RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
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MADEINDYNASTY / ICE DYNASTY


1.FRESH (GUNHEAD REMIX)
2.4 MY HU$TLERZ(LIL'OGI REMIX)
3.REMEMBER... feat.LEO(Y.G.S.P REMIX)
4.ONE LOVE

★★★★★★☆☆☆☆

8月31日に彼らが主宰するイベント「ICE CITY」の開催に合わせて発表された無料ミニアルバム。先の2ndアルバム「C.O.L.D.」収録曲のリミックス3曲に、新曲の「ONE LOVE」を加えた構成。2010年8月26日発表。(ダウンロードはこちらから)

前作では、正直BACH LOGICやLUCHA、SKYBEATZなど、旬のプロデューサーの渾身の音を飼い殺しているだけの没個性ラップグループという印象しか抱けなかった。しかし本作では、そうしたラップにトラックが歩調を合わせたことにより、下手すればアルバムよりも楽しめる出来になっている。

リミキサー達によるラップを活かそうという試みは、作品の随所に感じられる。ディスコ調のトラックにラップのピッチを上げて乗せることでマイクリレーものとしての疾走感を演出した「
FRESH」、抜きに抜いた音でラップを浮き出たせ、TRINA「REACH OUT」のようにエレクトロな電話プッシュ音をアクセントに敷くことで冗長感をなくした「4 MY HU$TLERZ」など。逆に、抜き過ぎた原曲のトラックが、6分超の長さを切り抜けられなかった自分語りなラップと相まって退屈な曲にしてしまっていた「REMEMBER...」は、ヴァース部分でドラムパターンを増やすことでフラット感を打ち消そうとしている。いずれもやっぱりラップが…と不満が出そうにはなる。しかし、トラックが後付け的に不足部分を補完してくれた結果、トラックだけがてっぺん獲りそうな勢いでラップの遥か先を走っていたアルバムよりもずっとラップミュージックとしては楽しめると思う。

ただ、最後に待つ新曲「
ONE LOVE」は素直に勧めることの出来るクオリティ。アーバンジャズ風のメロウトラックの上で吐き出される彼らのラップは、HOOKの凝り方、リリックの力の入れ様、共に僕の知るICE DYNASTYのベストアクトだ。「C.O.L.D.」のレビューで、 "ラップのキャラクターで没個性化しているなら、内面的なリリックの書き方で各々を差別化する所にしか活路は無い" みたいなことを書いたと思うが、友人の死に向けて歌ったこの曲がまさにそれだ。

特にラストのRAW-Tが熱い。
"やっぱり人生は夢じゃない なら描いた現実で見てみたい 肉体は限りがあるから せめて限りない思いを残したい 死んだあいつを殺さないための方法、ラップだったこの世界 全てが繋がってんなら、やっぱあの世もクソもねえよな"

トラックの出来ではなく、ラップのリリックを求めてICE DYNASTYの曲を何度もリピートしたのは、この曲が初めてだ。
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18:21 | ICE DYNASTY | comments(0) | -
前人未踏 / 韻踏合組合


1.前人未踏feat.AMIDA,だるまさん,MINT (prod.EVISBEATS)
2.MECCHA MECHA (prod.EVISBEATS)

★★★★★★★☆☆☆

大阪のHIPHOPグループ・韻踏合組合の結成10周年記念シングル。1000枚限定生産、525円で2010年8月27日発売。10周年記念として、タイトル曲には脱退したAMIDA,だるまさん,MINTの3人も参加。

目玉の「前人未踏
」はEVISBEATSらしい陽気なホーンが上でなる一方、不機嫌な表情のまま進行するボトムラインが彼らの名曲「揃い踏み」のような原初的アングラ感を漂わせる、陰陽両方に沈んだドープシット。「揃い踏み」のように初期衝動の勢い丸出しな曲ではないが、その各々の落ち着きとスタイルの変化に、本作をあえて「揃い踏み」と並べ立てる意義がある。

脱退組の変化は特に顕著で、中でも歌いながら踏み、踏みながらロックするだるまさんの器用なラップと、もう思いついたそれっぽいライミングをそのまま放りこんだミンちゃんの破天荒さは、聴いていて「これが聴きたかった!!」と思わずにはいられなかった。ミンちゃん、せっかくの記念碑ソングを "めんそーれー" で始めちゃってるよ…。もちろんAMIDAのマイペースなラップも健在だ。入りの "ごめんあそばせ" に謎の中毒性が潜んでいる。

