RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
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More Life / KEN THE 390


1.More life
2.真夏の夢
3.ミッドナイトデート feat.MAYA
4.ラップ!!feat.サイプレス上野
5.Big Pay Back
6.closs over feat.aticus
7.雨の日曜日 feat.将絢(ROMANCREW),MAYA
8.Free
9.虹
10.44
11.GOOD LIFE


★★★★★☆☆☆☆☆


フリースタイルで名を上げたKEN THE 390の3rdアルバム。ダメレコに身を置いての作品としては本作が最後になった。2007年11月10日発売。

作品を出すごとに、やたらに声をうわずらせてラップに変化を付けようとする一本調子のフロウで凝り固まっていった印象。聴いていてただただ疲れるラッパーになってしまった。各曲によってそれなりのテーマを設けているのに、そんなことを忘れさせてくれるくらい貧弱なセンスで紡がれるリリックも退屈だ。数少ない長所である滑舌の良さが、皮肉にもそのつまらない内容をバッチリ聴き取らせてくれる。こんなにダメダメなラッパーだったっけ??

特に底にHIPHOPクラシックを敷きつめて、ジャズとの融合を図ったトラックが素敵なFUNK入道作の「真夏の夢」は、KEN THE 390のやかましいラップが乗った瞬間に真夏の夢っぽさが跡形も無く消える、ある意味アーティストとして奇跡の所業だ。他にラップの引き出しといえば、ほんとに「囁いてるだけ」のウィスパーラップも一応ある。がしかし、もちろんそのスタイルチェンジだけでスキル自体が変わるわけもなく、相変わらずのつまらなさ。特徴的な声という意味では同じなのに、atiusがフルートとベースの間を自由自在に駆けていく一方で、KEN THE 390がずっと囁き一辺倒の「Cross Over」では、その実力差が浮き彫りに。

雨の日曜日」でも、物憂げなギターとの相性は完全に将絢が圧倒しているし、ソロ曲で聴けるのは、BPM速めのトラックによってそのウィスパーラップが新たな一面を引き出されている「Free」と、BEAT奉行とDJ大自然の合わせ技でKEN THE 390のテンションに上手く合わせたファンクチューン「Big Pay Back」くらいか。

Cross Over
」「雨の日曜日」「Free」「Good Life」と、手掛けた4曲全てがハイクオリティだったmattanやBEAT奉行、FUNK入道、ALI-KICK、カトウケイタと、この界隈ではダントツに高評価なトラックメイカーが集まっただけあって、トラックのレベルは本当に申し分ない。だからiTunesには大半の曲を入れたし、これからもたまに聴き返すことはあるだろう。でもそれは決して「KEN THE 390のラップアルバム」としてではない。本当に好青年だと思うしその人となりは素晴らしいけれど、それなりにキャリアを積んだラッパーの作品としては、ここまでつまらないアルバムもそうそうない。
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20:33 | KEN THE 390 | comments(0) | -
X.L EXPAND&ELEVATE / DJ MICK


1.Intro#V
2.OVER DRIVERZ feat.BOY-ROY,心眼,MC CLASH DAV,和尚
3.EXPAND&ELEVATE feat.COOL M.B.,MC CLASH DAV
4.Intro#T
5.UNDERGROUND REVOLUTION feat.心眼,SHINO,ZUN 2
6.MVP SOL MC'S feat.MC CLASH DAV,和尚,COOL M.B.

★★★★★★★☆☆☆

DJ世界大会Vestax-Turntablist Extra Vaganzaにて、ターンテーブリストの地位を確立させた人物として日本人初の栄誉賞を受賞したらしい(全然知らんかった…)DJ MICKの1stミニアルバム。2001年2月21日発売。

西日本の隠れた良作。まるでDa Beatminerzのような、低音攻撃重視のラフな音を届けるDJ MICKの音が凄く良い。自身が率いるアーティスト集団・MVPのメンバーを中心に参加させた各曲も、これと言って内容は無いわ、参加ラッパー陣よりもDJ MICKの音の方が数段力強くて強烈だわで、ラップに重点を置いてよくよく聴いてみれば、そこまで秀でた作品では無い。しかしそれすら音の力でゴリ押して、リスナーに思わず「カッコ良い」と言わせてしまうゴリッゴリなトラックの重たさが病みつき。音量を上げれば上げるほどその魅力が引き出される。このラップを埋もれさせるほどのへヴィな鳴りは、近年の作品には欠乏しがちなトラックの暴走感を引き出していて、オシャレなジャジートラックよりも汗垂れ流しのドロドロボトムに狂喜する類の人間(ex.僕)にはこの上ない栄養分。

