジでいたかどうかもわからないレベルだ。全体的な色彩の欠如に加え、相対的にキャラ立ちしている他の2人に完全に掻き消された格好。

意外とMASS CUTヘルツェゴビナの音も「HOSINOKINKA」や「乱茶DEAD STOCK」で元気だったりするし、その辺のバランスがまだ取れていなかったのかな、と思う。後々の活躍を知っているからこそ、本作を自主製作の1stらしい、力はあるけどまだ粗削りな作品として見てしまう。しかし何の先入観もなく聴けば、それなりのハードリスニングにも耐え得る頑健な作品ではある。
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09:16 | ABNORMAL BULUM@ | comments(0) | -
Alien / アルファ


1.アナザーワールド
2.コンコルドは翔んでゆく
3.FREAK OUT
4.恋人はエイリアン
5.渚の投げKISS(special guest前田健)
6.BAD BRAIN(inst.)
7.ANIMALIFE
8.NO CHANGES IN MY LIFE
9 不知火
10.1 or 8
11.PASSION
12.惚れたぜHarajuku(アルファ&スチャダラパー)

★★★★★★★★☆☆

MCのTSUBOIとWADAにDJ SUZUKIを加えたテクノ系HIPHOPグループ・アルファの3rdアルバム。2005年11月15日発売。

なにこれすごい。HIPHOPを聴き始めた高校生の時分に、ケツメイシから辿ってシングル『不知火』と2nd『SUSHI BOMBER』を買った。そのときは全くピンと来ず、結局これらの作品は何年も棚の奥で待機させることに。でも、こうして一通りHIPHOPシーンを聴き歩いてから改めて本作を買って聴いてみたら、完全に飛ばされてしまった。

頭のネジが飛んだというより、変なところにガッツリ捻じ込んでしまったといった感じの2MCの破滅的なラップもさることながら、アルファが未だ日本で特異な存在であるゆえんたる、DJ SUZUKIの電子音サウンドが凄く良い。専門外だから詳しいことはわからないけれど、ダブステあり、トリップホップっぽい毛色あり、既存のHIPHOPトラックとは何ら接点を持たず、でも「HIPHOP的にカッコ良い」ところに帰着させる。ワンループなんてそっちのけで、手を変えノイズを差し込み、本作最高点を叩き出した「FREAK OUT」のサイバーな凶暴性なんかは、保守的なHIPHOPに対して挑発的すぎて最高だ。昔そっとしまい込んだ「不知火」も、本作で最も緩急を意識したパンチ力重視の曲で、なんであの頃この良さに気付かなかったのか後悔するばかり。

その並びにある「恋人はエイリアン」なんかが悔しいくらいカッコ良い一方で、そのサウンドスタイルを崩さずに「ANIMALIFE」みたいな、驚くほどストレートにメランコリーな曲を挟んで来るのも凄い。聴き疲れはないが、聴き飽きることはままありそうな類の音なわけだけれど、本分を貫きながらも色んな側面を見せてくれるため、何のストレスもなく気持ち良く聴き通せる。

ただ、アルファの3人の力関係が綺麗に正三角形の形を描けるほど安定しているため、一種の完成形に辿り着いた本作ではゲストの存在はほぼ不要でもある。「渚のKISS」や、凄そうな割に全く何も面白いことが起こらなかったスチャとの「惚れたぜHarajuku」(これはボートラみたいなもんだけど)だけは心残り。

まぁ、「アナザーワールド」のイントロが流れてきたところで「こ、これは!!」となるか「はぁ?」となるかで評価が180度変わる作品であろう。MIDICRONICA好きの方なんかにはどストライク極まりない作品だと思う。これまでなんら理解出来ていなかった僕がぬけぬけと言うのもなんだが、アルファはHIPHOP村の住民からもっと高く評価されて良い。


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MESS-KING OF DOPE- / メシアTHEフライ


