RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
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SLOW BUT STEADY / GAGLE


1.Intro
2.Dooo Ya Thing!
3.Round'n'Round
4.コロナ&ライム feat.BONNIE PINK
5.Deliver Us feat.Mahito(skidaround)
6.ラップ狂ノ詩
7.Cabaret
8.GL-O-CAL(グローカル)
9.クーデタークラブ 
10. My Home feat.椎名純平
11.Snowflake
12.High Drama
13.Goin' My Way
14.Farewell feat.KGM
15.Slow But Steady

16.Love Note (Seoul City Remix)

★★★★★★★★★


GAGLEの4thフルアルバム。2009年9月16日発売。

GAGLEは相変わらず凄いグループだ。彼らが認知されたのがDABO「徒然草」でのHUNGERのひょうきんな暴れっぷりだったこともあり、1stアルバム「
3 Men On Wax」のときは、そこに惹かれたリスナーを多分に意識してHUNGERのラップも破天荒な向きが強かったが、その後の作品ではより落ち着き払った、それでいて成長を感じさせるラップを聴かせてくれている。ビートを自由帳に落書きするように好き勝手な作業場にしていた1stの頃から、ビートにきっちり合わせ、音から不必要にはみ出ないラップへ。

そう歩み続けて、本作。ラップの瞬発力という意味では以前より落ちるが、ラップと音の双方をきっちり立てることに成功し、グループとしての成熟度は更に上がった。なお、HUNGERのラップスタイルの変化がスキルの劣化ではないことは、「
ラップ狂ノ詩」を聴けば明らかだろう。前作「3 PEAT」では実験的な音を多く奏でたトラックメイカーのMITSU THE BEATSも、十八番のジャジーな色合いはもちろん、本作ではグルーヴィなソウルトラックでも魅せてくれる。

感傷的なピアノの使い方が抜群な「
コロナ&ライム」始め、作中に「君」を設定してストーリーを展開する曲がこれまでよりも意識的に多く配置されている。それによって決して手の届きそうにないアーティスティックなノリが先行しているわけでなく、リスナーに向き合い、恋を語り、悩む若者の手を引いてくれるその内容は、親しみやすさを失わない。自分達の到達した更なる高みをまざまざと見せつけながらもリスナーと同じ目線で語りかけてくれる嫌味の無さは、「屍を越えて」、「若き匠達へ」に続く「Farewell」での感動を何倍にも高めてくれる。またもや傑作。

PV-DoooYaThing! / Round'n'Round
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23:53 | GAGLE | comments(0) | -
Doragonest Chronicle Contemporary / D.C


1.Intro
2.ホームレス feat 籠獅 ,GIZ ,T.O.M
3.ガッチャンバリン〜闇に咲き・光り散り行く〜
4.破血気 feat DICE , King.k
5.やりっぱなし
6.ギャンブリンブリン feat K.Z.M
7.夜盗 feat BIG IZ MAFIA
8.メデューサ
9.LBマダラン feat Gaff
10.カラスの学校 feat Douglas , XXL
11.ピースto da 破公
12.Time up Baby a.k.a. 五本指 feat Gothic , Switch ill
13.ボッタカジノ
14.遺書 feat Zang Haozi
 

★★★★☆☆☆☆☆☆

福岡親不孝通りを拠点に活動するグループ・SHITAKILLI IXの一員・D.Cの1stアルバム。2007年4月7日発売。

SCARSやSD JUNKSTAなどによる、新たなギャングスタ、ハスラー像がいよいよ浸透してきた2007年になって、未だにどこを切っても "ロレにカルティエピゲにピアジェ エメにルビーにスターサファイヤ 金ピカゴールドプラチナダイヤ"(「
ガッチャンバリン」) のようなリリックで埋め尽くされている本作の化石っぷりは逆に清々しい。名古屋のラッパーでもここまで典型的なギャングスタ&ラグジュアリー像だけで攻めないんじゃないだろうか。「メデューサ」や「LBマダラン」のように、リリックに工夫が見られる曲もあるにはあるが、内容は地元、身内ネタと当て字だらけで混然としており、リスナーに解釈の余地が残されていない。推測も出来ず、ただ意味がよくわからないだけ。

