RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
遼の最近読んだ本
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PALPABLE / HAB I SCREAM


1.LOVE ICECREAM 
2.Still Shinin' feat.TRUTHFUL a.k.a. STICKO from FIRE BALL 
3.MOVIE STAR feat.YOUNGSHIM 
4.メロス 
5.Luv u so… 
6.ソウルメイト feat.COMA-CHI,JAY'ED 
7.Goodbye California 
8.DEAL FOR REAL feat.JUNGLIST YOUTHS 
9.I BELIEVE feat.E.G.G.MAN 
10.100 Million 
11.The Last Song 
12.IMAGINE (Bonus Track)


★★★★★★★☆☆☆

Soul ScreamのHAB I SCREAMの3rdアルバム。2009年8月19日発売。

「PALPABLE」=触診出来る、手に取る事が出来る。このタイトルに込められたメッセージ、それはそのままリスナーにこのアルバムが現実的なものとして受け取られるように、ということだ。名作の1stアルバムで見せたエモーショナルさというのは、あくまでも彼の心情世界を舞台にしているという意味でパーソナルだった。その世界を純HIPHOP化し、リリックを難化させた2ndを経て、この3rdアルバムで語られるテーマは特殊な事情により制作された「I BELIEVE
」を除き、より普遍的だ。仲間、友情、矜持、恋愛、葛藤、夢、家族、戦争、そして人生。語られる内容への共感の扉はほぼ万人に開かれている。そこには"ピュアで、愛を持ったアルバムでありたい"という彼の意図がよく反映されており、そのアプローチの方法はチェケラッチョでヘッバンギンなHIPHOPよりはよりJ-POP的な所に根差していると言えるだろう。そしてこれは勿論批判の言葉ではない。だからこそこの辺りの狙いを汲み取ろうともせずに、このアルバムを単なる「イケてるラップミュージックかどうか」で判断して、切り捨ててしまうのは愚かしいことこの上ないのだ。無論自戒の意も含むが、それはHIPHOPを愛する姿勢ではあっても音楽を聴く姿勢じゃない。

土臭さを取り払った抜けの良い打ち込みビーツが並ぶトラック群は、その嫌味なく耳に響く心地良さと併せてどこかL-VOKALの「
FREE」にも通じるものがある。そしてあのアルバムもリスナーとの対話を目的とした作品であったのは偶然ではないだろう。これからはこういう制作姿勢の作品がもっと出てきても良いと思う。

中でもBach Logic製の「
MOVIE STAR」は、さすがこなれた音の作りでアルバム中最も聴き易い。よくある"人生は君が主役モノ"だが、PUSHIMの実妹YOUNGSHIMの歌声も良く通っており気持ち良い一曲だ。シンガーが頑張ったという意味では旧友を思う「ソウルメイト」でのJAY'ED、RHYMESCIENTISTがよく作るような、Buzzer Beatsのトラックとは思えないほどギターが情感を持った「Still Shinin'」でのTRUTHFULLも同様か。フィーチャリング表記のある人以外にも随所にコーラス(何とBAMBOOやGACCHIも参加!!)が差し込まれ、その使い方がいちいち上手いのでラップアルバムにありがちな不器用さが緩和され、全体をスタイリッシュかつ感情的に仕上げている。

勿論批判点がないわけではなく、あちこちで触れられているHABのラップの変化は僕もやや否定的に捉えている。今までよりさらに鼻にかかった声でフニャフニャラップする様は多少感情表現に優れ、なるほど彼が言うように「言葉の温度を伝える為のフロウ」という意味ではアルバムの訴求力の向上に貢献もしているが、なんせ肝心のリリックが聴き取り辛い。先述したようにそれだけでアルバムとして見限るのは馬鹿げた事だが、この事が幾らか本作でのアプローチの魅力を落としているのは否めない。

しかし聴く前にあちこちで見聴きした評判よりはずっと良い作品だった。HABが自分の音楽を聴き手に伝えるという事に関してのみ言うならば、その意図のわかりやすさと熱量は1stをも凌ぐ。家の事情などから「義務感」に追われ作った1stよりも、「やりたい音楽」が最も出来たのは本作であろう。どうしてもラップに勿体無い思いを感じてしまいもするが、それ以上に全体に込められた想いと、トラックを含めたその表現方法の豊かさはもっと評価されて良い。
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04:52 | HAB I SCREAM | comments(2) | -
H&H / HIGH 5 & HOOPLA