この作品での共演をきっかけに、のちに「重ねる積み木
」で知られるClip Crhymerzを結成することになる心眼とBOY-ROY(後のJO-G)の、「OVER DRIVERZ」での頑張りも二次的な評価しかさせない、音の大闊歩っぷりがしつこいようだが本当に気持ち良い。訛りまくったシャウトが唯一トラックに負けない個性を放っていた和尚は面白かった。逆にバイリンガルスタイルのMC CLASH DAVは、最後までどんなラップがしたいのか理解出来ず。

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13:09 | DJ MICK | comments(0) | -
FAST LANE / はなび


1.決意
2.禁断の遊び feat.少佐,惣一郎
3.風景 feat.O2
4.SKIT
5.大祭 feat.G.O.
6.アイツの分も
7.ありがとう feat.BROON-K
8.SKIT
9.Down Town Blues feat.PONY,EI-ONE NOYA,JUNY
10.To My Men

★★★★★★☆☆☆☆


古くはEI-ONE,BB the KO,ペロスポーツ,ガスケンと結成した放源の一員としても活動し、ダメレコ加入後もKEN THE 390,EI-ONEとのりんご、EI-ONEとのユニットであるEI-ONE&はなびなどで活躍したはなびの2ndソロアルバム。2010年1月13日発売。

明らかに般若の影響を受けたそのラップは、話し言葉をそのまま音に乗せることで、より平易な言葉をもって熱く語りかけることを可能にしている。そのラップスタイルを前作「
タイマン」ではどちらかと言えば身内ノリを語るのに用いており、彼の関係者だけがグヘヘと笑えるような、ある意味全国発売するにはろくでもない気楽なスタンスを取っていた。それが「決意」で本人が語るように、本作を作るにあたって、これまでの作品リリースで何か成し遂げたと思っていた彼の伸びすぎた自信は完全に打ち砕かれた(それがなぜかは実際にお聴き下さい)。

その結果、このアルバムでの見せる、いつになく真剣な彼の表情が熱い。「
SKIT」での朗らかなフリースタイルや「大祭」のようなオーセンティックなパーティーチューンを織り交ぜつつも、彼の「下町」は、過去を重点的に、よりシビアに切り取られていく。その中には「仲間への感謝」なんていうHIPHOPではお決まりのテーマがそこかしこに溢れているのだが、その朴訥とした語り口の中に確かな思いが込められているのが伝わる。

盟友EI-ONEがラップでもトラックでもペシミスティックに染め上げる「
Down Town Blues」、なんとTSUKI Recordingsからダンボールマスターが音を届けた「風景」、BRON-Kが相変わらず歌でのセンスを見せ付ける「ありがとう」など、その向きの曲での飾らない魅力は中々のものだ。ぶっちゃけ特に図抜けた曲があるわけではない。しかし最後まで仲間に「ゴメンな、オレも必死でやってるんだ」と告げて明るく締める「To My Men」まで聴けば、楽曲の純粋なクオリティ以上に、彼の武骨で温かい人間性が魅力的に感じられる。

PV-決意
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02:10 | はなび | comments(0) | -
F.L.E.X. / FLEX UNITE


1.Intro
2.Guess Who's Back ?
3.Fly To Da Sky feat.4WD
4.Moment Of Truth
5.Brand New Day
6.Jive Talker
7.Wack MC feat.SATUSSY
8.L.A.Z.Y.
9.Money On My Brain
10.My Sunshine
11.Interlude
12.Dreams(remix)
13.同じ月を見ている
14.Tomorrow Is Another Day
15.Outro

★★★★★★☆☆☆☆


THE FLEX UNITEは勝、AZZROCKの2MCにバックDJであるDJ KAZGOODを加えた3人組。大阪を中心に活動を続ける。KREVAの「
くレーベルコンピ 其の伍」でフックアップされたことも記憶に新しい。本作は2007年7月に発表したEP「THE FLEX UNITE」、同年12月末に発表したシングル「The B」を経ての1stフルアルバムである。2010年1月20日発売。