音数の少ない、アメリカナイズなトラックに乗せて単調にガナるだけのD.Cのラップもかなり辛いものがある。そんなやかましさに支配されている作品だから、「
ホームレス」でのT.O.Mがその爽やかな声質を曲に差し込んでくれるだけで好印象になったくらいだ。

Zang Haoziのローテンションラップにガナリを間引きされ、いくらか感傷的に自らを見つめ直す「
遺書」は唯一まともに聴けるが、それ以外はどこに音楽を楽しめる要素が残されているのか全く分からなかった。なぜかSEEDAのLAST LIVEに参加していたみたいだが、正反対もいいとこなスタイルなのに、よく交わったなぁ。
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02:04 | D.C | comments(0) | -
HOT MUSIC / アンチョビボーズハーモニー


1.Intro 〜韻トロ〜
2.アンチョビボーズハーモニー
3.アンチョビのララバイ 〜気をつけな火を点けな〜
4.Freedom feat. Mineshin-Hold
5.First Star Blues feat.Jammy
6.あふれてる 2010
7.一度の命 feat.あぐらCREW
8.洗いざらしパリッと乾きゃ新品より味出てくる様なフィーリング
9.Skit(好きっと)
10.I Love You .OK!
11.なんだってんだ
12.Hot Music
13.Country
14.ポケットにつめて歩き出せ
15.ゆとり
16.ありがとう、また会う日まで

★★★★★☆☆☆☆☆


ラッパ我リヤの山田マンとNO-T za 侠龍、DJ JUNESTIRによるグループ・アンチョビボーズハーモニーの1stアルバム。2010年4月7日発売。

「ピース&ハーブ」をテーマに、タイトル通り温かみのある言葉でヴァースを埋めていくそのコンセプトは、山田マンの言葉遊びの余地をことごとく削ぎ落す。残ったのは散々聴いてきたような、当たり障りの無い、無味乾燥な「社会派応援メッセージ」だけだ。ラッパ我リヤの相方であるQが現在進行形で新次元のフロウを開拓しているのに比べると、山田マンは停滞が続き、本作でもどのラップも言葉が大人しく小節内に収まっており、単調さが目立つ。本作での相方・NO-T za 侠龍のラップもお世辞にも音に乗れているとは言えず、山田マン周辺に集まるAkeey、C.I.C.に続く有象無象がまた増えたか、というのが正直な感想。

ほぼ全曲を手掛けた山田マンによるトラックもやたらに味の無いギターが割って入り、また、どの曲もリズム、質感共に似通っていて、絶対的に個性に欠ける。我リヤの前作「
MASTERPIECE」がサウスを下地にしながらもトラック、ラップスタイル共にオリジナルたろうとする姿勢が感じられたのに比べると、そうした音楽的向上心を捨てて安易なトラック製作、安易な社会的リリックに逃れたようにしか聴こえない。肩の力を抜いたユルいノリと言えば聞こえは良いが、単純に手抜きとしか思えない。

MINESINのテコ入れが効いた「
Freedom」、創意工夫と言うより人海戦術で押し切った「一度の命」はまだ聴けるが、それも決して良い出来とは言えない。唯一、走ったお経フロウがリリックの熱量も上げた「ポケットにつめて歩き出せ」は本気の山田マンが聴けて良いのだけれど。

実際走馬党信者の僕でもこれだけズッコケてるわけで、最近の山田マンのラップ(「MASTERPIECE」除く)を聴くにあまり期待してはいなかったが、まさかここまでとは思わなかった。「
SKIT(好きっと)」での、両者のぶきっちょな演技に癒された。ブックレットのお姉ちゃんのセクシー写真集が中々エロかった。それだけの作品。好きなだけに悲しい。


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23:18 | アンチョビボーズハーモニー | comments(0) | -
GREEN ART / INSIDE WORKERS


1.LET'z GO
2.GREEN ART
3.SURVIVE
4.CRYSTAL HARMONY
5.IN DA CLUB
6.PROJECT
7.CRAZY( FRESH VIBE MIX)
8.CRAZY Pt.2 feat.茂千代
9.草案
10.攻撃重視(MAD5 REMIX)
11.RUNNAWAY
12.LIFE is LIVE
13.闇雲SUNRISE
14.ベイブルース大阪 feat.1LOW
15.PEOPLE GET UP(梟観光REMIX)
16.SMORKERZ DELIGHT(UP THA MIX)