1.Woo☆Baby (prod. by MOGG)
2.Enjoy Coke (prod. by MOGG)
3.Super Free(Fly To Iwaaklyn Remix) (prod. by Vector) MINT feat.High 5
4.Stick Ya Diddy (prod. by MOGG)
5.B.Q.B Snaky remix (prod. by MOGG)
6.君とおどりたい feat.Love Rockets (prod. by Love Rockets)
7.おっさんBOY,おばはんGIARL (prod. by MOGG)
8.Money Rain (ギンギンMIX) (prod. by MOGG)

★★★★★★☆☆☆☆

CHAKA、DAME(DAAM)、T-MO、BONGO、NUXXXの4MCにDJ SEIYAの1DJから成る、山口県は岩国で活動するHIPHOPクルー・HIGH 5と、トラックプロデュースやウェブデザインなどもこなす広島のダンスチーム・HOOPLAのコラボアルバム。彼らの特設HPからダウンロード出来る無料アルバムだ。2009年12月25日発表。

最大の特徴は、やはりHOOPLAのMOGGによるトラックの数々という事になるだろう。New Jack swing、Dub、Grimeなど多様な音を分解してつぎ込み、そこにクランクやスクリュードなどサウスのエッセンスを加える。その音の匂いは日本のHIPHOPのあらゆる歴史の延長線と無縁な所にあり、彼らのその背景を理解するには遠く海を隔てたアメリカを見る方が早い。そうした独自の発展を地方で遂げてきた突発型の存在は、最近ではAKLOやLil'諭吉などと共に少数のHIPHOP感覚の"直輸入型"グループとして数える事が出来るだろう。つまりこの作品にMINTが参加している事も何ら不思議ではない。

奇しくも揃ってフリーダウンロードアルバムを発表することにアピール手段を見出したこれらのグループは、SEEDAとDABOに代表される、地下階層とベテラン階層ですら単線で結ぶに至った"シーン"の現状と疎遠であり、その現状を維持しつつもリスナーに存在をアピールする手段としてネットを見つけたのだろう。そのスタイルに「日本人らしい詩が良い」、「日本人にしか出来ないHIPHOPスタイルが良い」といった基準とは性質を異にするオリジナリティの一つの答えがある。「HIPHOPの<オリジナル>」を追求しすぎたここ数年の反動が、2009年に大きく動いた「<HIPHOP>のオリジナル」への動きに繋がったとも言える。ともあれこれらの新世代が、一度繋がれば内志向にしかならない"シーン"に外部から刺激を与える存在になる事が出来れば、日本のHIPHOPはまだ満足という麻薬を経験せずに済むだろう。"ファイル交換のやりとり通して 歴史は作り上げられんだこうして"とMINTが言うように、正に彼らは今新たな潮流を作ろうとしているのだ。

まぁこのアルバムの出来のみに関して言えばその特殊性が取っ付き辛い事も事実で、僕自身一番スタンダードなラップスタイルのDAAMが頑張る「
MONEY RAIN」の後半に落ち着いちゃったりしている。ただ曲によってムラがあるのは間違いないが、「B.Q.B」のテンポの良さやソフトなクランクで仕上げた「君と踊りたい」は中々良い。ラッパー陣の声のキャラ立ちは出来ているので、もう少しそれ以外での武器があればもっともっと良くなったかも。特にリリックが耳にほとんど届いてこないのは辛い。こういう音は隙間のグルーヴ感を突き詰めたような種類なのだから、音としてしか響いてこないラップだと曲が凄く貧相になってしまう。

しかしこれまでだと頑張ってこうしてリリースしても、地元以外ではタワレコの片隅にポップも無しに置かれるだけで流れていってしまうような地方地方での作品が、無料とネットを武器にリスナーのど真ん中に届く。twitterでの色々な件も併せて、アーティスト-リスナー間の構造は今が一番面白いんじゃないか??