1.Intro pro.DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
2.MESS pro.DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
3.東京 Discovery 3 feat. PRIMAL (MSC) pro.HardTackle_66
4.鉞 -マサカリ- pro.KAMIKAZE ATTACK
5.ビルジング pro.T.TANAKA
6.MONKEY BUSINESS feat. TAKUTO (JPC band) pro.T.TANAKA
7.東口のロータリー pro.DJ OLDFASHION
8.POPS feat. 仙人掌 (MONJU) pro.16FLIP
9.マンダラ pro.I-DeA
10.Skit pro.KAMIKAZE ATTACK
11.No More Comics feat. BES (SWANKY SWIPE) pro.DADDY VEDA a.k.a REBEL BEATZ
12.Wonderful World pro.The Anticipation Illicit Tsuboi
13.Outro pro.MUTA (JUSWANNA)

★★★★★★★☆☆☆

JUSWANNAの右ウイング担当・メシアTHEフライの1stフルアルバム。2010年12月15日発売。

敬語で話しながらニヤニヤして中指を突き立てるようなメシアの慇懃無礼なラップの強さは、アングラ式のサウンドなら、割かしどのタイプの音でも映えることだと思う。身内周りから手広く集めたトラックメイカーの音に、タイトに言葉を乗せて職人的に調理していく。13曲43分の本作でも驚くほどボリュームに関する不満が残らない、ソロとして過不足なくラップを詰め込んだコンパクトで寄り道の無いアルバムだ。

メシアの人となりはJUSWANNAの頃から十分に見えていたため、本作はそこでのメシアに惹かれて辿り着いた方の欲求をピンポイントに満たす作品と言えるだろう。政治的にも、ラップスタイル的にも最もラディカルな部分を詰め込んだ「」の荒ぶり方なんかは、完全に自身の需要を理解しているやり口だと思う。ただ、攻撃性を強調し過ぎるギターが無ければもっと良かったんだけれど。

"反対側から見ればこっちが表だ" という宣言がカッコ良い「MESS」や、微妙なHOOKを除けばラップは一番奔ってる仙人掌との「POPS」など、サクッとテンプルにクリティカルを見舞って帰っていくような、ダークネスな暴力性を持ったドープチューンが13曲間にひしめく。シャウトで焦らしに焦らしてから完全にキメて帰るBESがメシアすら食う勢いの「No More Comics」も、ハイライトたるところできっちりそうせしめていて、完全に狙い通りに計画を進め切っている一枚。

どちらかというとズドンと一撃で決めるよりは噛んで味わうタイプの作品だが、2010年の年の瀬の忙しいB-BOY達を更にアジテイトするアルバムではあろう。ちょっと用意してあるんで、ドープにいかないっすか?

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01:41 | メシアTHEフライ | comments(0) | -
12 JAPS / DJ BAKU


1 PHOENIXION 09 feat. B.I.G. JOE
2.GOOOOOOOOOOOAL!!!!!!! feat. Shing02
3.WM
4.WALKMAN feat. NIPPS, K-BOMB
5.スサノオ feat. BRON-K
6.ASIAN SEED Ver.2 feat. HIDADDY, INI
7.INCREDIBLE STYLE CLASH
8.眠る街 feat. NORIKIYO
9.TOKYO
10.COAST TO COAST feat. 漢, 般若
11.MY ROOTS feat. FREEZ
12.JAPANESE HIPHOP AND ME feat. ILL-BOSSTINO

★★★★★★☆☆☆☆

DJ BAKUの3rdアルバム。2009年7月22日発売。

非常に誇り高いアルバム。ラッパーを大量に呼び込んでのトラックメイカーのアルバムは、およそ2種類に分けることが出来る。ひとつは、トラックメイカーが己のサウンドの領分を貫き通すもの。もう一方は、トラックメイカーが各参加ラッパーの長所を活かすべくサウンドをそれに合わせるもの。前者の例としてYakko for Aquarius『My Hood Iz...』、後者の例としてDJ HAZIME『Ain't No Stoppin' DJ』などが挙げられる。