★★★★★★★★☆☆

大阪を中心に活動を続けるINSIDE WORKERSは、ZIM BACK,SUPER-B,W-MOUTH,GASSの4MCと、主にトラックメイクを手掛けるDJ SOOMAによる5人組。 本作は2009年4月9日発売の2ndフルアルバム。

別作品に収録された「
IN DA CLUB」や「攻撃重視」が難なく作中に無理なく溶け込んでいるように、その作風は90年代のノリを引き継いだ、一徹の作り。大阪の風土にこうしたHIPHOPが良く合うのか、DESPERADOからの系譜を受け継ぐ一派だ。

そのDESPERADOから活動を続け、本作にも参加した茂千代との「
CRAZY Pt.2」など、DJ SOOMA以外の手によるトラックも入ってくる中盤でやや中だるみする感もある。ダーティワードを排除した肩の力を抜いたリリックと、反対に砂埃舞うトラックと決して華やかとは言えない職人気質のラップが生み出す、妙に人情臭い魅力も、大阪と言うシーンの中でもはや新鮮味は無い。しかし公式に自らのスタイルを押し込めるのではなく、あくまでも自らのスタイルが大阪という土地の中でこのスタイルに帰結したのであるというナチュラルな因果関係が、それでも聴いていて無理なく楽しませてくれる。

各曲のキャラ立ちという点でも通して聴くと何が何やらわからないくらいのワンマイクワンスタイルだが、アルバムにおけるヴァラエティというアーティスト性を捨てて、ひたすらに自らのスタイルを表現し続ける不器用で猪突猛進なマイクリレーにはニヤリとせずにはいられない。初っ端の「
LET'z GO」にピンとくれば良作、ピンとこなければ残りの15曲も苦行。そんな作品。

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23:07 | INSIDE WORKERS | comments(0) | -
Natural 9 / UZI


1.Intro 
2.Natural 9 
3.Urban Barbarian Gym  feat.UBG
4.HIP HOP 
5.大輪 feat.CAMEL
6.KIX REMIX  feat.神
7.ZIG ZAG SAMBA  feat.秋田犬どぶ六
8.城南ウォーカー feat.GK MARYAN
9.火曜サスペンス劇場 
10.WARNING  feat.SHIBA-YANKEE,SHINNOSK8
11.BATTLE FIELD 
12.Urban Cruising  feat.HI-D
13.出せなかったラブレター  feat.48.9
14.我良友 ~My Good Friend~ pro.LUCHA 
15.1つだけ  feat.秋田犬どぶ六

★★★★★☆☆☆☆☆


つい先日解散した、ZEEBRA率いるUBGの一員・UZIの4thアルバム。2008年3月26日発売。

いつも通りにストレートなHIPHOPをする前半、多様なテーマに挑む中盤、大人な恋愛サイドに流れる後半と綺麗に構成を分けてはいるが、それぞれの曲は今までも散々見せてきたやり口であり、ゲストと合わせて新鮮味は皆無と言って良い。1st「
言霊」、2nd「No.9」、3rd「美髯公でやってきたことの集大成と言えば聞こえは良いが、要するに似たようなラップが進歩無く並ぶだけだ。特に美髯公」のときにも似たようなことを書いたと思うが、あるトピックを語る際に固有名詞を並べ立てて終わり、というのはとてもユーモアがあるとは言えない。本作でもネットゲームを知らない身としては「BATTLE FIELD」なんかは苦痛なだけだ。

目玉のポッセカットも、タイプライターが
AKTION「Still Neva Enuff」を更に増幅させたような音で完全にラップをかき消してしまっていて期待外れ。その点DJ OASISが手掛けた「WARNING」は、派手な音の中でラップが動く余地を与えていて流石だと思った。他に面白かったのは、練った構成が面白い「城南ウォーカー」と、UZIバム恒例である、ラストに控えるポジティヴソングの「1つだけ」か。特に後者は、2ndの「Change」に続き、Mr.Beatsとの相性の良さを改めて示してくれた。

それでも、それらの曲も結局はラップの内容云々ではなく、トラックにより支えられた部分が大きい。前作から起用され、本作でも7曲を手掛けたLUCHAも相変わらず仰々しいドラムがド派手で良い働きをしていると思う。だからこそ、それにUZIのラップが乗ると一気に「今まで聴いたことのある感じの曲」にしかならないのは辛い。