おじさんBOY,おばはんGIRL - PV  Youtube版は何故かタイトルがちょっと違うのね。
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23:48 | HIGH 5 & HOOPLA | comments(0) | -
Who's the MAD SKILL!? / MIKRIS


1.SHOUT ME
2.SCREAM
3.LASTTIME AT CHURCH
4.ZOOM ZOOM feat DELI
5.MAD SKILL

★★★★★☆☆☆☆☆


DELIや千葉勢の諸作品への参加で知られ、現在はB.D.やKGE、JBMと共にBull Dawgsとしても活動を続けるMIKRISのデビューミニアルバム。2004年1月10日発売。

喉が潰れたような嗄れ声で呻く、日本のHIPHOP史においても異端のラッパーであるMIKRISだが、その声質に加え子音を飛ばしがちに読み上げるフロウが更にリリックを聴き取り辛くしている。自然と音としてラップを聴く姿勢にリスナーは移行することになるが、実際中身は特に大した事も言ってないし言えてもいないのでそのアプローチの仕方で正解だ。NITRO直系のサラブレッド型のラッパーであるがために、ラップの技術と曲の(主にリリック面での)ヴァラエティを両立するのがどうしようもなく苦手な人である。オルガンで荘厳な雰囲気を出そうとYAKKOが努力した「
LASTTIME AT CHURCH」のどっち付かず感は悲惨。

ただHIPHOPを聴きたいけど頭は使いたくないときに最適なタイプのラッパーでもあるので、5曲で18分弱という小振りな本作は手軽に手に取れる特性を備えてもいる(それならどうせ本家のNITRO辺りを聴いた方がいいんじゃ、という論にはここでは触れない)。特に秀でた曲があるわけでもないが、何かやっているようで別に何も試みていない、DELIとの「
ZOOM ZOOM」や名古屋っぽいシンセサウンドの「SCREAM」なんかは今までのリスナー暦で既視感ありありな曲調ながらも、それ自体としてはそこそこ聴かせる。

作品としては何もボムれていない凡作以外の何物でもないが、MIKRISの特徴を理解し、全曲に渡りラフなビートを提供しようとしてくれたYAKKOの苦心もあり、最後まで聴かせるだけの力はある作品ではある。やっぱりラップスタイルがソロでは諸刃の剣だなぁ。

SCREAM - PV
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22:22 | MIKRIS | comments(0) | -
GOD BIRD / NIPPS


1.Intro
2.God Bird feat.KB,DEV-LARGE,XBS,GORE-TEX
3.Interlude
4.YUSHA
5.God Bird (instrumental)
6.YUSHA feat.KB,RICE

★★★★★★★★★

元ブッダブランドのNIPPSの2ndシングル。2001年12月27日発売。2001年の12月にこのジャケを持ってくる感覚はヌけてるのか計算してやってるのか、もうどっちに転んでも人として決して身に付けたくない外道センス抜群っていうね…。

トラックは全てNIPPS & DJ HISAによる"RYDEEN"が手掛けており、アブストラクト系のビートをルーツとするDJ HISAの好みが良く出た仕上がりの音が並ぶ。タイトル曲「
God Bird」については今さら語る事もない大クラシックなのであまり多くの言葉は割かない。しかしストリートの不浄感を多少の塵を残して清浄な世界に仕上げたこの曲が、他のクラシックとは異なる同空間異層なストリート感を纏っているのは間違いない。そこがHIPHOPマナーに従順である事で成し遂げられた他の良曲と並んでも、なおこの曲が魅力的である理由なのだろう。空気感の勝利。あとは抜群の曲への導入に成功したKBと同じくらい、XBSの声の映え方は立派だと思う。

しかし今となっては、このシングルでは「
YUSHA」にその価値が置かれるだろう。4曲目でインストとして収録された曲がシークレット扱いでKBとRICEを迎えてラップ入りの曲に。2分足らずのショートソングだが、だからこそ無駄が省かれ寄り道無しのマイクリレーとなった。ダウン重視のトラックに、この曲がデビュー作となるRICEの声が良く映える。アルバム未収録という点を除いても聴くに値する一曲だろう。最後はNIPPSのヴァースがフェードアウトして終わるので、聴き取り辛くなるリリックを書き起こそうと思ったけれど、実際起こしてみるとあまりにバカバカしい言葉の羅列だったのでやめました。ジャケット以外はそんなにNIPPSが遊んで無いシングルという印象があったが、トラックや他の客演陣の雰囲気がまともだっただけでNIPPSは相変わらずのノリだったことに気付く。ダメやん。
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02:09 | NIPPS | comments(0) | -
JAPANESE RAP STA on BOOT STREET / V.A.


