RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
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RR大辞典 / RAGING RACING


1.R.R.SHIT / RAGING RACING
2.チャラス1番館 / HIRO, YO-SUKE
3.柔 / E.C.ZUTCHEE, HIRO
4.On the Palette / BEARD
5.男の浪漫 / BEARD, E.C.ZUTCHEE
6.ぼーやのぼやきぼや騒ぎ / DICE, E.C.ZUTCHEE feat. LEWD
7.珍道中 / スゴROCKファイター
8.興奮剤 / RAGING RACING
9.準備体操第3 / E.C.ZUTCHEE
10.すごろく / スゴROCKファイター
11.固定観念 / E.C.ZUTCHEE, YO-SUKE, BEARD
12.原点回帰の進化 / RAGING RACING
13.折右 / E.C.ZUTCHEE, YO-SUKE
14.言語飛脚便未確認 / YO-SUKE
15.大海原 / YO-SUKE, BEARD, HIRO
16.真暗魔王 / YO-SUKE, DICE, HIRO
17.残念なお知らせ / YO-SUKE, E.C.ZUTCHEE feat. HIDA, ERONE (韻踏合組合)
18.ODORU★TANGO / RAGING RACING
19.原点回帰の進化 NAPEY Remix / RAGING RACING

★★★★★★★☆☆☆

2002年〜2003年のわずか一年ほどの間、大阪を中心に活動したRAGING RACINGは、YO-SUKE,E.C.ZUTHCEE,BEARD,HIRO,DICEの5MCにGON,SABを加えた7人組。本作は彼らが唯一発表したフルアルバム。2003年12月17日発売。

関西の代表的な大型クルーとしては、同年に2ndアルバム「THE MEGA CITY FIVE」を発表したDOBERMAN INC.や、同じく「ジャンガル
」を発表した韻踏合組合などが挙げられる。しかし、RGING RACINGには、常にアメリカを見据えたDOBERMAN INC.や、「ライミング」という技術自体をアイデンティティに昇華させた韻踏合組合のように、クルーとしてHIPHOPに対し、確固たる姿勢をもっているわけではない。強いて言うなら漠然とした「関西人らしさ」そのものが、そのまま彼らの色になっている。レゲエのフレイヴァもほんのり匂わせつつ、関西人特有のイントネーションで親しみやすく語られる背伸びしないラップ。これは、LARGE PROPHITSやDESPERADO、BAKA de GUESS?(あるいは脱線3も)から、今のCOE-LA-CANTHやZIOPSまで脈々と受け継がれてきたものだ。そしてそうしたラップの語り口そのものにこそ魅力が詰まっているため、お世辞にも洗練されたとは言えないスキルで、キャラ立ち優先で好き放題に荒々しくマイクを回していくRAGING RACINGは、それだけに関西臭くてより魅力的だ。

DJ NAPEY,ATTI,Mr.FUKUSANにより提供されるトラックがまたラグドな装飾感が無いミニマルでチープなもので、この辺りも90'sサウンドとはまた違う、関西特有のロウでラフな質感を纏っている。曲単位ではやはり、「
RR SHIT」や「原点回帰の進化」などのクルー総出での曲の勢いは聴いていて気持ち良い。また、クルーを先導して大立ち回りするYO-SUKEとHIROのラップはメンバーの中でも一歩抜きんでていて、低音のYO-SUKEと高音のHIROのコントラストによって曲の深みが増したところも多い。特に「残念なお知らせ」で最後に一気に食いにかかるERONEにも負けなかったのは素晴らしい。HIROの "己に振り返っては寝てばっか 何練ってるって葉っぱ" はパンチライン。

関西らしいまとまりのないガヤガヤ感が素敵なクルーだったが、それだけに解散という結果に繋がったのだろうか。本作の出来が良いだけに残念だ。RAGING RACINGとしての彼らの声が聴ける全国的な音源は、現状ではコンピアルバム「
Home Brewer"s Vol.2」やDJ NAPEY「ILLFINGER」くらいしかない。BEARDがソロで活動したり、YO-SUKEとHIROが解散と同時にBOMGROWを結成したりしてはいるが、もっともっとあのまとまりのないマイクリレーが聴きたかったなぁ。
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100% RAP / 鎮座DOPENESS