全方向的に鍛え上げられた2MCのラップは、突き抜けた個性こそ無いものの、苦労を重ねた努力の跡が見え隠れする。非常にタイトで堅実なラップ。そして本作では「グループとしてのアルバム」を意識し、我を押し出さずに互いに普遍的なトピックでバランスを保ち、聴こえの良さを重視した。

しかし、それらの要素は「個性的ではないが巧い」互いのラップの活動範囲を更に狭め、より顔の見えないラップアルバムに落とし込んでしまったのではないだろうか。出鼻の「
Guess Who's Back?」こそ3年間溜めた勢いをある程度引き出すことに成功しているが、その後が続かない。6曲を手掛けたRYOTAや、B.L.のメインストリーム意識の華やかなトラックが、前述した要素に更に既視感を加える。リリックも聴き慣れた当たり障りの無い言葉だけが並ぶ結果となってしまい、せっかくのフルアルバムなのに、曲が進むごとに「いつか、何かで聴いたことがある感じ」という思いだけが強くなっていく。一つ抜けた完成度を誇るのが、結局は3年前のシングルからの収録であって新曲ではない、個人的な思いがラップを走らせた「同じ月を見ている」だったというのは何とも皮肉だ。

どちらかと言えばEVISBEATS製のピーヒャラトラックに乗る「
Jive Talker」やダブステップの「Wack MC」のような、アルバム中では変化球となっている曲の方が聴きどころはある。特に前者はライムとビートの鳴りの組み合わせが他の曲とは全く異なっていて、彼らの勤勉なスキルに新たな可能性を見た。本作は正直期待していたのとは程遠い出来だったが、既に土台は十分整っているラップなだけに、アプローチを変えれば一気に魅力的になるはず。
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09:59 | FLEX UNITE | comments(2) | -
RATID for WAMA

※この記事は新たにレビュー記事などの更新があった場合でもトップに置いてあります。

洋楽専門版

RATID for WAMA -Realize A Thing In The Depths for Western × African Music × American-

リンクはこちら
http://inthedepthswm.blog13.fc2.com/

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11:59 | 雑談 | comments(0) | -
Slow Burning / GDX



1.Slow Burning feat. HIRO the RISING SUN, MOTOAKI 
2.King -N- Queen feat. YOKO (Still Low Profile), YAS (BLACK BELT) 
3.密告者 ~Informer~ feat. PHOBIA OF THUG, RICHEE (GHETTO INC.) 
4.小菅ヒルズ feat. 拳太 (J-GREN), HULK 
5.After Summer feat. Kayzabro (DS455) , JiN 
6.Holiday feat. AK-69, HOKT 
7.Be With U feat. BIG RON 
8.True Colors~チンピラ~feat. 565(妄走族), LA BONO 
9.4 Tha Hood feat. ZEEBRA 
10.Outlow Connection feat. MACCHO (OZROSAURUS) ,II-J,D.O,U-PAC (G-PRIDE) ,GIPPER,DESTINO,HYENA,NITTY,JASHWON,PIT GOb,1-KYU,S55,Tyson,MAJr,朱武,MC仁義,SIVA,Lil Bo,RYO(LGY),M.O.T.,EL-RAY,Sir-Vibe

★★★★★★☆☆☆☆


GDX(GANGSTA DX)は日本のHIPHOP黎明期より活動を続けるラッパー。LAのゲットーに3年間住み、当時はギャングの一員となって活動していた。名コンピレーションアルバム・「
The Best Of Japanese Hiphop」シリーズにも幾つか曲を提供している。本作はそんな彼の、ソロ名義では3rdアルバムとなる作品。2006年10月4日発売。

ナルシズム溢れる割にリリックもフロウも不器用なGDXのラップ自体はハッキリ言って魅力に乏しく、まともな客演無しの曲は抑揚の付かないラップが延々流れるだけで凄く退屈。リリックに集中したところでことさら何か言ってるわけでもなく、中でもDJ RYUUKI作のラブソング「
Be With U」は早送り必須だ。HOOKが間延びHOOKメイカーのBIG RONというのがまた辛い。獄中生活を綴った「小菅ヒルズ」なんかにはリリックの工夫も見られるが、その結果ラップが更にベタ足でズルズルいってて、5分の時間がとてつもなく長く感じる。