マイクリレーの順番は
遊戯→だるまさん→(HOOK)→ERONE→MINT→(HOOK)→HIDADDY→AMIDA→SATUSSY→(HOOK)
と残留組が脱退組の前に立つ形で進むのだが、キャラ立ちしつつも円熟味溢れる王道なライマーといった佇まいを見せる残留組から、ハチャメチャな脱退組にマイクが渡るところで風向きが一気に変わるのがたまらない。盤石の地盤を整えるストイックなラッパーと、大盤石を覆すが如き勢いで食ってかかる奇天烈ラッパーのせめぎ合い。これこそがマイクリレーの醍醐味だ。過去のポッセカットにも決して引けを取らない楽曲だろう。

カップリングの「
MECCHA MECHA」はラテン調のユーモラスチューンで、メンバーがタイトル通り様々な「めちゃくちゃな体験」を語る内容。HIDAのヴァースのように聴き手を勘ぐらせる面白さも備えているが、リピート回数も自然と増える2曲入りのこのシングルにおいて、それに耐え得るだけのタフネスを身に付けた曲かと言えば、素直に首を縦には振れない。

なお本作に収録された2曲はどちらも10月発売予定の韻踏合組合の新作アルバム「
都市伝説」に収録される。しかしERONEによれば、このシングルを購入した人のみ、「前人未踏」のリミックス3曲がダウンロード出来るとのこと。詳細はこちらで。
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22:52 | 韻踏合組合 | comments(0) | -
RAPMANIAC / RAPMANIAC


1.0422×0859 Produced by RUN-BIRD 
2.Change the life Produced by KEMUI 
3.セーヌ河の奇跡 Produced by Stormy Monday 
4.DREAM Produced by MASS-HOLL(Medulla) 
5.頂点か暴言 Produced by Stormy Monday 
6.skit1 Produced by Muzono 
7.LOWPOP Produced by TSUNEO(BAACK SEAT CHILL) 
8.手の平でダンス Produced by RUN-BIRD 
9.遺言10 CIRCUS remix Produced by Rayzie-K 
10.FOOTWORK Produced by MR.炭酸 
11.Where is… Produced by Stormy Monday 
12.skit2 Produced by Muzono 
13.RAIN Produced by Rayzie-K 
14.ナイトフェリー Produced by TSUNEO(BAACK SEAT CHILL) 
15.Rollin' Day Produced by MR.炭酸 
16.金木犀 Produced by FUNK入道 
17.五感と対東京 Boogie remix Beat by DJ Kosuke and Stormy Monday 

★★★★★★☆☆☆☆

鳥取県米子市出身のMCであり、ダメレコより2008年に発表されたOLA U-TANG「
もりのひと」にもメンバーとして参加したRAPMANIACの1stアルバム。自ら立ち上げたScrape Issue Recordsより、2010年5月12日発売。

その垢抜け無いフロウと素朴なワードチョイスは、おそらく日本のHIPHOPだけを採食してきたのだろうと容易に推察出来るラップの構成要素となっている。ソースをドロドロにかけたステーキ丼みたいな音楽を出して「日本のHIPHOP」と言うような、その言葉の意味が使用言語にしか求められないタイプのそれに比べると、RAPMANIACのこのアルバムはごはんと味噌汁だけが並ぶ、純朴な和風食といった趣だ。

ただ、中庸的に調理された日本語フロウとそこに絡むローカリズムには、耳をロックするような新鮮さは皆無。HOOKでやたら強調しながら連呼される韻も、どうにも音楽としてスマートに聴こえない。OLA U-TANGなど、グループの中ではそのスッとした佇まいのラップがアクセントとして働くのだろうけれど、ソロ作だと特徴が無くなってしまう典型例だ。客演を迎えず全て自らのラップで埋めたその努力は本当に素晴らしいけれど、それだけにHOOKの作り込みの荒さ(ex.「セーヌ河の奇跡
」)や体力切れを感じさせるようなヴァースなど、ソロマイカーとしてはあくまでも発展途上の作品でしかないことを実感させられる。発展したその先が見えるだけの努力が伝わってくるのも確かだから期待したいけれど。