1.ごあいさつ 
2.オラハラッパー  
3.HIP HOP IS... 
4.PO (pt.2) 
5.朝起きて君は…
6.ドンスタ
7.乾杯 
8.もう一杯 
9.脳天気野郎 
10.HOTEL FUCKIN’ CITY TOKYO 
11.OS 
12.MOGU MOGU 
13.チクタク 

★★★★★★☆☆☆☆


KOCHITORA HAGRETIC MC'Sの一員でもあり、フリースタイル巧者としても知られる鎮座DOPENESSの1stソロアルバム。2009年9月16日発売。

稀有なフロウを持つ鎮座DOPENESSのラップを引き立てることに専念した13人のトラックメイカーが、それぞれの持ち味を押し出した音を提供。必然的に、その色彩豊かな音世界の上でグニョグニョと形を変える鎮座のラップが、いかに変化し、またいかに変化しないかを聴いて楽しむ作品となる。楽曲への参加歴もあるケツメイシとルーツを同じくしてラガ風味の味のある歌い声も存分に交えたラップが、ダブステップ、オーセンティックビート、裏打ちなどの上でどう踊り狂うのか。これまでの鎮座のラップに魅せられたリスナーが、トラックメイカーのクレジットを見てこのアルバムに馳せる思いはおよそそういったものであろう。

事実、完全に歌いあげた「
朝起きて君は…」でもその「ラップ」の魅力が失われていないのは驚異だ。「純HIPHOP的」であることを捨ててオリジナリティを突き詰めることによって、逆に「純HIPHOP的」なオリジナリズムを手に入れる、スキルの旅を360度済ませたラッパーだけが手に入れられる魅力だと思う。このあたりは、「HIPHOP的アティチュード」を採ることが、ラッパーを名乗るにあたって最初の義務手続きとなっているウエッサイ系のHIPHOPでは生まれ得ないものだろう。HIPHOPであることにこだわらないからこそHIPHOP的。DJ YAS製の、その名も「HIPHOP IS…」すら悠々と乗りこなせるあたり、そこらのラップスタイルとしての歌フロウとは違い、正にHIPHOPスキルを磨きに磨いてきたからこそ持ちえた能力だろう。

ただそうした日本のHIPHOPにおける怪奇生物みたいな能力を持て余し、ソロ1作目としてやりたいこと全てを欲張った結果、作中のまとまりはお世辞にもあるとは言えない。新たな境地のつまみ食い程度で済ませてしまっている楽曲が散見されるのも残念であり、諸手を挙げて「大傑作!!」と絶賛出来る作品ではない。

それでも、「MOGU MOGU
」のバカげたクリエイティヴィティ(PV含む)などで証明される通り、そのポテンシャルは近年のラッパーの中でもかなり高いものがあるのは間違いない。遊び心があるのはこれからのためにも大いに良いことだけれど、次回作では才能と音楽的欲求に「作品製作」が振り回されることのないようにしてほしい。まぁ、本作でのこの欲求丸出し感があるからこそ、それだけの期待を持てるんだけれど。

PV-MOGU MOGU
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22:41 | 鎮座DOPENESS | comments(0) | -
SPICY CHICKEN / KYN


1.INTRO feat.PITC produced by KYN
2.RAP GAME / produced by DJ CHANG ONE
3.THA LIFE / produced by DJ CHANG ONE
4.R U READY? / produced by DJ CHANG ONE
5.WAX-N-KYN(PART 1) feat.WAX produced by KYN
6.BRING or RUST / produced by KYN
7.SPICY CHICKEN / produced by KYN
8.サイレントキラー / produced by KYN scratched by DJ CHANG ONE
9.THA WALK / produced by KYN
10.SELL OUT / produced by KYN
11.ピエロ feat.NRIKIYO produced by KYN
12.UNFIELD feat.あるま produced by KYN
13.STAY BUCK / produced by KYN
14.我が闘争/ /produced&scratched by DJ CHANG ONE
15.THE ENDRACE / produced&scratched by DJ CHANG ONE