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12:28 | UZI | comments(0) | -
DREAM COMES TRUE / C.T


1.ZERO feat.DJ NISHIMIYA
2.You Let Know
3.〜SKIT〜
4.CASH TRAIN
5.Still My Life feat.MIKRIS,B.D.the Brobus
6.〜SKIT〜
7.RUN
8.Dive de Cuts!
9.LA.LA.LA.Weekend

★★★★★★☆☆☆☆


BIGZAM率いるB.B.Incに所属し、HARLEMのサイドMCも務めるC.T。本作は、2枚のストリートミニアルバムを経ての1stアルバム。2008年10月29日発売。


いや、思ってたよりもずっと良かった。クリアな声質と小気味良いフロウを武器に名をあげてきたC.Tだが、これまでのソロ作をいざ聴いてみると、そのボキャブラリーの偏狭さが浮き彫りになってしまっていた。結果、同じような言葉を延々並べただけの曲が続いて、あまりにも味の無いアルバムに。

本作ではその点を反省してか、曲のテーマを明確に設定し、リリックにある程度メッセージを込めて歌っている。もちろん思慮に富んだ深いメッセージソングを聴くなら、リスナーにはC.Tよりもずっとベターなオプションが大量にある。しかし各曲に歌としてのアイデンティティを持たせたことで、これまでのラップにあった金太郎飴感は大きく減退した。まだ少々無味乾燥に過ぎる感はあるし、先述のようにリリックを深く聴いて噛みしめるほどその詞に耐久性があるわけでもない。しかし曲がりなりにもリリックの使いまわしが減ったことで、C.Tに求められる、シンプルにイケてるHIPHOPを、これまでのストリートアルバムよりずっと達成出来たと思う。ぶっちゃけメッセージの内容はさして重要じゃない。さして揺さぶられるものがあるわけでもないし。ただ、それよりもリリックが多様化したことにより、ラップのやっつけ感が無くなったのが大きい。

25分という自らのラップの特性を押さえた構成の中で矢継ぎ早に放たれる、DJ MISSIE、YAKKO、KEY-MAKER、SUIらによるヴァラエティ豊かなトラックが更にアルバムとして聴かせてくれる。その流れの中で満を持して始まる、ユルいノリの「
You Let Know」や「RUN」などのパーティーチューンは、これまでのストリートアルバムよりもずっと聴きたかったC.Tが聴けて満足。具体的に半生を振り返った「LA.LA.LA Weekend」なんてこれまでの作品じゃとても聴けなかっただろう。

上辺だけメッセージをつくろってみたラップは、中身なんてぶっちゃけ無いに等しいけれど、C.Tがソロ作品を作るにあたっての試みとしては良策であろう。そのラップスタイルを批判しようと思えばいくらでも出来るんだろうけれど、これまでの作品のXBSっぷりが悲しかった身としては、本作は純粋に嬉しかった。C.Tが好きな方には本作こそドンピシャじゃないでしょうか。HOOK構成力の向上も地味に評価ポイント。


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02:03 | C.T | comments(0) | -
Black de.ep / MONJU


1.Stepinblack
2.Blackdeep
3.U.N.K.U.T.
4.Udekiki
5.Whats up Mr.Manhole
6.Interrude
7.Open the Gate
8.Grow up
9.Blackout


★★★★★★★★☆☆


ISSUGI、仙人掌、Mr.PUGの3MC(+ほぼ準メンバーと言って良い、トラックメイカーの16FLIP)でMONJU。本作は彼らの2ndミニアルバム。2008年5月10日発売。

三者三様のアプローチで、東京の街が視覚的に描写されていくが、MONJUの場合、例えばそこにMSCのような地元への愛着はそれほど感じられない。"目まぐるしいほどの街の景色に 今夜もオレとオレの影の二人"(「Blackdeep
」)と語り、居場所の無い人間のために「Open the Gate」するMONJUの音楽は、街から爪弾きにされた人間に同調し、救済するレフジー・ミュージックとしての色彩が強いように感じた。

最大公約数的な視点での曲作りなんてしていない。しかし、そんな都会の暗闇でぼんやりと生きる不特定個人に向けられた、微妙な普遍性を持つリリックが、その切り取り方の巧さと相まって本作をより黒く染める。16FLIPのラグドな音と同じか、それ以上に、だ。