ただ、オーソドックスに黄金期回帰を目指したトラック群の水準は低くない。KEMUI作の「
Change th life」、MedullaのMass-Holeによる短いループが強烈な「DREAM」、ダースの「金木犀」などでは、RAPMANIACのフロウも奔っている。もっとラップに深みが出れば、味のある作品を作る人になると思う。
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13:52 | RAPMANIAC | comments(0) | -
IDENTITY / Mr.OZ


1.Report of a gun 
2.Time is money,Life is game 
3.Push Your Hands Up 
4.4season~cruisin’winter~ 
5.MODEL feat.來々
6.IDENTITIY
7.Wall Of Hate feat.LA BONO,K.K. for CALUSARI 
8.skit#
9.Mr.Billy MeetsgunIII 
10.Dear…feat.拳太for J-GREN 
11.4Seasons: in early spring 
12.Set the Table feat.RYUZOfor R-RATED 
13.Sure Shot feat.YOUNG BERY 
14.LAST SONG
 
15.G.U.N.~Ganxstaz Unusefull Nack~remixfeat.尾崎 陽子

★★★★★★★☆☆☆

名古屋でPhobia Of Thugのメンバーとして活動してきたMr.OZの1stソロアルバム。自身が主宰するBIGG MAC RECORDSより、2005年12月28日発売。

リズミカルと言う言葉を捨て去ってリーディングに傾倒したフロウは、リリックへのこだわりを以って、その犠牲にしたものの大きさを感じさせないほど魅力ある輝きを放つ。音としての言葉と言葉としての言葉は、なまじ詰め込める情報量が多いHIPHOPにおいては比重問題になるきらいがあるが、後者に振り切ったMr.OZの言葉は、ありふれたテーマである感謝チューン「
Dear...」なんかでこそ本領を発揮出来るのが強みだ(拳太のヴァースが不要だけど)。というか、ほとんどの客演に必要性を感じないほどMr.OZ一人の言葉がヘヴィに響いてきて、もっとこの言葉に沈んでいたいと思う。むしろ過剰な啓蒙性を纏っていないぶん、リリカルであることをやたら売りにするタイプのラッパーよりもその言葉が素直に届く。

Phobia Of Thugを離れてのソロ作ということで、そのリリシズムはやや内向的な面に沈む。アグレッシヴなHIPHOPチューンの中で型にはまらない、自分なりの言葉を吐き出していたボースティング型ラッパーとしての魅力が味わえるのはYOUNG BERYとの相性が抜群な「
Sure Shot」など、ごくわずか。それゆえ、onodubが多くを任されたトラック群もメロウで繊細な色彩を強め(それが悪いというわけでなく)、その意味で彼のデスヴォイスがボースティングによって迫力倍掛けの効果を発揮する場面も少ない。

それでも名古屋勢とは思えないほど品のあるクルーズチューン「
4 Seasons : cruisin' in winter」や、その巧みな心理描写が「HIPHOP、ありがとう」というさんざ聴き尽した言葉に重みを持たせる「IDENTITY」(II-Jのプロデュース力はさすが!!)などを聴くと、言葉とその振り回し方をきちんと心得ている日本で数少ないラッパーであろうと実感する。

ソロアルバムが故の攻撃性の減退を理解した上で聴くならば、彼の相変わらず渋い言葉の数々に十分満足出来るアルバムだ。名曲「
G.U.N.」のリミックスも、原曲には及ばないが味のある仕上がり。

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16:58 | Mr.OZ | comments(0) | -
THIS IS MY HASTLE / YOUNG HASTLE


1.Motivation     
2.V-Neck T    
3.Workout    
4.Party Too Much    
5.End Of Summer feat.Luv-P    
6.Bonafide feat.寿& BIG-T    
7.Sweet Surrender    
8.Why Did You Leave Me    
9.Still Reppin' STC feat.Ensyu    
10.100% Positive    
11.It's Up To Me  
12.This Is My Hustle