1. N-TALK / PRODUCED BY jashwon for BIG CROW DOGZ MUSIC 

2. STREET DREAM / 十影,TEZ,CAZINO,馬獅,SOY,ISSUY,BRUK-HEAD,寿(以上LUCK-END),T2K,SHY-P.O.P(以上THELOYALTY),麻wooh吸inda house (無敵艦隊) 
 PRODUCED BY ATUSHI (LUCK-END) 

3. NEXT GHETTO PLAYAZ / D-ASK,SHIZOO,PAC-MAN (L2D fr,長野),PIT GOb>>
 PRODUCED BY INOVEDER for UBG Production 

4. 12' RAP STAZ / B.D,DWEET (以上THE BLACK TALON),MIKRIS,KGE,JBM, (TEAM 44 BLOX)C.T (B.B inc),D.O,JASHWON,PIT GOb,(D.OFFICE)MASARU (妄走族),KNZ (ICE DYNASTY),MAGASA
 PRODUCED BY jashwon for BIG CROW DOGZ MUSIC 

5. STAND UP STAND UP / HIDA (韻踏合組合 fr.大阪),愛 (黒船 fr.大阪),タイプライター (埼玉),りゅうどう(SHITAKILI IX fr.福岡),黒羽 (広島),BENZO (ABURA PRODUCTION fr.長崎),D.O,RINO LATINA II
 PRODUCED BY jashwon for BIG CROW DOGZ MUSIC 

6. HA,HA-I / DJ DA-15 (L2D)
 PRODUCED BY T-KC for BIG CROW DOGZ MUSIC 

7. STILL BALLER / HOKT,1-KYU (以上NORTH COAST BAD BOYZ fr.北海道),LGY (仙台),BUZZ (仙台),NITTY,D.O,RICANDYNA
 PRODUCED BY jashwon for BIG CROW DOGZ MUSIC 

8. DOGG LIFE / SEEDA,BES,A.THUG,STICKY,bay4k (以上SCARS),D.O,JASHWON,TWIGY
 PRODUCED BY K-LOVE from Okashi Party Production 

9. LOVE SCENE / PRODUCED BY K-LOVE from Okashi Party Production 

10. GHETTO ROLLI''N / ANARCHY (R-RATED fr.京都),D.O
 PRODUCED BY 泥王音(ドロキングミュージック) 

11. ラぶレたア / D.O
 PRODUCED BY jashwon for BIG CROW DOGZ MUSIC 

12. HI-BONG BOOGIE / HANABIS,魂風 (HIGH LIFE fr.岡山),LA-MEN DOGG,暗刻 (ONI-BONG fr.岡山)
 PRODUCED BY jashwon&T-KC for BIG CROW DOGZ MUSIC 

13. HARLEM n' JAPAN / PIT GOb,SHAKKA (下克上 fr.NYC)
 PRODUCED BY 無也 (下克上 fr.NYC) 

14. USUAL DAYZ / JASHWON,PIT GOb,E-MOTOROLL (L2D)
 PRODUCED BY K-LOVE from Okashi Party Production 

15. BOOT IN STREET / PRODUCED BY K-LOVE from Okashi Party Production 

★★★★★★☆☆☆☆


練馬The FuckerのD.O.とK-Loveが指揮を執り全国のラッパーを呼び集めたコンピレーションアルバム。2006年10月4日発売。

練馬The Fuckerは静のトラックメイカー・K-Loveと動のトラックメイカー・Jashwonという、2人の味のある作り手を抱えている。そして当然本作でもインスト込みでK-Loveが4曲、Jashwonが6曲手掛けている。そこにUBGからInovaderや、DJ MUNARIとしてソロアルバムも発表した無也も1曲ずつプロデュースしているので、15曲中の12曲については、トラックは概ね一定の水準を確保していると言って良いだろう。そこは安心して大丈夫だ。

這い上がってる真っ最中の若手ラッパー達の魅力が良く出たのは、LUCK-END勢が頑張った「STREET DREAM」を次点として岡山勢が吠えた「HI-BONG BOOGIE」だろう。東力士や東北のSHOWGOなど、地方の熱い男達が持っている男祭りフロウを操る4人のラップは勢いがあって楽しい。あとは「DOGG LIFE」が本作のハイライト。SACARSの面々の力量もさることながら、HOOKを担当するTWIGYのビートへの合わせ方が気持ち良い。「なんだよ、TWIGYはHOOKだけかよ」なんて不満は実際に聴けば出なくなる。メランコリーな存在感にやられてください。