★★★★★☆☆☆☆☆

SD JUNKSTAのメンバー・KYNの1stフルアルバム。2009年10月21日発売。

"何も言わない 何かが出来るまでは 口つぐんだままのサイレントキラー"(「
サイレントキラー」)と語るKYNの、全国流通では初となるフルアルバムである本作は、その実直な姿勢がよく表れた作品だ。ビートからの一定の自由度を確保しつつもファンダメンタルを重視したフロウも、装飾を極限まで削ってボトムで語る10曲のセルフプロデューストラックも、それを後押しする。

そのため平坦で一徹な空気で続いていく前半部分は正直退屈な部分が多い。味のあるラップと音の組み合わせではあるのだが、その手持ちの組み合わせ方が数パターンのオプションしかなく、「実直であるがゆえに地味」を地で行ってしまっている。その中に溢れる、SD JUNKSTAメンバーらしいせっかくの匍匐前進思考の強い主張も抑揚のない流れに埋もれがち。

どちらかと言えば客演を交えて、流れを明確に締めにかかる後半の方がラップ、トラック共に光の当たり方が変わって、相対的に新鮮ではある。特に、「
ピエロ」でのっけから挑発しにかかるNORIKIYOのリリックは流石。

平坦な土臭さの中から耳を真黒にして言葉の端々を掘り出してみれば、その一徹な姿勢により魅力を感じることも可能ではある。がしかし、それは音と言葉を分離して初めて可能になる作業であるという点で、最早音楽の楽しみ方ではなくなる。要するに、伝えたい固い意志があればこそ、本作では言葉・トラック共に、もっと色んな寄り道をするのもありだったんじゃないかと。しかし、15曲45分でコンパクトに纏められた本作は、アーティストがストイシズムを貫いたときに波及効果として出てくる聴き辛さをほとんどカットすることに成功している。これは次回作に向けての、一つの糧となるんじゃないだろうかと勝手に思ってます。


PV-WAX-n-KYN feat.WAX
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10:27 | KYN | comments(4) | -
MONTIEN III / MONTIEN


1.Intro
2.STRESS SESSION 
3.Safari 
4.DO IT feat.CHIEF LOW,XBS
5.GET AWAY SCAT 
6.ゆく河の流れ
7.SKIMMING feat.ASIAN STAR
8.MOON ERECTION 
9.虜ロール 2004 
10.Sunset Strip 
11.G.A.H.2006
12.Outro 

★★★★☆☆☆☆☆☆


SUIKEN、MACKA-CHIN、TINAによるMONTIENの1stアルバム。前2作は6曲ずつのミニアルバムだったわけで、ようやく12曲入りと、それなりのヴォリュームで届いた本作も、インスト5曲、前2作収録曲のヴァージョン違いが2曲に、既発曲「虜ロール 2004
」を含めて演奏時間は38分。これで3000円って素敵すぎる。結局やる気があるのか無いのかわからないユニットだが、ともかくのんびり活動を続けて、本作は2006年3月15日発売。

これまでの作品もそうだったように、このユニットの特徴であるエスニックなスタンスは、全体のトラックプロデュースも積極的に先導したTinaに依るところが大きい。そのためどちらかと言えば、Tinaによる音の実験場における一つのオプションがSUIKENとMACKA-CHINのラップといった趣。

そんなわけで、NITROから辿り着いたリスナーの欲求にフォーカスしたのはDJ WATARAIプロデュースで、Tinaはほとんど参加していないマイクリレー・「
DO IT」くらいのもの。逆にHIPHOP的な視点で聴くことを辞めると、そうしたエスニック色の強い曲において、ラップの必要性が今一つ感じられない。特にビートとの折り合いを付けないSUIKENの詰め込みラッピンは、浮いて聴こえてくる。