★★★★★☆☆☆☆☆

渋谷を中心に活動し、レーベル「STEEL THE CASH」を主宰するMC・YOUNG HASTLEの1stアルバム。2010年6月9日発売。

ここ最近で急速に浸透してきたSWAG系HIPHOP(※)。そのスタンスを体現してみせた「V-Neck T
」が巷で話題になったのが、このYOUNG HASTLEだ。シュールなPVと "服を小さくするだけじゃなく 体鍛えりゃ服が小さくなる" の強烈なパンチラインを潜ませたこの曲で一気に知名度を上げた彼のアルバムは、筋肉バンザイチューン「Workout」など同じ系統の曲も絡めつつ、全体としてはストレートなHIPHOPを貫いている。Sweet Surrender」と「100%Positive」(共にDJ Koza製)を除きLuck-EndのDJ Atsushiによるトラック群もそのマスタリングを通すことでよりハイファイ感を増し、そのクリアな音質がYOUNG HASTLEの主張をHIPHOPの泥まみれな部分から解放してくれている。

ただハイセンスとは真逆な部分でやたらに謎の中毒性を残してくれる「V-Neck T
」のようなクオリティを持った曲は少ない。アルバムを聴き進めるごとに、「V-Neck T」を聴いているときにも薄々気付いていた、フロウの単調さが耳に付く。ブレスの吐き出し方なんかは魅力的なのだけれど、このシンプルすぎるフロウと、オマケ程度にケツにひっつく韻は、ソロアルバムで聴くには辛いものがある。「Workout」のようなSWAGものを増やして需要に応えるか、そうでないならあまりに杓子定規にストレートなHIPHOPアルバムから逸脱して欲しかった。上記2曲以外はYOUNG HASTLE以外のラッパーが15年間散々やり尽くしてきた分野でしかない。

ただ先述したブレス混じりの発声は好みだし、それに加え、なんか知らんが眼力が凄い。般若やSEEDAのギョロつき方に近いものがある気がする。だから音源よりもPVで映えるのかもね。

※その定義がまだ曖昧なのだけれど、ここでは自らの趣味をそのまま歌うのではなく、その趣味のハイセンスぶりをボースティングするものとして、ブログラップとの差異を特に意識せずに使用しています。

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11:07 | YOUNG HASTLE | comments(0) | -
Verseday / PONY


1.あの頃と今 Produced by YOUNG-G (おみゆきCHANNEL)
2.Still Run This Town feat. KTY Produced by BIG BEN (おみゆきCHANNEL)
3.Another day'z Produced by BIG BEN (おみゆきCHANNEL)
4.SUNDAY feat. WAX Produced by KURABEATS
5.Change Produced by FUNK入道
6.Restart Produced by KURABEATS
7.Who is the KING?? feat. DJ DICK Produced by YOUNG-G (おみゆきCHANNEL)
8.Freestyle feat. Dr.KITOU
9.Mr.Mr. Produced by BIG BEN (おみゆきCHANNEL)
10.New School feat. G-SWOOSH Produced by BIG BEN (おみゆきCHANNEL)
11.助言 feat. MMM,田我流 Produced by BIG BEN (おみゆきCHANNEL)
12.Birthday feat. CHIYORI Produced by ZIPSIES
13.楽園 Produced by おみゆきCHANNEL


★★★★★★★☆☆☆


stillichimiyaの一員・PONYの1stソロアルバム。2010年5月5日発売。

冒頭の「
あの頃と今」で自分のルーツを辿ったのち、 "オレには夢しかねぇ" と締めて清々しく前を向くPONYの視線は、次の「Still Run This Town」以降、一気にサクセスストーリーの糸口すら無い地元に向けられる。「リアル」であることを大前提としたときに生まれる、あまりにも語るには取りとめの無い現実をそれでも音に乗せて歌う。それは凄く垢抜け無くてクールでやさぐれていないけれど、HIPHOPの根源的価値観に最も忠実なアプローチだ。

しかしPONYはそんなどうしようもない現実に呑まれるばかりの音楽であることをよしとしない。「Change
」以降の中盤から、愚痴を飲み込んでラッパーとして前を向く。その意気込みが横滑りしたような「Who is the KING??」なんかは多少飛び道具的でもあるだろう。しかし "歌うことでどう変わるかわかんねぇけど、歌うぜ" と意志を固めて言葉を紡ぐ「Mr.Mr.」は、後ろ向きになりがちなこのスタイルを、あくまで前向きな生産手段として扱おうとする姿勢が清々しい佳曲だ。

