RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
遼の最近読んだ本
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RISING / GHETTO INC.




1.Welcome to the Ghetto World 
2.My City 
3.Down With Us feat. SAY 
4.DJ Mario's Interlude 
5.Smooth Operator 
6.Hood Sound Is Coming! feat. HOKT, TWO-J 
7.Yoko Yoko Cruisin' feat. Kayzabro(DS455), MACCHO(OZROSAURUS) 
8.Good Ol' Dayz

★★★★★☆☆☆☆☆

BIG RON,DJ MARIO,RICHEE,ONE-2の1シンガー1DJ、2MCから成る、横須賀に拠点を置くGHETTO INC.の1stアルバム。DS455率いるDSCrewより、2007年3月28日発売。ラップ入りの曲の全てをPMXが手掛ける。

この作品を聴く前から彼らの参加した音源は聴いていたけれど、やっぱりラップが酷い。曲自体はこのジャケット、風貌から想像されるようなギャングぶったリリックこそ無く、実は経験に基づく地に足着いた内容のものが多い。しかしその貧困な語彙からは、一般のリスナーが聞き飽きたような形式的な言葉しか吐き出されない。声だけは特徴的なRICHEEも、なまじ耳に残る声な割にリリックは全く頭に入ってこないため、聴き終えた後にはあの声だけが頭にこびりついて延々リフレインする。こんな言い方はなんだが、正直8曲で済んで良かった、と心底思った。ONE-2のラップは普通な声はともかく、更にリズム感を差し引いたようなものでとてもわざわざPMXに音を用意してもらうのに見合ったスキルとは言えない。

こうしてラップがアレなことでこの低評価だが、評価するポイントが無いわけでもない。ジャパニーズウェッサイのドン、PMXによるトラックの数々だ。このアルバムでの彼の仕事は過去の彼の作品と比べても(少なくともDS455の5thよりはずっと)高水準だ。仰々しいキーボードとアップダウンするドラムの迫力が凄い「
My City」は、荒々しく猛る様がいつもの間延びした歌声よりもずっとカッコ良いBIG RONのシャウトとも相まってかなり良い。メロウなブツ切りファンク「Down With Us」の作りもかなり気持ち良いし、一方で明らかに1stの頃のWestside Connectionの音とHOOKを目指した「Hood Sound Is Coming!」や、完全にDS455のノリで突っ切るドライヴチューン「Yoko Yoko Cruisin'」だって魅せてくれる。

これだけの音を作ったなら、MACCHOかせめてDSの新作に充てれば良かったのに…なんて勿体無い。ともあれインストとして聴きたくなる音を届けたPMXの絶好調ぶりによって何とか持った作品。BIG RON以外のメンバーの名前をDSCrew周辺以外ではほとんど見かけないことに改めて納得した。因みにMACCHOは「Hysterical」の語尾上げフロウです。

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14:39 | GHETTO INC. | comments(4) | -
enter the Garage Vol.1 / ダースレイダー
 


1.WOOO!! DARTHREIDER 
2.GET FUNKY!!!! feat. ヨシピー・ダ・ガマ 
3.ママのアソコにKISSしな feat. GOUKI 
4.ON THE WALL 
5.JAPANESE WILDSTYLE feat. SITE, NORIKIYO 
6.明日に向かって撃て!! feat. RYUZO 
7.WHY WE BURN STILL ON THE RUN feat. GOCCI, GOUKI 
8.LIVE ON DIRECT 
9.世界最高のPARTY feat. INDARA, METEOR 
10.JAZZY HIPHOP IS DEAD feat. キリコ 
11.メイン奏者はMCだ! feat. キリコ 
12.謎の帽子いつも被った人物 feat. STERUSS 
13.MOONDANCE feat. MACSSY, MIHO 
14.NIGHTSUN 
15.CISCO 坂 feat. カルデラビスタ, ZEN-LA-ROCK


★★★★★★☆☆☆☆


2009年6月17日発売、日本のHIPHOPを一人で掻き回す男、ダースレイダーの5thアルバム。「自分が二十歳くらいの頃に聴いてたHIPHOPに回帰」する事を目指し、それを踏まえて「自分がいま聴きたいHIPHOPアルバムを目指したら今作「enter the Garage」になった」という。その結果として、客演陣を見てもRYUZOやガマ、NORIKIYOにZEN-LA-ROCKなどこれまでにない階層からの面々を迎え入れた作品になった。