ラッパーが3人集まってはいるが、個性豊かなマイクリレーを楽しめる、といった類の作品ではない。派手な色合いは微塵も含まれていない。爆音よりはドラムが一番綺麗に響く程度の音で、みんなより一人で、昼よりは夜で、静寂よりは喧噪の中で。自身を孤立化させるほど心を浸食してくれる、良質なHIPHOPだ。


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16:55 | MONJU | comments(2) | -
I Can Fly / 晋平太


1.I CAN FLY pro.ZIPSIES 
2.DANCING EAGLE pro.ZIPSIES 
3.I WANNA BE A MEN pro.ZIPSIES 
4.人生を1枚の写真にするから君に写って欲しい pro.ZIPSIES 
5.ターニングポイント pro.ZIPSIES 
6.ON YOUR MARK pro. ZIPSIES 
7 I SAY HELLO pro. DJ YUSHI


★★★★☆☆☆☆☆☆


フリースタイル黎明期に、B-BOY PARKなど数々のバトルで名を上げた晋平太のミニアルバム。2009年12月16日発売。

韻の踏み方にしてもフロウにしても、基本を押さえたオーソドックスなスタイルで高次元にまとまったスキルを持っているのに、なぜかそこまでアーティストとしての魅力を感じなかった晋平太。そのためソロ作品には手を出していなかったが、DJ CELORYの2ndアルバム収録の「STREET DREAMS 2
」での仕事がやたらにカッコ良かったので本作を手に取ってみることに。

そして本作に限った感想としては、無用なナルシズムが全てを台無しにしている印象だ。「I CAN FLY
」などに溢れる、ラッパーとしての自分のあり方に不安を感じつつも決意を固めて見せるその姿勢は熱いのだけれど、物語の作り方が下手。

他のソロ作でどうなっているのかは知らないけれど、本作での晋平太は、全ての曲で僕と君、二人の対話関係を築いている。それが仲間との物語であっても、ラブソングであっても、だ。それはいいのだけれど、そこで吐かれる言葉は平易で直接的ながらも、男が聴くとちょっとアレなナルシズムに過ぎていて、それがこういう僕と君の対話関係でこちらに語りかけられるもんだから、無意味にドラマ性を帯びたつまらない告白劇をこちらに投げ掛けられているようで、辛い。中途半端に個人次元化された曲の作り方が、完全に逆効果。単純に言葉選びが下手な部分もあるのだろう、「人生を1枚の写真にするから君に写って欲しい
」は、タイトルもHOOKも、あからさまに狙いすぎで外している。

ZIPSIESによる情緒豊かに寄り添ってくるトラックも、晋平太のスキル自体も決して悪くは無いのに、ラップのアウトプット方法が極端に悪いため、ソロ作品としては聴くに堪えない出来。客演仕事では良い仕事もするのに、ソロ作品でズッコケまくりな理由がわかった気がする。他人のフィールドで、曲の作り方を決められた上でラップを後乗せするとき(=つまり曲設定は外部に任せているとき)は、その決して低くないラップスキルが存分に腕を振るうのだろう。ソロマイカーとしてやっている以上、それはこれからも活動を続けていく上で致命的ではあるのだけれど。


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01:43 | 晋平太 | comments(2) | -
13 Shit / 呂布カルマ


1.消エ失セロ 
2.オハヨー 
3.カウパー feat.RANSEL 
4.格言か苦言 
5.Midnight hero feat.ZOO from Psychedelic Orchestra 
6.禁じられた喜び 
7.Skit ~Not Guilty~ 
8.Dirty yellow 
9.気の利いた言葉が見つからない 
10.HANNIBAL 
11.なんのこっちゃねん 
12.犯り狂り上手 feat.K.Lee from BB9 
13.真っ直ぐ進め
 

★★★★★★★★☆☆


ダメレコの月間ラップへの参加で一気に名を上げた名古屋のソロマイカー・呂布カルマの1stアルバム。2009年1月7日発売。

純ジャパニーズヒップホップ育ちといった感じの手堅くオーソドックスなフロウとライミング。その裏に「
消エ失セロ」始めHIPHOPに対する至上主義的な愛が垣間見えるラッパーが、呂布カルマだ。ただし現代アングラらしく、そのラップスタイルはHIPHOPであること自体に満足するのではなく、HIPHOPという表現手段を通して自らの思いを、熱く、確実に伝えることを目的としたものである。それ故にこの1stアルバムは、それらしい彼の様々な事象に対する価値観が曲単位で語られる。「伝えたいことがある」ラップだからこその強度を備え、初のアルバムらしい、荒削りで直接的ながらも、彼と言う人間を、スピーカーを通して伝わるその言葉の熱量で窺い知れる作品だ。