そうした「リアル」を表現手段とすることは変えないが、それを言い訳にただ薄暗い言葉を並べるだけのHIPHOPになっていないから好感が持てる。そうでなくては「Birthday
」だって、言い訳程度に入れた感謝ソングにしか聴こえなかっただろう。締めの一曲「楽園」も同じ。やっぱりHIPHOPにはもがく人間がその泥まみれの姿を見つめるだけじゃなくて、そのどん底から希望を見出すツールであってほしいんです。

PONYの感情をブレスと共に吐き出すラップスタイルは、SEEDA以降の潮流、同じstillichimiyaの田我流と同じカテゴリに位置付けることが出来るだろう。基本的なスタンスも同じだが、先に出た田我流「
JUST」よりも身内のプロデュースワークが洗練されているぶんだけ、僕らは彼らに、彼らは地元に、未来を感じることが出来るのがこのアルバムだ。

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10:58 | PONY from stillichimiya | comments(0) | -
THE SIX MILLION DOLLAR MAN MIXED BY DJ J-SCHEME, HOSTED BY NIPPS / VIKN


1.THE SIX MILLION DOLLAR MAN -INTRO-
2.HIP HOP NAVY
3.WE GET MONEY
4.THE THEME OF SAMURAI RICHARD feat. TETRAD THE GANG OF FOUR
5.24 feat. JBM
6.EXCLUSIVE feat. B.D
7.RHYME RYDER feat. BIGZAM
8.SPREAD THE SHINE -FREE STYLE- feat. VIKN, SIMON, JASHWON
9.NO WONDER feat. SPERB
10.SURROGATED MOTHERSHIP -NEW YORK MIX- feat. SPERB, B.D
11.STREET ON FIRE feat. C.T, MIKRIS & DJ TY-KOH
12.CHOICE feat. t-Ace, WOODSMAN
13.ON TO THE NEXT feat. SPERB, MARIN
14.141
15.THE SIX MILLION DOLLAR MAN -OUTRO-
16. JACKIN' 4 BEATS REMIX feat.KGE,寿,RAW-T,JBM,MEGA-G,CHINO,VIKN,S.L.A.C.K,OJIBAH,林鷹

★★★★★★☆☆☆☆

NIPPS擁するTETRAD GANG OF FOURの一員としても活動するMC、VIKNが発表したミックスCDアルバム。2010年4月14日発売。

堅実でオーセンティックなラップスタイルはNIPPSと肩を並べて活動することになんら違和感を感じないほどに磨きあげられており、この世代でも有望株と言えるだろう。ただ、時代的な影響からもそのリリックには日本語として成立する言葉が求められる中で、それに迎合したVIKNのラップはやや威力を失いがちだ。伝えたいトピックもそう多くない中で、自ら言葉の偶発性をパンチラインに変換するスタイルを封印してしまっては、リリック面で聴き手をハッとさせることは難しくなる。残るはフロウで勝負する選択肢だが、リリックの力を差し引いて、節回しそれだけで何度も魅せることの出来るラッパーはそうそういない。TETRADアルバム収録「
PARTNERS IN CRIME Pt.2」のヴァースでの "中々いそうで中々いない〜" の一連のラインなんかは奇跡的にリリックそのものよりもフロウでラップの威力を引き上げていたが、本作ではフロウであれほどカッチリハマったラインは作り出せていない。

上記の理由からも、言葉が明確な目的を持って吐き出された「141
」を除いて、ソロ曲の威力はリリックを語り進めるごとに間引きされる一方だ。どちらかと言えば、VIKNの正統なラップスタイルがワンクッション置く役割を果たすことになる、客演との絡みの方が楽しい。さすがに「SPREAD THE SHINE」は、インパクト大なANARCHYや、近年稀なヴァース丸ごとパンチラインを達成した般若が偉大すぎる原曲には及ばない。しかしそれでも、トリを務めた般若とは正反対に冷徹に攻めるJASHWONのラップなど、メンバーの本気具合は伺える。それぞれ完全にBIGZAMやDJ TY-KOHの中二シャウトに食われてしまった「RHYME RYDER」や「STREET ON FIRE」もVIKNのラップを目的に聴かなければ楽しい。MARINが「No Diggity」のラインを丸々なぞる「ON TO THE NEXT」なんかも、遊び心として良いと思う。