でもなんだろう、物凄くつまらなかった。ダースレイダーのこれまでのアルバムは、溢れ出る音楽的欲求を本能だけで完成させたような1stアルバム「Garage Funk Theory」がブッ飛び過ぎてた一方で、その後の「ガレージ男の魂」から前作「俺ガレージ ORGANization」まではその激情をギリギリスタンダードなHIPHOP的解釈の下で理解出来る、つまりそこにかろうじてバランスと呼べるアンバランスさが成立していた。そのアルティメットな音楽欲求と一般的なHIPHOPが織り成す不協和音が最高にガレージ的かつ刺激的だった、というのは以前までのレビューでも触れてきた。でも今回は自分のルーツであるHIPHOPへの原点回帰を目指し、その枠内に音を落とし込んで、ゲストを決めて、テーマを決めていったという。なんて無駄な作業をしたんだ。その枠が無い所からなんのハーモニーも無いような上ネタとビートと言葉の力相撲(僕はそれをファンクと呼ぶ)を行って、ともすればダース自身しかその魅力がわからない、そんな劇場型オナニーアルバムでこそ彼の評価は高まってきたというのに、今回のアルバムでは自ら足枷を付け、あくせくHIPHOPに捧ぐためのアルバムを作ったという。とんだドMプレイ。

その結果トラックの平凡さが凄い。質が悪いとは言わない。がしかし、全てが規格内。以前の作品でのあの何が出てくるかわからない、闇鍋に無理矢理付き合わされているような刺激なんて存在しない音。「原点回帰を目指した、古き良き90年代のトラック」こんな誰もが見飽きたような、つまりこれをやってるごまんといるアーティストを説明する為の形式的な言葉で今回のトラックの説明は終える事が出来る。なにこのコピペしたみたいなファンク感、つまらなすぎ。

ゲストとダース、音との相性も決して良いものとは言えず、物凄く乗りにくそうなGOUKIが気の毒な「
ママのあそこにKISSしな」やSITEのよく1Verse任されたな、と思うようなラップの後にNORIKIYOが凄く凄くアレな、絶句もののラップをカマしてくれて、一番手のダースのHIPHOP愛溢れる出だしを台無しにしてくれる「JAPANESE WILD STYLE」を始め散々な出来の楽曲が並ぶ。「JAZZY HIPHOP IS DEAD」ではダースが説得力のある言い分を見せてくれるものの、続くキリコ(初めて聴きましたが酷いラップですね)がテーマの根本を揺るがすヴァースを聴かせてくれる。ダースのインタビューによるとこの曲は「アーティストに対してじゃなくて、音楽のジャンル分けだったりメディアに対しての批判なんだよね。」との事なのだが、キリコは思いっきりアーティスト批判。そのくせ「ミツザビーツはピース むしろガグルのファンだ」と曲中でエクスキューズしなきゃいけない隙の見せ具合にただただ絶句するばかり。

謎の帽子いつも被った人物」は従来のアルバムを踏襲するような突き抜けたHOOK「だけ」良かった。「CISCO坂」は東京の方の思い出ソングであろうぶんそれを考慮した印象ながらも、悪くはない。カルデラビスタの声が映えていた。というか彼は大抵の音の上で声が輝くなぁ。ただ好きなんだけど、この曲でのZEN-LA-ROCKは違和感ありありで不要だったと思う。唯一かなり惹かれた部分があるのが「MOONDANCE」。なんといっても黒まみれの声と立ち振る舞いで曲を艶やかに彩るシンガー、MACSSYが良かった。彼女の曲はもっと聴いてみたい、そう強く感じた一曲。まぁ最後に1stの頃のCOMA-CHIの劣化版みたいなMC MIHOのラップでげんなりするんだけど。

結局アルバムの中身に言及する際には一曲ごとつまみあげて評価するしか手法がないという点で、これまでの彼のアルバムに在ったとっちらかり感(これは良い意味で解釈してほしい)だけは感じられて、アルバム作りの際の芯だけは失われていないのが唯一の救い。普段の活動は本当に立派だし応援してるけど、自分のアルバムはこれまで通り80%の感覚と20%のバランス取りで製作してくれればいいんだよ!!前作最高の偶発的化学反応を生み出した「
WHY WE BURN ?」の各人のラップが、リミックスである「WHY WE BURN STILL ON THE RUN」でもその輝きをほとんど失っていないのが良い証拠でしょう。
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00:11 | ダースレイダー | comments(0) | -
愚者の腑 / 三善出 a.k.a.三善善三
 