だがしかしアルバムの質を損ねているのが、聴く前から予想出来る通り、参加メンバーの過多とそのスキル格差だろう。アングラから地方で活躍するラッパーまで呼び込んだ事でリスナーが得る楽しみもあるのは間違いないが、流石にいくらなんでも詰め込み過ぎて訳がわからなくなっている。「
NEXT GHETTO PLAYAZ」のSHIZOO、「12'RAP STAZ」でのKNZ、MAGASA、「STAND UP STAND UP」でのタイプライター、「STILL BALER」でのRYOなんかはトラックとの相性も併せてバッサリ切るべきだった人材であって、無駄な猥雑さを助長して曲の質を下げている事は否めないだろう。その辺りのストイックな制作が出来ずにダラダラと間延びした曲が出来上がる辺りが、ユニティの名の下に馴れ合いという底辺渋滞を引き起こしているという点で皮肉にもまさに日本のHIPHOPを上手く切り取れているのかもしれない。

あとカラフルな面々を取りまとめてくれるD.O.の器量は流石だと思うものの、彼が主導して纏め上げた(と思われる)HOOKがことごとくダサい。「
STREET DREAM」や「STAND UP STAND UP」なんて、もっと何とかなったんじゃないか。

12'RAP STAZ - PV
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02:02 | V.A. | comments(0) | -
AD-VIBES / 闇アガリ


1.Intro
2.Impatience
3.Y2MC
4.狼 feat.シーモネーター,T-Bone
5.Interlude
6.頂
7.Nonfiction
8.一期一会
9.Outro

★★★★★★★☆☆☆


マサカリとKSKの2MCにDJ TOSHIYA、トラックも手掛けるDJ Hi-vinegarの4人から成る穴倉のヒーロー・闇アガリの1stミニアルバム。2003年4月9日発売。

HIPHOPマナーに乗っ取ったフロウと堅い韻に加え、機知に富んだリリックを操る2MCを擁する闇アガリだが、何と言っても最大の特徴はマサカリの声だろう。Phobia Of ThugのMr.OZより少し高いくらいのゴロゴロ唸る低音デスヴォイスを響かせるマサカリの声は、どこかエロい。その妙な色気のある声色は、ラップスキルだけで言えば特別何か飛びぬけているわけではない闇アガリというグループに見事な色付けを施している。この色気のある声で紡がれるライムは、より鼓膜を伝い心を揺らす。

とは言えど、マサカリだけでなくグループ全体としても、純HIPHOPの枠内で冒険心旺盛に音楽を奏でる闇アガリの姿勢は印象が良い。特に冒頭の展開は熱い。
KSKが

"薄らと瞼を閉じ数時間は経ち 秒針の音だけが耳を触り 焦れば焦るほど間違いなく 機を逃すならもっとなりふり構わず表現し内側から木枯らし"

と始めたかと思えば、マサカリまで

"少しの油断で路次突き当り マサカリでいればいるほどの綱渡り"

とのっけからダウナーにダイブする「Impatience」で彼らのミニアルバムは幕を開ける。そこから深淵で闇に染まった2人がアガってきて、ライブ会場に足を踏み入れ代表曲「
Y2MC」を蹴る。この流れを経て盛り上がらないわけが無い。四つ打ちにチープなSEが乗っただけのトラックが彼らの掛け合いラップに巧くマッチしていて、2人の魅力を上手く引きだすことに成功した最高のB級パーティーシットだ。

他にも自分のヴァースを"チンフルエンザ"で始めるシーモネーターにリスナーが頭を抱えるアホなエロネタ「
」や、ようやく2人が前を向いてくれる「」など一曲ごとの指向がハッキリしており、良いタイミングで挟まれるInterludeの効果もあって、ストレートにHIPHOPしているのに聴き疲れない。

全体的にHOOKの作り方が掛け合いを重視するあまり、逆に幅が狭くなっていて面白みがなかったりもするけれど、それを考えてもなおお勧めしたい良く出来た佳作だ。今や彼らの名前を検索すれば5年近く更新されていないHPが見つかるだけの寂しい状態だが、そんな実質解散状態にあることを残念に思いつつ、彼らの功績に今一度このブログで光を当てたい。そして1人でも多くの方が闇アガリの存在を知り、願わくば作品を手に取る事を願う。「
一期一会」のメッセージが今となっては本当にリアリティがあって泣けてくるんです。