TETRADなどでVIKNのラップに興味を持った方がその欲求を存分に満たすことが出来る作品かどうかはかなり怪しいが、ミックスCDアルバムらしいトラック借用や肩の力を抜いた身内とのエクスクルーシヴなど、その側面での価値は失っていない作品であろう。CDに初収録の「
JACKIN' 4 BEATS REMIX」は、出だしのインパクトが凄いKGE(「病む街」)、途中の抜きがセンス溢れるRAW-T(「B-BOYイズム」)、なんか原曲オマージュの "なにやら" の部分の発音がやたらハマってるJBM(「人間発電所」)あたりは特に良い働きをしている。中でもS.L.A.C.K.(「FUKUROU(YAKANHIKOU)」)の部分は、あの短い尺で一気に幻想的な空間を作り出している名ヴァースだと思う。
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12:39 | VIKN | comments(2) | -
LOUD / JBM


1.THE KONG (pro. HOSOMICHI)
2.GET ON DA MIC (pro. DIG DA SOUTHPOW)
3.ONE WAY feat. TAD'S A.C. (pro. LUIGER)
4.OHSAMA KING (ORG ver.) feat. B.D. the brobus , NIPPS (pro. MURO)
5.SKIT (pro. 黒髭)
6.BROS feat. MIKRIS (pro. HIMUKI)
7.SO CRAZY feat. MARS MANIE (pro. HIMUKI)
8.44 BARS (pro. JASHWON for B.C.D.M)
9.DAIKAITEN feat. KGE the shadowmen , SQUEEZE from GLADIATOR SOUND SYSTEM (pro. 黒髭)
10.PEN IS MIGHTER THAN SAVOR (pro. 黒髭)
11.NEVEREND (pro. 黒髭)
12.LOCAL TALK (pro. 黒髭)
13.CICADA feat. ROCKASEN (pro. PHATBAXXX)
14.IDEAL & REALITY (pro. 黒髭)

★★★★★★★★☆☆

JBMの、全国流通作品としては初となるソロアルバム。2010年5月19日発売。

これまでの客演ではマイクリレーで重宝する典型的なアクセント要員であって、ソロで輝くには難があるんじゃないかと思っていたが、JBMはそんな浅はかな展望を飛び越えてブッといアルバムを届けてくれた。

MUROに強い憧れを抱くJBMの本作は、多様なトラックメイカーを呼び込みながらも、音はMUROの影響を感じさせる90年代を思わせるものに統一。その音の上で無理はせず、堂々といつものペースでラップするJBMの存在感は、客演で聴いたときよりもずっとデカかった。ソロマイカーとしてもガッツリやっていけるだけの力量があったんだなぁ。ブームバップサウンドの上で一定のリズムで言葉を吐くJBMのラップは、ともすれば単調だと切って捨てられるものになってしまうのだけれど、重量感のある声の迫力と、その堂々たる佇まいが実にカッコ良い。ヘヴィな声質のラッパーのソロ作はやたらにバラエティ感を高めることでしか聴かせられないのではと思っていたが、どっかり腰をおろして、やりたい音の上でやりたいラップだけする本作でのJBMは、ぶっとい幹のような安定感で、その一本気な姿勢が様になっている。「GET ON DA MIC
」なんてなんら器用なことしてないのに最高だよ。

何度もタッグを組んでいる人材で固めた客演陣との曲もことごとく良い。中でも「
OHSAMA KING」は、the sexorcistのアルバムに収録された大人気曲のオリジナル版とのことだが、リミックスに全く引けを取らないクオリティだ。やたらギラついた和風サウンドのカオス具合がいかにもMUROらしい。使い方次第で曲を高めも壊しもするMIKRISも「BROS」では絶好調。「Everybody Loves The Sunshine」を引用するあたりからの怒涛のヴァースでは、MIKRISのラップで盛り上がるという貴重な体験が出来る。

憧憬を抱いていた90年代の(MUROの)HIPHOPに自らのスタイルがガッツリハマったのはきっと偶然ではないだろう。不器用で小回りの利かないラップではあるが、それはソロのフィールドでこそ一番輝くよう設計されたものでもあった。意外と客演ものよりもソロで光るラッパーなのかもしれない。