1. まいりましょう~乱飛乱外 
2. 財宝 
3. 怪盗夜乃毒露 
4. ここの詩 
5. 宇宙幻想 
6. アブナイ~報告 
7. 今日もいつも同様 
8. 正直者の権兵衛さん 
9. 追想 
10. 巌 
11. 明日
 

★★★★★★★☆☆☆


ラッパ我リヤのオリジナルメンバーでもあり、年中男祭り集団の走馬党を陰で支える良き親父、三善善三が三善出(みよし いずる)と改名し放った3rdフルアルバム。2009年8月1日発売。作詞作曲演奏から録音、ミックスまで全て一人でやってのけた、ベテランによる究極の山篭りアルバムだ。

サウンドも材料はAKAIのMPC(恐らく2500)にヤマハSGにMarshall Amps、これだけ。トラックの幅を意図的に制限している(せざるを得ない制作環境だったのかも知れないが)ため、収録曲も主に2タイプに大別出来るだろう。ひとつは
乱飛乱外」を筆頭とする、ほぼ単語のみがブツ切りに曲中に配置された感覚的なもの。もうひとつは「怪盗夜乃毒露」などのように、曲中に明確な物語が設定されているもの。この2タイプが立ち代りに展開していくことで、トラックが前述の通り同一手段によるサウンドによってアルバム全体の下地を等しく平坦に保っているのに対して、リリックの内容、スタイルの変化性によって非常に気持ち悪い閉塞感が襲ってくる。

この気持ち悪さの見せ場は、間違いなく「
ここの詩」からの一連の流れだろう。上空でアンニュイに展開するシンセが比較的ポジティヴな空間を作り出す中、母の胎内から生れ落ち、家族を築き、しかし争う結果血塗られた人生を歩むことになった情景が「ここの詩」で単語レベルで描かれる。こうして人の生き様を2分弱の曲に落とし込んだ後に、モロにスペースファンクな「宇宙幻想」の音が突然耳に開ける。HOOKの言葉を借りれば「広大な脳内航海」を目指して人が抱え持つ葛藤の部分を、また単語単位で言葉を配置して抉り出す。こうして文章ではなく単語レベルの異常感が感覚的に訴えてくることによって、聴き手は左脳よりも右脳でこの作品を脳みその理性のリミッターが外れた状態で聴き続ける。

続く声ネタのみで構成された「
アブナイ」で言われるとおり、「しっかり狂っちゃって」る状態が完成する。そんな頭にはどんな選りすぐられた名文よりも、続く「報告」でのまたしてもな単語だらけで構成された社会批判の方が遥かに鮮明な情景を右脳が浮かべてくれるし、年老いた貧乏な母子の辛過ぎるルーティンな日々を描いた「今日もいつも同様」で唸る気色悪い低音シンセすら心地良く感じられてくるだろう。続くオレオレ詐欺に騙される老人を描いた「正直者の権兵衛さん」を社会批判の曲ではなく、三善の間の抜けた語りと併せてユーモラスソングとして受け取る事が出来れば、もう作り手の狙い通り。ここまでの鬱屈したサウンドと言葉の配置によって、どんな善人もイカレポンチにしちゃう最高のキチガイアルバムだ。

これ以降の後半には三善が飼い猫に哀悼の意を捧ぐ「
追想」、「ドロドロに渦巻く情念 吐く自己表現」を唯一前向きな意味で解放した、ギターが捻くれずにちゃんと尖ってる「」を経て、未来への期待と同等の不安を抱えながら歩く三善の本音が毀れ出る「明日」と、聴き手の脳みそを弄繰り回すのではなく三善本人の情景が描かれ、奇天烈と言われる三善の作品中でも最もアブナい方向に振れたアルバムは幕を降ろす。

1st「三善的大魔境」のような、純粋な(あれでも一般的なHIPHOPとしては変だったが)ラップアルバムを求めるのであり、ラップアルバムとしての視点でしか評価しないつもりなら、どんな三善ファンでも今作は買うべきではないだろう。ハッキリ言ってラップがフロウ、スキル、押韻という意味でキレてる曲は皆無だし、そもそもラップとして成立していない曲すらある。そうした意味で、ウチが日本のHIPHOPをレビューするブログである以上、その視点からは★は3つ4つといった所に落ち着かせるのが正しいのだろう。