"ようこそここはルイーダの酒場 今日もこぞって勇者が列成す"
"会うて別れて別れて会うて 泣くや笑うも後や先 末は野の果て 秋の風 一期一会の別れ花"

一期一会 -PV
金のかかってないPVです。
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02:53 | 闇アガリ | comments(0) | -
SPLIT EP VOL.3 / ALI-KICK & MARUHIPROJECT


1.BEFORE THE GAME feat. HUNGER, TARO SOUL 
2.REASONS feat. あるま 
3.BACK IN THE DAY feat. メシアtheフライ, BES 
4.処刑決行 feat. 遊戯, 将絢 
5.HALF FULL,HALF EMPTY feat. MILI, B-BANDJ 
6.シュビドュビバップ feat. 鎮座DOPENESS, S.L.A.C.K 
7.I’M SORRY feat. Romancrew 
8.4 EMCEES feat. SATUSSY, SIMON, BRON-K, DABO
 

★★★★★★☆☆☆☆

韻踏合組合主宰のIFKレーベルによる企画コンピ第3弾。ROMANCREWのALI-KICKと、shunamiとkatsuoによるプロデュースチーム・MARUHIPROJECTがトラックを半分ずつ手掛ける。2009年12月11日発売。

この手のアルバムはクレジットを見たときが一番楽しくて、いざ聴く際にはその意外性が功を奏していることの方が圧倒的に少ないことをいいかげん自覚して臨むべきなんだろう。まぁ、それでもやっぱり期待しちゃうんだけど。

まず本作で勿体ないのはMARUHIPROJECTのトラックと客演陣の相性の悪さであろう。ビートの間隔を長く取ってスロウな音を組むMARUHIPROJECTのトラックは得手不得手がハッキリしている。つまり小節を一個単位としてそこに言葉をはめ込むフロウではなく、最近流行りの小節間を線で繋ぐ抑揚のついたフロウで臨むラッパーにとってはビートの間が開き過ぎていてリズムを取りにくい。TARO SOULの歌に振り切ったHOOKだけが頭に残る「
BEFORE THE GAME」でのHUNGERや、お気楽な「BACK IN THE DAY」でのBESの苦戦ぶりはそれを象徴するものだろう。逆に旧来型のフロウを操るMILIとB-BANDJによる「HALF FULL,HALF EMPTY」の出来が比較的良いのは、つまりはそういうことだ。

一方のALI-KICKのトラックも、事前にぼんやり期待していたようなソウルフルなトラックがほとんど無くて面喰らう。それでもビートをきっちり把握して、丁寧にラップする「
REASONS」でのあるまは曲の出来とは別に好印象だった。逆に何がやりたいのかわからない将絢とALI-KICKの電子トラックが不協和音を絶好調に奏でる「処刑決行」はマイナス。

曲として良かったのはALI-KICKの手掛けた2曲、「
シュビドュビバップ」と「4 EMCEES」くらいか。前者はMARUHIPROJECTが失敗した、曲線的フロウとビート間隔の長いトラックの相性の悪さを逆手に取ったやり口が見事。変態フロウの新進気鋭2人を相手に極端に間を取ったトラックを用意し、それによってそのフロウを限界まで間延びさせている。HIPHOPのフロウというよりは最早レゲエのそれに近いやり方で攻める鎮座と、相変わらず好きな事を好きなようにラップしているS.L.A.C.K.がドロッドロに溶けたラップを聴かせる、最高に抜けたチルソングだ。後者はタイトルからして集まった事に価値があるような中身の無いスロウなマイクリレーものなのだが、一番やりたい放題したのは煙いブラスが雰囲気出し過ぎなALI-KICKのトラックだろう。トラックとは真逆の高音域の声がよく届くSIMONと、逆にトラックと完全に同化したBRON-Kがベスト。

改めて見ると組み合わせを見たときに真っ先に目が行くこの2曲が成功しているという意味では、最低限の期待には応えてくれる作品ではあるかもしれない。ROMANCREWがセルフメイド以外のトラックではいつもチャレンジさせられてろくなことにならないのも改めて確認出来たし、良くも悪くも発見の多いEPではある。
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07:54 | ALI-KICK & MARUHIPROJECT | comments(0) | -
DAI SAN DANRAKU 97PAGE / MURO