結局、冗長だった前作の「
Get Away」を2分に満たないSkitに変更し、原曲に入っていたHIPHOPリスナー迎合のためのラップを完全に排除した「GET AWAY SCAT」が一番面白くなったのが何とも皮肉。これまで一貫して狙ってきたスタイルは非常に面白いと思うのだけれど、全作品を通して、ラップとエスニックな実験性の両立が最後までほとんど成功しなかったのが、本作でより明確になったと思う。ある種の不幸というか、「虜ロール」を初っ端で生み出せてしまったことが、逆に僅かな希望を灯す結果となって、ここまでの惰性延命的な活動につながった気も。


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15:43 | MONTIEN | comments(0) | -
C.O.L.D. / ICE DYNASTY


1.ICE FLAG Pro. LUCHA
2.COLD BOYS Pro. JIGG (Gunsmith Production)
3.FRESH Pro. SKY BEATZ
4.RUNNIN' MY CITY Pro. 318 (Gunsmith Production)
5.So Many Memories Pro. BUZZER BEATS
6.4 MY HU$TLERZ Pro. LIL'OGI
7.URBAN SUBURBAN pt.2 Pro. D.FOCIS
8.想像できるか? Pro. JASHWON (B.C.D.M)
9.100 UNKWONS Pro. JASHWON (B.C.D.M)
10.ENEMY 5 Pro. BACH LOGIC
11.Round & Round Pro. 318 (Gunsmith Production)
12.REMEMBER... feat. LEO Pro. UTA (Tiny Voice Production)
13.OVER THE WALL Pro. UTA (Tiny Voice Production)

★★★★★☆☆☆☆☆


東京を拠点に活動するICE DYNASTYは、G.O、OHLI-DAY、RAW-T、BAKEY、GEN-ONEの5MCにDJ EIGHTを加えた6人組。本作は前作まで参加していたKNZが脱退して以降で初めての作品となる、2ndフルアルバム。2010年1月20日発売。

さしてマイクリレーの妙を味わわせてくれることない、凡庸なラップがのそのそと立ち替わり聴こえてくるだけの作品。大局的な構成としては、BPM、ビートの配置に対する反応として、(各々の工夫はそれなりに感じられるが)5人のラップ全てが似たようなフロウ操作を行い、結果ひたすらビートに従順で平坦なラップが1時間続くもの。別にマイクとマイクが入れ替わるその瞬間に風速が変わるわけでもなく、そもそも何で5人で回してるんだろうという根本的な部分への疑問さえ生まれてしまう。特に「Jackin' 4 Beats Remix」で大活躍していたRAW-Tには期待していただけに残念。

ラップそのものに力があるのは、パーソナルなテーマに根差したが故にそれぞれのリリックに大きく差が出来たことが功を奏した「URBUN SUBURBUN pt.2
」や「想像できるか?」あたりだが、裏を返せばこれを勢い倍掛けが醍醐味のマイクリレーという形で行う必要は何も無い。これまでの大所帯クルーにあまり無かった、このオムニバス的な心情の見せ方に新たなマイクリレーものの可能性があると言えばあるのかもしれないけれど、それは基礎的なラップスキルが向上した段階でようやく現実可能性を帯びるものだろう。いずれにせよラップが、下手なんじゃなくて貧弱。

そんなわけで、ラップよりもLUCHA、JASHWON、D.FOCIS、318、BACH LOGICなど、前衛音楽としてのHIPHOPを貪欲に求めるトラックメイカー陣のトラックに重点的に耳を傾けるような聴き方になるのは必然。

そうして聴くと新進気鋭のメンバーが集まっただけあって、そのレベルはかなり高く、新鮮な音が次々に飛び込んでくる。特に氷をかち割ったかの如き寒煙迷離な「
FRESH」を手掛けたSKY BEATZや、冷却都会仕様のマイアミベース風(うまく言えないけどほんとにそんな感じ!!)の「ENEMY 5」の発想が別格なBACH LOGICは流石と言うしかない。これらの音を違う人に渡せばしかるべき完成度になっただろうに、勿体無い。