しかしHIPHOPという括りに入れなかった場合、この野生的なファンク感や脳髄までキチガイウイルスに犯されるようなトリップ感はかなり評価すべき点があるのも確かだ。我こそはと思う捻くれ野郎共こそ挑戦して、どうせ見事に打ち負かされるだろうから、この中盤に代表される歪濁な音世界に飲まれて明日からの生活もままならないくらい脳構造を弄られれば良い。声の録音環境が宅録らしくかなり安っぽかったり、やっぱりラップアルバムとして楽しみたいという気持ちも正直あったが、作品としては「おればむ」以上に刺激的な目的地を目指した怪作と言える。これこそオリジナルじゃねーの??
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17:55 | 三善善三 | comments(0) | -
Japanesta -Little Boy&Fat Man- / Phobia Of Thug
 

1.Intro〜air-raid alarm〜
2.Little Boy & Fat Man
3.戦友
4.Talkin' about my hood
5.Tought Not Enough feat.E-eight
6.Matter Fact
7.Winning The Case feat.DJ SIDE-2
8.Dedicated... feat. 來々

★★★★★★☆☆☆☆


1stフルアルバム「Hydrophobia」発売からちょうど一年後、2006年4月20日に発売されたミニアルバム。日本のHIPHOPの中でも割と名の通った存在であった割に、実はPhobia Of Thug名義で出した作品は2作品だけ。Little BoyとFat Manという、広島、長崎の原爆の名を自身に照らし合わせたサブタイトルを冠しての登場だ。

とは言ってもタイトル曲も戦争という題材そのものをメインに据えたものではなく、「
戦友」と合わせて、あくまでも戦争に見立ててラッパーとしての自らの活動を描いた曲だ(勿論戦争自体への言及も幾分かはあるが)。そして4曲目「Talkin' about my hood」以降は全くリリックの題材としては戦争は関係なく、いつも通りのノリで展開します。

ただハスリン(orラッパー)仲間との別れを戦場での別れに見立てた「
戦友」は、アイデアは良いのに音が勿体無い。トラックを手掛けるほぼメンバーみたいなDJ 4-SIDEがビートに乗せた「いかにも」なシンセは、しようと思えばいくらでも情緒的だとか哀愁漂うなんて言葉で擁護出来るんだろうけど、正直良く頑張ってるリリックの重さに比べるとあまりにも軽すぎる。もっと泥まみれのビートであればリリックとも彼らの声とも相性が良く、語られる言葉の生々しさも何倍も違っていたことだろう。その点「Little Boy & Fat Man」にはまだその傾向が見られるため、幾らか歯応えのある出来に仕上がっている。

他のDJ 4-SIDEのプロデュース曲も余りにも迫力が無さ過ぎてこの作品に関しては関わらない方が良かったんじゃないかと思ってしまう。逆に他のトラックメイカーが頑張っていて、中でも海外から迎えたG-MAN STANが腕を揮った「
Tough Not Enough」は良い。ヴァース部分では下層で唸り続けているベースが、HOOKではコード進行はそのままに尖ったギターへと姿を変え一気に牙を向く。ドライな切り捨て方がニヒルなMr.OZ、相変わらず全然上手くないけどこういう曲では妙な迫力を纏うGanxta Cueも絶好調で、今作のベストナンバー。そしてDJ SIDE-2がプロデュースした「Winning The Case」の力任せなビートも中々良い。珍しくリリックに関しては何の内容もなくペラッペラだが、まぁ間違いなく狙ってのことでしょう。考えなしに頭を振れるアッパーチューンだ。

Mr.OZとGanxta Cueのラップに関しては、これは安定していると言って良いのか1stの頃と全く変わらないんだけど、ちょっとそれを支えるトラックが弱すぎだと思う。ラップの迫力はもう屈指のレベルに達しているのだから、後は音に恵まれれば文句なし。その点珍しくレイドバックした「
Dedicated...」なんかも新機軸で良いと思う。目新しかった。しっかしMr.OZのリリック、声はもうそれだけで才能だなぁ。リリシスト。
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10:29 | Phobia Of Thug | comments(0) | -
MASTERPIECE / ラッパ我リヤ
 