冒頭で本作が誇り高いと言ったのは、このアルバムにはそうした制作過程での妥協点がほとんど無いことだ。つまり、DJ BAKUもとことん自分色の音を譲らないし、ラッパー達もいつもの自分のトピック、アプローチを、その音に臆せずそのまま持ち込んでいる。そのガチンコでの組み合いが火花を散らした「PHONENIXION 09」、「スサノオ」あたりは、ラッパーのファンが聴いても、BAKUのファンが聴いても満足出来るものだろう。

一方、各所で本作があまり手放しで絶賛されていないのも事実で、それは音とラップ間でのバランスが崩壊している曲が散見されるからだと思う。音とラップのどちらかが歩み寄って安定性を保っている作品ではないため、「GOOOOOOOOOOOAL!!!!!!!」、「ASIAN SEED Ver.2」に代表されるように、どちらかのテンションが違えば一気に空回りな曲になってしまう。

ILL-BOSTINOの曲など、がっぷり組んだはいいものの、化学反応が生まれず、結果ゼロ地点で静止してしまった曲などもあり、やはり僕も本作を「名作だ!!」と絶賛することは出来ない。ただ、各々がプライドをもって一切譲らずに殴り合おうとしたその心意気は、十分賞賛されるべきものだとも思う。結局、日本のHIPHOPにおいてそれが出来るだけの体力と矜持を持ったラッパーがこの12人だということに関しては、僕らとBAKUの間に恐らく不一致はない。

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突然変異体 / Piyo Londirt


1.嘔吐
2.突然変異体
3.Tokyo Hustle
4.Choice Is Yours
5.Theme Song
6.奴隷
7.人間の条件
8.Silent Majority
9.I Blunt The Right Eye
10.Like A Long Cypher
11.新世紀の詩
12.いい時代
13.I Still Love Y.O.U.

★★★★★★☆☆☆☆

Piyo Londirtの1stフルアルバム。iTunesで2010年4月16日配信開始。

出鼻から歪なヴァイオリンの旋律に "お前 絶望がたんねぇよ" と感情を吐き捨てるようなPiyo Londirtの言葉が覆い被さる「嘔吐」(サルトルのオマージュ?)で幕を開ける本作。ここで凄いのはそのトラック以上に歪み揺れる、Piyoのラップのアクの強さなわけで。感情的な言葉にそのままの感情を乗せて歌うラップは、ある意味SEEDA以降の感情的なラップの究極的な形とも言えるのかもしれない。好き嫌いはかなり別れるだろうが、とにもかくにも、耳を持って行くインパクトのあるラップなのは間違いない。

どちらかと言えば、ソウルフルなホーンとフルートに助けられて決意表明するHIPHOP然とした「Tokyo Hustle」のような曲のクオリティが高い。それに倣ってラップの濃さをトラックで薄めた「Theme Song」なんかは、リリックも素直に耳に入ってくる。自分の出番でライブの客がはけて行き、めげそうになったところで一人の客が「響きました」と声をかけてくれる。そのために頑張れる。 "夢の続き" を聴かせるために苦難の日々を、今の自分をそのまま吐きだすこの曲での彼の姿勢は、とても実直で心に響く。

一方で終盤の3曲では真逆のことをやっていて、余すことなくドロッドロな感情をそのままラップでぶつけている。サビが頭から離れなくなる「いい時代」の、否応なく彼のパーソナルな領域に絡め取られる不気味な迫力はなかなかに凄い。

ところで、「人間の条件」は恐らくはアレントの著作からの影響で書いた曲だと思うが、そこから「Silent Majority」へと意識的に繋げたのなら、K DUB SHINEやそこらの自称社会派ラッパーの曲よりもずっと示唆に富んでいると思う。個人的にはあまり相容れない右寄りなリリックそのものはさておくとしても、全体主義から逃れ、人間の生活には人と人が言語を媒介して直接に協力する「活動」こそが至高であると説いたアレント『人間の条件』から、サイレントマジョリティに直接語りかけるこの流れは、狙ってやったのなら凄い。