PV-FRESH
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11:16 | ICE DYNASTY | comments(0) | -
045 RENAISSANCE / DJ TOMO


1.INTRO 
2.G.O.D -GAME OF DEATH- feat.B.D. THE BROBUS 
3.KEEP ON ROLLIN’ feat.XBS & JUNEAR 
4.TIME TO CRUISE feat.BAZOO 
5.SUNSET TOWN feat.F.U.T.O. 
6.MECCA feat.BIG-Z 
7.SKIT feat.MASTA SIMON FROM MIGHTY CROWN 
8.45 MAGNUM feat.YOYO-C 
9.CRYIN’ feat.宏実 
10.TOUCH feat.VLIDGE 
11.WELCOME TO YOKOHAMA CITY feat.YUTAKA HANDA
 


★★★★★☆☆☆☆☆

元OZROSAURUS(という表記でいいんだよね??)であるDJ TOMOの1stソロアルバム。2008年9月24日発売。

何かとDJ PMXの陰に隠れがちな彼だが、DJ PMXがいわゆるG-FUNKに多大な影響を受けたサウンドを常に生産するのに比べると、DJ TOMOの音はウエッサイらしい心地良さを残しながらも、もっと自由だ。それだけにラッパ我リヤ「
和ILL道スタイル REMIX」やOZROSAURUS「Hey,Girl DJ TOMO REMIX」など、ガッチリハマったときの彼の音は、ウエッサイの文脈から離れてもなお衰えない魅力を持つ。

ただロックテイストも多分に含ませた彼のサウンドを、客演陣がウエッサイ的なアプローチで乗りこなそうとして失敗しているきらいが。実際横浜=ウエッサイの単純図式を外しにかかったというDJ TOMOの音(この狙いは聴き手にも十分伝わる)に対して、その目論見を退行させるようなラップばかりなのはどうなんだろう。やたらメロウ路線を採った結果ズッこけたXBSや、男臭さなんて完全に消え失せ、そこにはただの舌の回らないラップが残るだけだったF.U.T.Oの楽曲は悲惨なことになっている。初ソロで挑んだBAZOOも、ウエッサイな色調のみを意識しすぎたあまり、いなたさが剥がれおち普通の兄ちゃんの姿があるだけだ。

ただ、多くのラッパーがそういう細かなスキルのやり取りでの失敗をする一方で、そんなもん吹っ飛ばして、BIG-Zがいつも通りにサビでは"ゆっれうっごっきっな〜♪" "おったっのっしっみっは これから〜♪"と歌って我流を貫く「
MECCA」に関してはもう逆に清々しい。典型的なウエッサイ式を貫いた自らの1stアルバム「WEST FAR EAST SIDE」と同じ方法で、DJ TOMOが「ステレオタイプなウエッサイ図式」を崩しにかかった本作に攻め入る器量は、なんというか逆に褒め称えるべきだと思う。BIG-Z大好きですよ、もう。

後半のシンガーサイドも凡百な出来で残念で、結局ウエッサイ図式のルネッサンスを起こせたのは伴田裕のサックスを交えてアーバンジャズっぽさを醸すインスト「
WELCOME TO YOKOHAMA CITY」と、ビンビンに張ったギターの上でB.D.が尖鋭的に吠える「G.O.D.」くらいか。でも後者の出来は本作では図抜けて良かったので、これからも語り部との相性次第では今回の狙いをより高次で達成出来るんじゃないだろうか。そのときもまたBIG-Zみたいな全速力で逆走する飛び道具が仕込んであれば、なお嬉しいです。
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21:40 | DJ TOMO | comments(0) | -
Family / KOHEI JAPAN


1.Family < Album Ver. >
2.Have a nice day
3.ビター & スウィート < Remix >
4.ココニイル
5.I am the man
6.Ms. Money
7.今がイチバン
8.Skit・公園
9.スロウ
10.レンタカー
11.続・男はまぁまぁつらいよ < オジサンの小言 >
12.Skit・家族
13.子守唄
14.Blood, Sweat & No Tears
< Bonus Track >
15.ディリリリ・ダラララ DJ SANCON feat. KOHEI JAPAN
16.もしも息子が出来たなら・・・ DJ MITSU THE BEATS feat. KOHEI JAPAN