1.こいつがウワサのTOKYO産 
2.始まりの合図 
3.ヤバスギルスキルNo.9 feat. satoshi(山嵐)、Yooco  
4.届くまで feat.Bamrainsidaz(ARK&SKIPP) 
5.愛と夢と 
6.My Girl 
7.Get It How I Live 
8.Gariya Is Back! 
9.ULTRASUPERSTAR feat.JESSE(RIZE) 
10.MORIAGARU 
11.HEY! HEY! HEY! feat.Minesin-hold 
12.Music Is My Life
 


★★★★★★★★★


以前にもレビューしたこのアルバムですが、自分の中で余りにも尻上がりに評価が上がっていくので丸々再レビューです(前回の記事もそのまま残してあります)。

相変わらず苦手な最初の二曲(この二曲が良ければ満点でも良かったかもしれないくらい)と、これからのレビュー内容とは独立した別の文脈で理解されるべき「
ヤバスギルスキルNo.9」に関しては以前のレビューと同じ感想なのでそちらに譲ることに。

で、評価が上がった一番の理由は、大きく変化した彼らのラップと、アルバムの大半の曲を手掛けたJ☆STILLTONによるサウス基調のトラックとの間の化学反応を理解できるようになったことだろう。ここには今まで見てきたひたすらに男臭いラッパ我リヤはいない。この作品で目指したのは今までと違うグルーヴ感だ。喜怒哀楽を、リリックではなくラップのフロウと声で表現できる段階にまで到達したQと、あのフロウのまんま大半の曲でオートチューンを用いてホゲる山田マン。「土臭い、男臭い」という言葉でしか語られなかったこれまでの作品とは基底から異なる。つまり前述した変化を見せるラップにミニマムな公式でエモーショナルなメロディの構築を目指すトラックが乗ることによって、最高にヨレたリズム感と最高にヨレたグルーヴ感を生みだしているのだ。これまでの泥まみれの音と、唾と汗が入り混じるラップがぶん殴り合いながら握手を交わしているようなグルーヴ感とは、真逆とは言わないまでも明らかに方向性を異にするものだ。

そしてこの点に順応し、理解出来たリスナーから順にこの作品への評価は上がっていくというわけ。特にその総和のレベルが高い「
届くまで」、「愛と夢と」、「My Girl」の三曲の素晴らしさについては以前の記事で一応も言及する事が出来ていたのがせめてもの救い。中でも「My Girl」のキーボードとQの歌が奏でるメロディの秀逸さは万人に語って回りたいくらい。あの深みのある音世界と絡む重厚なグルーヴ感なんて、今の日本のHIPHOPで他に出せる人いるの??ってレベル。

尻上がりにテンションを上げていく「
Get It How I Live」や「Gariya Is Back!」などの攻撃的なナンバーも曲のタイプが異なるだけで積み重ねられている公式は同じため、耳が慣れるにつれ眩いばかりの魅力を放つ。馴染みやすいメロディラインがあるぶん先の三曲の方が琴線に触れるのが早かった、ただそれだけのことだったのだ。

その後続くパーティチューンからラストを締めくくる「
Music Is My Life」まで、目指すところは同じで同様の楽しみ方でイケる。「Music Is My Life」なんてここまで書いてきた変化要素が最も具体的に詰まってる曲で、つまりは名曲だ。Qの泣きフロウの巧さにただただ唸るばかり。

こうして表面上の音の変化以上のコンセプトが明らかに設定されているのに、発売後間もなくあんな考えなしのレビューをしたことは本当に反省したい。自分の耳なんてまだまだクソみたいなもんだ。ともあれこうした諸条件に慣れれば(もしくは単純に元からサウストラックに免疫があるならば)とんでもない名盤として、数年聴き続けられる。前回貶しといて何ですが、もっと騒がれていいアルバム。我リヤ信者だからなんて関係なく、今のところ2009年のベストに位置づけられるスーパースルメグルーヴアルバム。…なんて適当なまとめ方!!
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21:55 | ラッパ我リヤ | comments(0) | -
親不孝 KID'Z AMBITION / POCKY



1.INTRO - pro. MANCHEESE 
2.THE 親不孝 BREATH - pro. MANCHEESE 
3.NO RETURN RIOT - pro. DJ MOTORA 
4.ONE MIC - pro. DJ SEIYA 
5.SKIT - pro. MANCHEESE 
6.舌打ち feat. REIDAM - pro. CHAF 
7.SOUL TRAVEL - pro. FUNK入道 
8.WRITERZ HIGH - pro. DJ INO-UP 
9.ムジナ - pro. DJ 441 DA FINGER 
10.SKIT - pro. MANCHEESE 
11.REPRESENT - pro. MANCHEESE 
12.夜明け feat. 智大 - pro. 圭角パビリオン 
13.みちしるべ - pro. AIR EI-ONE