1.DAI SAN DANRAKU 97PAGE
2.CONCRETE JUNGLE
3.Q FROM A feat.Lil'MURO
4.XXX-LARGE Pt.2 feat.DEV-LARGE,GORE-TEX
5.DAI SAN DANRAKU 97PAGE (MURO & DJ WATARAI REMIX)
6.CONCRETE JUNGLE (BEN THE ACE REMIX)

★★★★★★★★☆☆

MICROPHONE PAGERとして活動していたMUROの、ソロデビューミニアルバム。1997年7月15日発売。DJ BEN THE ACEがNYで設立したSPELLBOUND RECORDSからの発表となる。

MICROPHONE PAGER時代のMUROのラップスタイルがそのまま受け継がれた唯一のソロ作品で、当然音の面でも90年代のクラシカルな質感が詰まっている。その王道的なフロウと音の組み合わせは今になっては歌詞カードを目で追いながら聴くには少々退屈するかもしれないが、基本型であるがゆえにHIPHOPエッセンスが濃密に凝縮されていることも事実だ。

このミニアルバムは1996年7月7日に行われた「さんぴんキャンプ」からほぼ一年後に発表されたものだ。あのイベントは「日本のHIPHOP」の地盤がひとまず形作られたことを対内的に示し、「HIPHOPシーン」の存在を対外的にアピールするイベントでもあった。その設定をひとまず終えたMUROがようやく自分のキャリアを振り返る余裕を得て書いた曲が「
DAI SAN DANRAKU 97PAGE」だ。リリックをほぼ全て書き換え、よりブルージーなトラックに差し替えた「DAI SAN DANRAKU 97PAGE (MURO & DJ WATARAI REMIX)」と併せて、苦難ばかりが思い返される第2段落までと、ようやく一定の満足感と共に前を向くことの出来るようになった第3段落の差がこの数年の激動を思わせて興味深い。

実妹Lil'MUROの問いに一問一答形式で答える「
Q FROM A」にしても、J-RAPとの戦争、HIPHOPイズム体現を優先してきたMUROにとってようやく自分という人間の価値観を丸々吐き出す機会を得たかっこうだ。キャッチーなテンポが90年代のハーコーサイドHIPHOPには珍しくて良い感じ。文字通り空前絶後の組み合わせである「XXX-LARGE Pt.2」も、やっと次の世代に語りかけることが出来たといったところか。曲としてはガナリ最盛期のGORE-TEXが良いアクセントになっている。

ドカンとインパクトのある曲こそ無いが、飽きることを覚えさせない味わい深い数々のドープシットが静かに佇む。NYのレーベルな上にリリックから察するに1000枚しかプレスされなかったようで、他のMUROの作品に比べると余り見かけないようにも思うが、2005年に再発されたようだ。6曲で29分のボリュームに込められた、一仕事終えたMUROの熱い言葉に今からでも耳を貸してほしい。
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10:06 | MURO | comments(0) | -
F.E.R. ONE 〜響音kyoto〜 / FAR EAST RHYMERS

1.For Yourself 
2.キンモクセイ 
3.Come Back 2 Me 
4.The Roots〜Interlude〜  
5.少年時代  
6.Human Nature 
Bonus Track : Knockin' At The Door(日本語バージョン)feat.YUMING & FAR EAST RHYMERS

★★★★★☆☆☆☆☆

シンガー・Shinyaとラッパー・TWO-KとDJ HIROSHIの3人から成るFAR EAST RHYMERSのデビューミニアルバム。2006年11月15日発売。

僕が初めて彼らの作品を聴いたのが最新作「
F.E.R. Three」で、その時はそれぞれの曲があまりに勝負を避けて無難なポップ化されていたのを勿体なく感じていた。それは主にトラック面においての感想だったのだけれど、その点で言えばデビュー作であるこのミニアルバムの方が彼らの音楽ルーツを楽曲から聴き取ることが出来るように思う。イントロでジャズピアノを歪める「For Yourself」や2Stepの「Come Back 2 Me」のようなあからさまな音の自己顕示は、3作目では耳当たりの良さの犠牲になったものだ。タイトルからして狙い所のわかる「The Roots〜Interlude〜」も、それこそアーバンジャズを伸び伸びと表現したインスト作。そしてこの辺りの要素は、確かに僕が「F.E.R. Three」の記事で求めていたものでもある。