それよりも特に考えずに低音シンセバキバキなアメリカントラックにチンピラフレイヴァを乗せた曲の方が安定した出来だ。そのぶんいかにもこの手のHIPHOPスタイルに留まっていて凄く没個性的ではあるのだけれど、攻撃的な姿勢の方が実際彼らには良く似合う。クールなテンションの「
Slow Burning」が始まった時は「おっ」と思ったし(続く「King-N-Queen」がただの劣化Lil'Jonでつまづいたけど)、PHOBIA OF THUGの人選が大正解な不穏な「密告者」なんかはギャングスタやらなんやらのリリックがもう特に気にならい身としてはかなり楽しめた。何よりギアを全開にして飛ばす「4 Tha Hood」のZEEBRAが凄い。ほぼ英詩だし中身なんて何もないけれど、勢いだけで聴かせる力は流石。トラックでその下地を整えたBAYAの名前は覚えた。

他にもアレなラッパー揃い踏みのように見えて、ビックリするくらい565が大活躍する「
True Colors」が伏兵として潜んでいたり、チルだの愛だのを取っ払った猪突猛進な姿勢の曲は概ね高い完成度を誇る。ラストの全員逮捕出来そうなマイクリレー「Outlow Connection」もHYENAやGIPPER、MACCHOといった実力派がきっちり曲を引き締めていてダレない。ヒネれてないヒネり方をした駄曲の数々、凄く趣味の悪いジャケット、中身の無いリリックなどを差し引いても、正直思っていたよりずっと良かった。没個性になりがちではあるが、この作品を聴くまで名前も知らなかった人たちもガンガンに上がる音を提供しているあたりトラックのサポート体制は整っているし、、やっぱりハマれば強いジャンルではある。

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11:48 | GDX | comments(1) | -
Still Full / 22&GAZZILA


1.We Back
2.Flow Rider
3.Luv my hood
4.We don't care feat遊戯
5.Street Life
6.One Day

★★★★★★★☆☆☆


韻踏合組合のHEADBANGERZ主導のクルー・HB FAMILIAに所属し活動を続ける22とGAZZILAの2MC。それぞれ22がLOWSTYLERZ、GAZZILAが音麻心の一員としても活動していた。本作は「
FULLSMOKE」以来となる2ndミニアルバム。2007年11月20日発売。

いや、本当にカッコ良い。関西出身としては珍しいバリバリのウェッサイ系の2人。その魅力はズバリ「メロディセンスの良さ」に尽きるだろう。ラフでロウな22と陽気なガナリ声のGAZZILA。一見陰陽の関係でバランスを保っているように見える両者は、「そんなラップなのにフロウがスムース」という共通項を持つ。あからさまな歌フロウに転じるわけでもなく、ましてやシンガーにHOOKを丸投げするわけでもなく。それでもそれぞれの曲には、ウェッサイらしい気持ち良い手触りが感じられ、確かなラップのカッコ良さも失われていない。

特にやたらに色っぽい22のラップには、この手のHIPHOPが苦手な方にも是非触れて欲しい。ローブロー連打のような要所での巧さの重ね掛けが魅力的な「
We Back」でのHOOKなんてセンス良すぎ。存在感のある声を聴かせるGAZZILAも、負けじとノリの良いHOOKを見せた「Flow Rider」を筆頭に申し分ない働きぶり。初めて彼らの声を聴いたのはHEADBANGERZの「HB FAMILIA」だったが、主役のHEADBANGERZやYOUTHを押しのけて一番目立っていたあの力量は本物だったと改めて感じた。

作品中にワックMC斬り、地元愛、決意表明、チルソング、そしてローライダーものとこの手のHIPHOPに必要な要素を全て仕込んではいるが、リリックでどうこう聴くタイプの作品では無い。それよりも、「
We don't care」でトリを務める遊戯の存在感が霞むほどの、純粋なラップスキルの高さにただただ圧倒されるべし。
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22:47 | 22&GAZZILA | comments(0) | -
EN / K.E.I