★★★★★★★☆☆☆


2009年9月2日発売。福岡は親不孝から名乗りを上げた18歳の新人、POCKYの1stソロアルバム。ダメレコから1000円シリーズとしての登場だ。このシリーズはこれまでの作品で築き上げた信頼感とこの価格を武器に、新人が作品を発表する場としてはこの上ないステージだなぁ。こういうフックアップはどんどん積極的にしていってほしい。

そして、まずレビューに入る前にひとつ。このアルバムの評価に際して、「18歳にしては」「18歳でこれだけ出来れば」といった類の言葉は用いずに進めていこう。本人も「
舌打ち」で言及しているように、どんな年齢だろうが他のベテランラッパーや有名ラッパーと対等の場で評価されるためにこの全国区に出てきたわけで、そこにこのような副詞を用いて評価をゆるめてやるためのユース枠を作るなんて、誰よりPOCKY本人が不本意だろう。「18歳だから」こそ出来た作風等については勿論その都度評価していくが、スキルやアルバムの全体評にあたっては年齢を理由に評価を甘くすることは全くない事を始めに断っておく。

アルバムの内容に目を移すと、非常にHIPHOPマナーに乗っ取った、教科書的な作品だ。これがエクスクルーシヴ・プロデューサーを務めるダースレイダーの指示によるものかはわからないが、等間隔で2曲SKITを配置し、前半が新人としての勢いをそのままコンパイルしたような決意表明、中盤では地域色を強めてより具体的なテーマをユニークさも交えて描いていく。そして後半ではその地域色を別視点から哀愁感を強めて描いたもので、「これから」を見据える方向にシフトしてアルバムは幕を閉じる。

POCKYのラップもその構成をソツ無く乗りこなせるだけの振り幅をもった、的確なライムデリバリーに背伸びしないリリックを組み合わせたスタンダードなタイプだ。こうして目指されたアルバムの構成方法とその目的をミクロ(楽曲毎でのフィット感)、マクロ(アルバム全体の統一性)単位で支えるのが、恐らくは地元仲間で固めたのであろうトラックメイカー陣。一言で言えば、揃いも揃ってみんな90年代の米HIPHOPを彷彿させるあの音の使い手達だ。ただ軽く苦言を呈すと、Funk入道とAIR EI-ONEを除いても7名のトラックメイカーが参加(つまりSKIT、INTROを除けば全曲違うトラックメイカーが担当)しながらアルバムとしての纏まりが確保出来て「しまっている」のは、このアルバムの「次」を見据えるならば、個々人の特徴の出し方として考えるべき所は多いのでは。

ただこのアルバムの話として言えば非常にうまく統一されているのは間違いない事実。いかにもSoul Assassinsな音でアルバムの冒頭を黒く染め上げるMANCHEESE作の「
THE 親不孝 BREATH」とDJ MOTORA作の「NO RETURN RIOT」、正統派東海岸なDJ SEIYA作「ONE MIC」で構成される前半は特に良い。後ろ向きな匂いがするダウナーなトラックをPOCKYが青臭いリリックと正攻法なフロウで乗りこなしていて、そのコントラストが非常に映えていてカッコ良い。ここから中盤、REIDAMのPOCKY以上に勢いに任せたラップが耳に楽しい「舌打ち」まではかなり楽しめる。ただそこからは正攻法、正攻法とひたすらまっすぐに突き進むPOCKYのラップに疲れてきてしまうのが正直なところ。楽しげにファンクに振れるトラックも凡庸で面白みが無い。