★★★★★★★☆☆☆


Mellow YellowのMC・KOHEI JAPANによる3rdアルバム。2007年6月20日発売。

お金との付き合いに悩んだり、過去の恋愛をふと思い返したり。年を重ね、多感な時期の葛藤を乗り越えて、結婚して子供が出来て。順調に人生を進むことの出来た人の多くが通る過程であるが、その現状を描いた作品は、「リアル」を重視するはずのHIPHOPにはほとんど見当たらない。ベテランのアルバム中に申し訳程度に数曲入ってるのがせいぜいのところ。特に子供が出来てからの生活なんて、自らの「リアル」な生活を描く際には避けることの出来ないくらい大きなファクターだと思うんだけれど。

そんな中で、昔は「
夜の狩人」なんて作ってグヘヘとしちゃってたKOHEI JAPANが「家族」をテーマに届けてくれた本作は、とっても温かかった。家族とドタバタしている様を平易な言葉で描くその感情は、ほっこりした幸せに満ち満ちている。その一方で、ポロっと愚痴をこぼしちゃう「続・男はまぁまぁつらいよ」で一番フロウが奔っちゃってるのも人間臭くて良い。

KOHEI JAPANを祝福するかのように多幸感を煽るド派手なトラック(5曲手掛けたBuzzer Beatsの音がどんどんテンション上がっていくのも良い)に後押しされてポジティヴに現状を肯定して見せるKOHEI JAPANのラップには、正直聴いていて勇気付けられた。大局的なテーマとしては、やっぱり子を持つ全国の親御さんにどストライクな内容ではあるんだろう。でも僕のようなペーペーの若者にも"つまり過去 昔より今が一番 メチャ充実" "若え頃は大人になんかなりたかなえ、とか言ってた けど実際大人になると若え頃より楽しい、つうの知ってた?"(「
今がイチバン」)と言って未来に光を灯してくれる彼のラップは、こんなギラギラした音楽を聴いてとかく斜に構えがちな人間に確かに温もりを感じさせてくれる。

MUROプロデュースの「
Ms.Money」が曲としてはパッとしなかったのが残念ではあるけれど、俯瞰して聴くと素晴らしい作品。曲数を稼ぐために色んなテーマを分散させたアルバムとは違って、明確に伝えたいメッセージが集まって形を成したアルバムの強さを示してくれた。

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02:07 | KOHEI JAPAN | comments(0) | -
NAP TRAP! / DJ NAPEY


1.intro ~NAP TRAP~ 
2.アンチテーゼ feat. DABO & JAZZY BLAZE 
3.紳士淑女の皆様へ feat ERONE(韻踏合組合) 
4.I`d rather die than give U control feat. AGRI8 & K-ONE(LARGE PROHITS) 
5.stILL feat. ICE BAHN 
6.tragic LOVE feat. COPPU 
7.relations feat. DU-DUCK 
8.shelter feat. MC STATE 
9.KILLER killer ~abyss~ feat. HANABiS 
10.今宵のミラーボールのように TAK THE CODONA 
11.Le chat feat. ENDY (H.R.C) 
12.摩那街灯 feat. YOUNGI 
13.UNDERGROUND feat. RYUZO(R RATED RECORDS) 
14.泥中花 feat. 神門 
15.Don`t Mind GO MY WAY feat TRASH the JUN07

★★★★★★☆☆☆☆


神戸を拠点に活動を続けるDJ NAPEYの、オリジナルとしては3枚目となるアルバム。2010年1月20日発売。

さして新鮮味の無い音で新鮮味の無いHIPHOPマナーを律義に貫かれる前半は、正直少し退屈。メキシカンなギターとドラムンベース調のビートとの落差が面白い「stILL
」でFORKが元気だった印象しかない。