でも作品としては「
F.E.R. Three」の方が好きなんだよなぁ。サウンドの面では確かに彼らの色が見えるぶん本作の方が聴いてて飽きないのだけど、Shinyaのメロディラインの取り方は「ねがい星」など後の代表作に比べて明らかに落ちるし、中高生辺りの、悩んでる自分に酔いたい感性に訴えかけるような歌詞は全般に青臭すぎる捻り方でひどく気恥ずかしくなる。まぁこれは自分がいかに年を食ったかということなのだろうけど、UverworldのHIPHOP版(あのグループもラップするが)のような印象を受けた。要するに、歌詞に関して言えばストレートにわかりやすくなった「F.E.R Three」の方が、まっすぐすぎる正論であるがゆえにこんな捻くれた大学生の心にも届き易いということだ。

F.E.R.Three」ではほとんど嗅ぎ取れなかった多様なジャンルの影響がよく感じ取れるという点では確かに本作は有益ではあった。だがどちらかを勧めるならと言われたなら、幾ら中道ポップス的でも「F.E.R.Three」を迷わず選ぶだろう。しかしこうして2作品を聴いてみると、その合間の作品である、まだ未購入の「F.E.R. Two」にこそ程良いマッチングが成されているのかもしれないと安易な期待を抱く気持ちがあるのも事実。上手いことやれば面白いグループだとは思うんだよなぁ。

ちなみにユーミンを迎えた「
Knockin' At The Door」は、何も面白い所のないやかましいだけのラテンチューン。
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00:22 | FAR EAST RHYMERS | comments(0) | -
F.E.R. Three 〜ねがい星〜 / FAR EAST RHYMERS


1.Introduction 
2.Sunshine 
3.In the Morning 
4.ねがい星 
5.Interlude -F.E.R. Style 
6.No Turning Back 
7.Find the Way 
8.郷愁 
9.I Wish


★★★★★★☆☆☆☆

普段ここで取り上げているようなHIPHOPアーティストとは別のフィールドで活動を続けるFAR EAST RHYMERSの3rdミニアルバム。2008年2月13日発売。

全編においてShinyaのヴォーカルが主体となり、基本的にラップは添えるだけ。一言で述べるとするならそこには紛れもなくポップ系とされるそれが出来上がってるんだけど、さすがメジャークオリティなメロディラインの取り方や楽曲構成の上手さを実際に感じれば、早々に否定するには勿体無い面白さも確かに孕んでます。シンセが効果的に使われた「SUNSHINE
」なんかは一般人もHIPHOPヘッズも一緒に踊らせちゃうようなキャッチー且つカッコ良いHOOKが印象的で、普通にアガるパーティーチューン。タイトル曲である「ねがい星」はこれまた完全に一般層に寄り添った曲(a.k.aポップ構成)ながらも、HIPHOPを狭義化して批判ありきで聴かない限り、ケツメイシ的な良さをふんだんに感じられる哀愁ソング。卒業と失恋の両方をテーマにした感動二倍掛け仕様。ピアノと、そして何より完全にヴォーカルと化したShinyaのメロディの取り方が素晴らしく、オリコンにドカンと入ってもなんらおかしくない曲だ。

ただポップさを突き詰めた時の永遠の課題か、「ねがい星
」以降は同じような味付けをされた似たような曲ばかりが耳についたり、キャッチーさへの志向が見え見えすぎてリスナー側からすると多少ウンザリする可能性も孕む。また様々なジャンルを取り入れたトラックが魅力とされてるけれど、エレクトロニカルな「introduction」とジャズピアノがいい具合に跳ねる「In The Morning」以外に何か混合性を感じ取れるトラックが無く、トラック面での面白みに欠けた。もしあったのだとしても、どのジャンルを取り入れていても結局作るトラックの方向性が全て中庸的なキャッチーさに向けられていて個性を感じない。この先大量に存在する「ただのポップ系」の一つになってしまうかどうかはこの点の修正が決め手になるのでは。ただそれでも「SUNSHINE」と「ねがい星は中々良い曲であることはもう一度、強く主張しておきます。 「郷愁」でのShinyaの歌も耳に心地良いし、彼らの音楽に何かオリジナルな色付けをする素地は十分にあるだろう。

ねがい星-PV
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02:24 | FAR EAST RHYMERS | comments(0) | -

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