1 阿 
2.都貘remix  
3.Smokerisksmuggler remix 
4.EN  
5.山分け feat.BLOM
6.Broken 2 Dogs feat.BLOM
7.CITY LIFE 
8.Marshall Roulette feat.狐火  
9.Skeleton feat.狐火
10.Ten 
11.何も無い
12.Green Side River 
13.Japanese Under Number 
14.吽 


★★★★★★★☆☆☆

2008年に発売された鬼一家「
赤落」収録の「都獏」でその存在感を示した福山出身のラッパー・K.E.Iの1stソロアルバム。2010年1月13日発売。

K.E.Iにとって言葉は夢を語る詩を織りなすものではなく、銭換金主義を貫くための現実だ。「
Broken 2 dogs」のような曲調の似た曲があることからも想起されるように、MSCのように都会の裏側の現実に身を置く語り部としての性格が強い。しかしMSCなんかの場合、その都会の裏側での立場はおよそ強いものであったのに対し、K.E.Iとその仲間は裏側でも僅かな93とCokeをどうにか手に入れる側に過ぎず、もちろん表側では搾取され、"こっちは作業着着た同志が過労死"(「Broken 2 dogs」)で、""半ば金がいる 電卓弾く指の数の取り分があればChill"(「City Life」)な状況だ。いかにもアングラらしい本作の閉塞感を構成するのは、後ろ向きで、かつある程度実験性をもって統一されたトラック群よりも、90度首を下に曲げながら強がって進む、K.E.Iの言葉の力によるところが大きい。

その暗然な作風は一部のHIPHOPリスナーも躊躇してしまうような取っつき辛さを纏っていて、抑揚の付かない(というか付けてる余裕がない)流れと併せて聴き疲れしやすいのも事実だ。明るい部分などPunpee作の「何もない
」も含めて皆無に等しく、陰鬱な流れを一気に収束させる「Green Side River」の出来が特に良いのが、重い。だが仲間の死に対して素直な言葉を投げ掛けた「Japanese Under Number」と、全力で強気に打って出たテンポの良い「Smokeriskmuggler」のようないかにもHIPHOP然としたアプローチの曲がそれ以上に素晴らしいことを思えば、陰鬱な詩を単純なポエトリーリーディングにしてしまわないよう絶えず韻を心掛けるK.E.Iにとっての救いは、やっぱりHIPHOPにあるのだろうと思った。
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10:13 | K.E.I | comments(0) | -
STANDARD PROCESS / JAB


1.Dear My Life Color
2.Local Hip Hop
3.We Gotta Go/どぶねずみ
4.なるようになるでしょ
5.Challenge
6.The One feat. Toki, Kn-Sun
7.How to Learn
8.Standard Process
9.I Think ....
10.Rock The Bells/高槻Posse
11.独り言
12.Skit
13.雨男の唄 feat. Atius
14.重ね重ね

★★★★★★★★☆☆


Lion's Rockの活躍などもあり、近頃躍進目覚ましい高槻で活動を続けるラッパー・JABの1stフルアルバム。2010年2月3日発売。

JABには何も無い。NITRO前後の神話的な存在としてのアイドル性も無ければ、押韻主義や奇想天外なフロウを操ることによる、ラップスキル的な意味でのキャラクター性も無い。感情的な部分を強く押し出すことで苦難やイリーガルな体験をHIPHOP的に転化して自分を映えさせてくれるような、ドラマティックな人生経験があるわけでも無ければ、だからと言って同日発売の某横浜プロダクションや某タコ社長のレーベルのように、肩の力を抜いて身の回りすべての出来事を気楽なラップトピックにしてしまえるほど、余裕があるわけでも無い。JABには何も無い。

作品を彩るわかりやすい要素をことごとく持たないJABが、自らを虚飾することを選択肢から外せば高槻へのローカリズムに帰結したことは、当然というか、半ばそれしか無かったとも言える。高槻の土地に生きる"仲間の事 家族の事 恋人の事 未来の事 金にもならん自分の生きる今をビート乗せ(「
Dear my life color」)"、消去法的に語る内容は地味で儚げで、それでいて前向きで、だからこそ胸を打つ。