むしろベテランメインの前半よりも、COPPUの"届いてますか??"が延々リフレインする(恐らく)フィクションのラブソング「tragic LOVE
」でワンクッションおいて、各ラッパー達が一人でマイクを握って一気にパーソナルな方向に振り切る、後半からが本番だろう。このアルバムを聴くまで全く知らなかったラッパーもいて、ここでも楽曲の質にかなりバラつきがあるが、各人が1曲丸々使って詰めた秘めたる思いをこうして並べて聴けるのも、豪華絢爛なマイクリレーものを並べるのとは違う、DJアルバムならではのものかなとも思った。一定の幅を持たせながらも基本的にラフでネタ色の強いプロダクションで纏めたDJ NAPEYの手腕もあり、あちこちに喚き散らすそれぞれの主張も、その音によって上手く統一されている。

中でもリスナーを見据えて"クリアランスがうるせー時代にも抜け穴がある いたちごっこが手詰まりになったら発展が止まっちまうだろ?"と語るTAK THE CODONAは良かった。もっとアブストラクト然としたアーティストかと思っていたのだけれど、この曲でアラビアンビートに乗せて明確な主義主張を仕込んでくるラップは文句なく上手かった。

しかしここでの目玉は間違いなく神門の「泥中花
」だろう。「蓮の花」などの名曲を残しながらも行方がわからなくなってしまっている神戸薔薇尻に対し、神門が彼のスタイルを模して復帰を呼び掛けた曲で、神門が叫ぶ、神戸薔薇尻の詞を引用しながらのリリックが熱い。本当に今どうしてるんだろう。

この2曲以外の出来が良すぎて他の楽曲の印象が薄くなってしまうが、一定のクオリティを持つ作品ではあると思う。最後に魂を燃やし進む自分を、そして全てを肯定して我が道を行くことを誓う「Don't Mind GO MY WAY
」で締める構成も中々オツではある。

ところで元々のクレジットには、まさかのジサツが参加した楽曲の表記があったんだけれど、実際の完成品ではキレイサッパリ無くなってる。ボツった??

PS.この曲でようやく気になっていたCOPPUを聴けました。印象としては、素敵なフィメールラッパーというよりも素敵な女の子といった感じ。ラップという言葉の伝達手段以外には一切HIPHOPを、ラッパーであることを絡ませない、女の子視点での「どこにでもある」観を出す人は珍しい気がする。
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02:54 | DJ NAPEY | comments(3) | -
FORTUNE / S-WORD


1.TO DA NEXT EVO’
2.KROSS OVA’「斬」弐ノ太刀(Kenny Dope Remix)
3.裏R.P.G. feat.BROBUS
4.ANOTHER THE ANSWER
5.BRAIN SHOCK MAN
6.FORTUNE-half complete-

★★★★☆☆☆☆☆☆

NITRO MICROHONE UNDERGROUNDの一員・S-WORDが1stアルバム「
ONE PIECE」の半年後に発表したミニアルバム+DVD。2002年12月15日発売。

インストの鬼・Kenny Dopeが完全に打ち込みで味付けした「KROSS OVA'〈斬〉弐ノ太刀」や、同じく電子的に組み替えられた「ANOTHER THE ANSWER」のつまらなさは、どちらかというとリミキサーと、そもそもの人選の方に問題があるのでまだいい(Kenny Dopeの方は、サビのシンガーだけ残してインストにすると結構イケる気もする)。しかし、Dev Largeが粋なベースループで繋いだ「BRAIN SHOCK MAN」や、Lord Finnesseによる「FORTUNE」などの新曲でも、何の考えもなしにラップのみに華をもたせようとして食傷気味な「聴こえ」を重んじるS-WORDのラップの退屈さがどうしようもない。気合を入れたDev Largeとは逆に、投げやりなホーンだけが出しゃばった印象のありきたりな音を届けたLord Finnesseの手抜きぶりは逆に正解だっただろう。この頃のS-WORDじゃどんな音でも同じ調理方法しか出来ないのだから。ただしYoutubeでのグローバルな高評価ぶりを見るに、その「聴こえ」こそが、ワールドワイドに攻める際に最も手っ取り早い手段であったこともまた事実だったんだとは思うけれど。