全体としてはアクの強さが過ぎて、他のラップの構成要素が耳に入らなくなってしまっている曲もあり、ムラのある作品ではあるだろう。でも、本格的に政治を語ろうとしているラッパーは未だ稀有だと思うし、音楽性と共にその面で更に成長を続ければ面白いだろうな、と思う。



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02:06 | Piyo Londirt | comments(0) | -
Between the bright and the dark / Mr.OZ&EL LATINO


1.intro
2.only your love feat.Ms.Ooja
3.It’s been too long feat.小舞
4.This is for the hood feat.Ms.Ooja,プリメラ
5.O FIVE TWO
6.The latter for… feat.Ms.Ooja
7.G’z always cry alone
8.Between the bright and the dark

★★★★★★★☆☆☆

ハードコアバンド・カルサリのフロントマンとしても活躍した両名による、スプリットミニアルバム。2006年11月22日発売。

名古屋のシーンはほぼ平均して安定した一発を打ち込んでくる一方、金太郎飴状態にあるのも事実で、その中でよりフレキシブルな作品を届けてくれるMr.OZには最も期待していた。そこで彼のソロアルバムを経て届いたのが、EL LATINOを引き連れ交互にソロ曲を収録した本作だ。8曲ながら、両者のソロ1stアルバムを凌駕し得る出来の良いミニアルバムだと思う。

節間に言葉を詰め込んで喋くり尽くす低音フロウの両者が並び立って、各々ソロ曲を交互に受け持つ。更にテーマもハードコアなものは皆無で、よりセンシティヴな色合い、曲調に統一されている。これだけ見れば一般受けを気にした結果パッとしなかったあんなこんなな作品の山に埋もれてしまいそうなものだけれど、これが驚くほどクオリティが高い。特に、Mr.OZ周辺でその手腕を存分に発揮するonodubやEqualといった面々が手掛けるトラックが、名古屋特有の垢抜けたハイファイ感を保ちながらも情感に溢れ、ラップに寄り添う形でクオリティを底上げしている。

ラップではMr.OZに一歩譲るEL LATINOも、盟友Ms.Oojaを3曲に連れ込み、相性の良さをもって対抗している。「Only your Love」なんかは、特に彼女のコーラスの力が大きい。ウェッサイ調のクルージンソング「This is for the hood」での心地良さも、このジャンルのHIPHOPにしか醸し出せない魅力に長けたハイセンスなものだ。

Mr.OZのソロに至ってはもうソロ1stよりも元気で、本作での彼の担当曲には完全に外れが無い。「It's been too long」でのリリックの聴かせ方を心得たフロウ回しなどもさることながら、「O FIVE TWO」は凄い。タイトル通りの地元への感謝ソングと言えばチープだが、アコーディオンの1ループに支えられて本気の言葉を吐くMr.OZの力量を改めて実感する素晴らしい1曲。この頃からの彼は、あの声にも関わらず詩を普通に聴き取れるラップを出来ているのが凄い。また、ヴァースの最後の "Hello 052 What's Up? Homiez" あたりは、こうして書き起こすと全然大した詩じゃないんだけれど、実際に聴くとリズムの取り方がめちゃくちゃカッコ良い。

EL LATINO「The later for...」のリリックにちょっと引っかかるところがあったりもしたけれど、最後にはEL LATINO、Mr.OZの2人で組んで「Between the bright and the dark」にて文句なくバッチリ締める(もうイントロから最高!!)あたりも含めて、ほとんど隙のない作品。この辺の名古屋HIPHOPにおけるひとつのクライマックスはEQUAL『ごうだつゲーム』だと思っているけれど、それに比肩するミニアルバムと言ってもあながち過言ではあるまい。
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03:07 | Mr.OZ&EL LATINO | comments(0) | -

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