9曲を担当したTAKAROTや、吹田2000らによって提供された、綺麗なメロディの数々に彩られた中で、JABは"やる事やってりゃ結構 なるようになるでしょ(「なるようになるでしょ
」)"と呟いて、"どこぞのランキングよりも今何時(「Standard Process」)"かが気になるし、"俯いてても その場凌ぎで笑って上 どっかがグレー こっちが晴れなら良い(「独り言」)"とはっきり言う。JABが全てを得てきた世界はこの場所でしかないし、自分と仲間達以上のことなんてわからない。

そしてその極小単位の世界で感じて、もがいて、支えあって、酔い潰れて。その全てを作品を通して丁寧に描いた結果、そこにこそJABにとってのドラマがある事を聴き手に理解させることに成功している。そしてそのとき同時に、本作は「JABの"ラップアルバム"」から「"JAB"のラップアルバム」に進化した。

だからその志を同じくして集まった仲間たちがそれぞれパワフルに活躍する楽曲群は、繰り返し聴くほど味わい深くなるんだろう。特にキー暴のこのアルバムにかける熱量はJAB本人に負けないくらいのもので、どっしりしたフロウと併せてインパクト大。


"こっちにあって 無い向こうに(「
Local HIPHOP」)"と語るその前向きなローカリズムは、その実向こう(アメリカ、もしくは日本の売れどころ?)どころか世界中の土地土地にも生まれ得るものであり、それゆえにそこで活動するそれぞれがオリジナルたりえるHIPHOPの原風景だ。武器が無いことすら武器にしてくれる、マイノリティミュージックとしてのHIPHOPの懐の広さに乾杯。JABにはHIPHOPがある。

ただひとつ、極端に低音が出ておらず、ベースライン自体無かったりする曲があるのが難点と言えば難点。それにしても今回もまた「
Rock the bells」、「雨男の唄」とatius(Lion's Rock)のブルーズっぷりがとんでもないことになってるわけだが、2ndはいつ出るんだろう。本当に楽しみで仕方ない。
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04:26 | JAB | comments(0) | -
Skill Plus Creativity / S.P.C.


1.No.1 Crew
2.Rhyme Dictionary 
3.Mirage Pt.2 Party Night Remix feat.Keyco
4.Sunrises in the North 
5.Ultimate Rhymes&Beats
6.The Impact feat.KAWA
7.Red Alert 
8.指黒探訪記 
9.Mirage 
10.Mirage Pt.2


★★★★★☆☆☆☆☆

S.P.C.は古くから札幌で活動を続けるKazmaniac、DJ Tama、DJ Seijiの3人組。本作は彼らがインディーズで500枚限定で販売した作品に2曲を追加し、幾つかのダーティワードに規制をかけてポニーキャニオンより発売したメジャーデビューアルバム。2001年8月1日発売。

主にDJ Seijiが担当したトラックは90年代直系の武骨なプロダクションで中々渋いのだが、肝心のKazmaniacのラップが2001年という時代性を加味してもなお古臭いのが勿体ない。韻を力点にライムを綴るそのラップスタイルは、90年代のZEEBRAなんかが散々その才能を持って遊び尽くした領域である。Kazmaniacはやや速めのフロウでリリックを紡いでいくが、あまりにも時代錯誤なオレイズムだけが全面に出ており、パンパンに言葉を詰め込まれたどの曲のどの部分を取り出してもたいてい"オレのライムはまるで〜"の類のリリックしかないのでは流石に時代なんて関係なくアウトだろう。少なくともラップにはクルー名の由来であるSkill Plus Creativityなんて微塵も感じられない、というのが実際のところ。

ほとんどの曲にリリックとしての面白みを感じないため、結局それらをすっ飛ばして「イケてるかどうか」なんて漠然とした概念のみで曲の出来を判断するしかない。その場合もやはりラップよりもメインプロデューサーであるDJ Seijiのトラックに重点を置くことになりそうだ。「
Rhyme Dictionary」のラフでファンクな作りや、その姿勢を留めたままメロウ路線までシフトして見せた「Sunrises in the North」、唯一と言っていいほどKazmaniacのリリックと上手く噛み合った、真っ黒サウンドの「指黒探訪記」あたりは面白かった。
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10:42 | S.P.C. | comments(0) | -

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