侍やイド五月雨といった、恐らくは身内のプロデューサーで固めたトラック群は、一貫してシンプルかつストイック。アングラ作品の悲劇か、ボトムが極端に弱いのが残念だったりするのだけれど、それでもこれらのトラックメイカーと呂布カルマのラップが交わることにより目指している、実直なHIPHOP像の姿はしっかり見えるため、さして評価の妨げにはならない。そんなHIPHOPの汚れなき姿を追い求める呂布カルマにとってはワナビーでしかない輩をファストラッピンで切り捨てていく「
なんのこっちゃねん」の言葉捌きは頼もしい限りだ。Psychedelic OrchestraのZOOと暗然とした雰囲気の中回す「Midnight hero」、テンポの良いマイクパスも捌けることを示して見せた、フリー音源も話題になったK.Leeとの「犯り狂り上手」など、客演との絡みも抜群に上手く、自分の舞台しか演じられない狭量なラッパーでないことを証明してくれた。特に前者のアングラチックな魅力は、このアルバムを買って良かったという思いを確実なものにしてくれた。

さして新鮮味のあるHIPHOPをしているわけではない。しかし地下世界で自分のイズムを磨きに磨いて吐き出したこのアルバムは、こんなに使い古されたストイックなHIPHOPスタイルであるのに、これが呂布カルマによって作られたこという点ででその価値が再構築された。何の目新しさもないけれど、呂布カルマがこれをやってくれて良かった。真面目にガンガン言霊を吐く一方で、下ネタを遠慮なくブリブリ捻り出す下世話さも○。
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00:24 | 呂布カルマ | comments(2) | -
DUCK's MARKET / Romancrew


1.First Song 
2.Dream 
3.スープパスタ feat.KREVA 
4.F.R.E.E.D.O.M 
5.We Gamblin’ feat.CHIEF ROKKA 
6.Sha-Na Means… 
7.ロマンティック is Dead 
8.ロマンより愛をこめて feat.コヤマシュウ 
9.Next Movement 
10.Bush Running 
11.エレベーターアクション feat.THE FLEX UNITE 
12.Love Comes & Goes 
13.虹の交差点


★★★★★★☆☆☆☆

ロマンクルーのメジャー2ndアルバム。2008年6月11日発売。

個人的に大のお気に入りだった前作「
THE BEGINNING」に比べると、本作はあからさまなブラックミュージックの本流からは離れ、「黒さ」という意味では大きく減退。現代人的な、結論を回避するリリックのナイーヴさを補強するかのように音が感情的になり、結果高音の鳴りが主張し過ぎな気もする。それぞれの音の棲み分けが上手く出来ていて、それなりの環境で聴けば凄くサウンドが立体的に聴こえてくるのは前作と変わらないが、高音だけシャンシャンと鳴って耳が痛いんですよね。出鼻の「First Song」は特に疲れる。

中盤の落ち着き方に音の面では救われるが、静まった音に代わって、今度は浮き出てきたリリックが相変わらず「愛」を取り囲むテーマをいつもの調子で、曖昧模糊に語るばかりで、正直「またそれか」の感が強くなる。

オシャレで甘っちょろい部分を音の部分でも、言葉の部分でも取り払ってみて、それでもやっぱり核の部分に自らの環境への愛が残った「
Love Comes & Goes」の和気あいあいとした雰囲気は大好きだ。要所要所に入る多幸感溢れる柔らかなオルガンが良い。本作の「Sir Dick」にあたる「Bush Running」の渋いベースとエロい絡みも、やはり他の曲とは違う薄暗い光り方をしていて魅力的だ。でも、やっぱり全体としては多くの曲で変えなくて良い音が変わり、新たな側面を見せて欲しい言葉が変わらず、何ともスッキリしない印象というのが本音ではある。やってることのレベルは文句なく高いのに、掛け違い感が強くてモヤモヤするなぁ。


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00:11 | Romancrew | comments(0) | -

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