曲としてはBROBUS3人の新鮮味でもった「
裏R.P.G.」のみが最低限の水準を保っており、豪華なクレジットや仕様とは真逆に中身はスッカラカンだ。リミックスが3曲、新曲がイントロ的な語りのみの「TO DA NEXT EVO'」を含めて3曲のミニアルバムに、PVを中心に収録した16分のDVDという組み合わせ。これで3360円という値段設定も、HIPHOPバブルという当時の背景を踏まえても何かの冗談としか思えない。


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STAY TRUE / O2


1.街道14 
2.きたない哲学者  feat.PRIMAL
3.神田リバサイ  feat.RUMI,MEGA-G
4.団地 Back In The Day  feat.ガッツakaケツバット
5.DAY DREAM 
6.Highway Star  feat.PRIMAL,SHINGO★西成,HIDADDY
7.火星呆景  feat.ECD
8.S田区T花 -Live Version-  feat.はなび
9.疾しさ 
10.宵闇  feat.メシアTHEフライ
11.知らない夜  feat.少佐
12.S田区T花  feat.はなび
13.天秤DREAM  feat.少佐,DOGMA,麻暴,PRIMAL,TAB001,GUINNESS,漢,NOR,SHINGO★西成
14.煙の行方  feat.惣一朗


★★★★★★★★☆☆


MSCのO2の1stソロアルバム。2009年11月4日発売。

同じライブラからの作品ということもあってか、サウンド面では2008年屈指の良作・JASWANNA「
BLACK BOX」にも通じるものがあると言って良い。しかしラップ面では、JUSWANNAがHIPHOP的なイデオロギーの上にアーバンな土着性をスモーキーなスパイスとして組み込んでいたのに対して、O2の本作では、ある種のゲットーイズムの延長線上にある下町イズムがその基礎を成し、HIPHOPがその鋳型の役割を果たす形を取っている。その点で両者のアプローチには大きな差異がある。(ついでに言えば、だから本作に自身のアルバム「FAST LINE」で同様の手段を取ったはなびが2曲参加しているのはある意味納得がいく。)

そんなスタイルを貫くO2のラップは、朴訥とした語り口の中に不意に仕込んでくる短文レベルでのパンチラインが魅力的。自らが育った団地を、ワナビーな輩を、東京に生きる個々の境遇を、断片的に切り取っては声高に叫ぶよりも、それを当然のこととして他の言葉に交えてフラットに吐き出す。感情を持ったトラックが多いのに対してラップが平面的に垂れ流され、その中に擬態した言葉の爆弾が潜んでは耳にこびりついていく。

このようなラップスタイルから、聴く前はもっと作中のテーマが抽象的なアルバムで、漠然とした言葉の羅列の中からこうしたボムを拾い上げるような聴き方になるのかなと思っていたが、いざ聴いてみれば思っていたよりもずっと具体的で、しっかりと足場の安定したラップアルバムに仕上がっていた。「闇金ウシジマくん」を下地にした「
神田リバサイ」みたいな筋道の通ったストーリーテリングものなんて、MSCのO2ではあまり聴けなかったと思う。この曲はRUMIが食い尽した感もあるが、原作ファンならそれぞれのモデルがすぐわかるので怖さは倍増。

この曲や、PRIMALとの「
汚い哲学者」、ECDとの「火星呆景」(ひどいタイトルだ)、SHINGO★西成とのリリカルパンチャー勝負のフィールドと化した「Highway Star」あたりを軸に、クオリティの高い楽曲が所狭しと並ぶ。前述したように、彼のラップスタイルから、ともすれば夢遊病的に言葉がただとっちらかるだけのアルバムになるのではという危惧もあったのだが、予想以上に自身のアイデンティティを胸に、芯の通った作品を届けてくれた。ポッセカット「天秤DREAM」もアルバムの色を損なわない程度に静かに華を出してそれなりの出来だし、値段ぶんの価値はある力作。
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