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内なる辺境 / Piyo Londirt


1.TOKIO 
2.I REP (Theme Song Remix)
3.純国産
4.再起動都市
5.愛なんて知らない
6.明日から僕達

★★★★★★☆☆☆☆

会津出身で現在は東京で活動する23歳のソロマイカー・Piyo Londirtの無料ダウンロードミニアルバム。2010年7月26日発表(本作のダウンロードはこちらから)。これとは別に、コラボレーションアルバム「Testator P」も無料ダウンロードで発表している(ダウンロードはこちらから)。2010年7月には1stソロアルバム「突然変異体
」も発表している。

暑い日が続くので最近は脳細胞が頑張らなくて済むような音楽ばかり聴いているけれど、こういう真面目なHIPHOPも嫌いじゃない。友人の死を受けてラップを受けたというルーツにも端的に見てとれるように、Piyo Londirtがラップする意味は、HIPHOPという音楽そのものへの感動ももちろんあるが、それ以上に自己主張の伝達手段としての意味合いが強い。そしてこの作品でPiyo Londirtは、この日本社会を俯瞰しながら、このままで良いのかリスナーに問い掛ける。

「学ぶこと」。本作で彼が強く訴えていることのひとつはこれだろう。「考えるな感じろ」「理屈じゃねぇんだよ」なんていう、思考を排除したフィーリングの絶対視も強く残る日本のHIPHOP。ダンスミュージックとしての側面から、その意義は決して否定しない。しかしこの業界で、これまであまりにも「学習すること」に言及することは、社会規範に抗うこの音楽の性質上のこともあってか、避けられてきた。

しかしPiyo Londirtは「学ぶ」必要性をこちらに訴えかける。「I REP(Theme Song Remix)
」で "退屈な授業ほどペンが進む 黒板ではなく心の奥を写す語彙を増やす為と本を読む 理解し始めた 学ぶということ" と語るPiyo Londirtは、「TOKIO」で都会に生きる人間が愛を持つことがこの街を死なせないことだと訴え、「純国産」で日本文化への意識を高めることを同業者に訴え、「再起動都市」で大量消費社会に組み込まれた自分を見つめ直すことを訴え、「愛なんて知らない」で子育てに疲れた母親に、そして取り巻く友人達に愛と痛みを教え、伝えなければと訴える。

こういう高い問題提起意識を持ったラッパーは、もっともっと生まれてきて良いと思う。しかたなくアルバム中に一曲 "政治はダメだ お前らが変えるんだ" みたいな曲を入れて社会派的側面をアピールした気になってるアーティストはもういらない。ほんとにファックバビロンと思ってるなら、ファックバビロン以外にもっと言いたいことあるはずでしょ??

さすがに堅苦しさがないわけでもないし、感情が先走ってしまい、リリックの聴かせ方にアクセントが無く、その点でやや難が残るラップではある。でも伸びる素地は十分に感じられるし、何よりPiyo Londirtの高い意識の持ち方はここで打ち止めになる人ではないと確信させてくれる。 "リリースが遅い 一年で十曲も書けぬ「アーティスト」とやらに物申す 自己満足なら婚礼の余興 存在が虚構 もう筆を折ろう"(「純国産
」)みたいな言葉は頼もしいし、これからの活動を期待したいと思う。

ただひとつ。いくつかの曲などで散見されるように、Piyo Londirtのリリックは、彼の持つ少なからず右寄りなイデオロギーがそれを紡ぐ熱情を生み出していると思われるのだけれど、その愛国心と音楽性の希求が混同されている向きがある。「純国産
」で日本文化への意識を高め、日本のHIPHOPはアメリカから離れて独自性を追求するべきであるとPiyo Londirtは主張する。しかし「純国産」であるかどうかと「HIPHOPとしてオリジナリティを創出しているか」は別物だ。むしろ純日本的であることをプライオリティとして設定してから曲を作るならば、その規定枠内でしか動けない音楽は、その時点でオリジナリティを失う。アメリカ的でも日本的でも、音楽はそのアーティスト個人が咀嚼しオリジナルに昇華出来ればそのルーツはさして重要ではないのではないだろうか。


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01:31 | Piyo Londirt | comments(3) | -

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