特に「
WRITERZ HIGH」と「ムジナ」は、地域色が強い上にそのメッセージに共感出来ないためダレる。中でも「WRITERZ HIGH」ではグラフィティを歌っていて、タグを消すバビロンにファックサインを出しているが、もう、なんていうかね。みんなが平等平穏な状態で使えるのが公共の場なわけで、それを自分達の主張(というか実質落書き)で汚して割れ窓理論を実践しちゃってる人間が文句言うなと。それはバビロンじゃなく公共の安全を守る「政府」としてごく正当な行為だ。クソつまんねータグを街中、人様の家にブチ撒けるな。せめてまず自分の家の壁で練習しろよ。もし自分の壁にスプレーをブチ撒けることに何らかの拒絶感、汚したくないという気持ちを感じたならば、その気持ちを他の人の家や場にも向けろ。僕がHIPHOP文化とやらがわかってないと言われるならば、それはそれでいい。そんなところにHIPHOPの本質が眠っているなら、僕はそれを掘りだす事より他人の気持ちを考える事の出来る人間になることを優先する。自分達だけが満足する為にある世界じゃねーんだよ。
ただ勿論B-BOY PARKのグラフィティコーナーみたいなのは大歓迎です。めっちゃ楽しむ。

話が逸れてしまったが、こうしてダレる中盤を抜けての後半はまた中々良い。がしかしやはりトラック、ラップ共に互いを活かしきった前半3曲に比べるとやはり小粒感は否めない。
ラップ、トラック、ライム、テーマ、どれも非常に優等生然としたHIPHOPアルバムを聴いたからか、大きな不満は特に無い。がしかし同時にどれもあと一歩キャラクターが確立していないため、手放しで褒められる出来ではない事も確か。次回作へ向けて本人がこの作品で手応えよりも反省点を多く見出しているならば、次回作はより大きくなって帰ってくる。それを期待出来るだけの力量、サポート陣を得ているラッパーであるのは確かだ。
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neworlder / radio aktive projeqt



1.ザ ショウ
2.ウチの ’09 feat.Jun-GMC
3.そりゃあないよ (Original version) feat.雄三ザ色男
4.R.A.P.
5.これ超よくねぇ? feat.Uzi
6.日本人天才 feat.黒人天才
7.24 -Twenty Four- feat.宇多丸(ライムスター)
8.シ・ョ・ク・シ・ツ feat.神和fromJ.A.飛龍
9.それじゃあ悪魔が… feat.Jun-GMC
10.宇宙戦争
11.Bボーイロジィ feat.Crazy-A
12.誰か教えて
13.アルファベットと番号のみ
14.Neworlder
15.アフターアワー

★★★★★★☆☆☆☆


2009年5月27日発売。キングギドラのリーダーK DUB SHINEと、DJ OASISから成るradio aktive projeqtの1stフルアルバム。なんとドワンゴミュージックからの発表だ。15曲で税抜き1980円という値段設定もよく頑張った方だろう。

しかし数多くある批判点から入ろう。このメンバーを見たときから別にノリの良さや流れるような曲構成なんてものは求めてはいない。ローテンションで寝そべりながら喋るようなあのもっさり感があるんだろうな、と。ただそれにしてもK DUBのラップが酷い。スタイルは変わってないはずだが、こんなに酷かったっけ??ただのダラ喋りと化してる。そのフロウから韻を踏む箇所なんて予想がつく上に、アトミックボムらしく曲ごとにきちんとテーマを設定したが故に、韻の内容まで予想出来てしまう。この辺のボキャブラリーの狭小化が劣化の原因か??もたもたしたラップで韻を繰り出されて、「あぁ、また小節のケツで次はこんな韻を踏むんだろうな」と気付いてしまってから、また小節終わりまであのもたついたラップが大体予想通りの韻を捻りだすのを待つ時間のなんと退屈なことか。更に「ウチの'09
」や「24-twenty four-」なんかではそのまんまのノリで間延びしたフックまで歌っちゃって、いらないお世話を焼いてくれる。彼の冗長なラップのおかげで、15曲56分のアルバムを聴き終えた後には70分超えのアルバムを聴いたくらいのどさっとした疲労感が襲ってくる。

このアルバム全体の冗長感を緩和する役目を果たしているのが、相方であるDJ OASISのユニークなラップだろう。声質に合った実に飄々としたフロウは聴いてて飽きない。抑揚がついているが故に、韻も楽しくて苦痛にならない。彼の1stソロの頃とは力量が段違い。あの頃はいかにもK DUBフォロワーだった彼だが、今ではK DUBが手本にするべき。

まぁでもDJ OASISもローテンションラップであることには変わりが無いので、どうしても生まれてしまうグダグダ感を取り払う為にJun-GMCや宇多丸、UZIといった元気いっぱいなラップを聴かせる客演陣の声は耳に新鮮に飛び込んでくる。この辺の客演選びのセンスなんかは正に正しかったと言える。

しかし批判点がもう一つ。アルバム全体を手掛けたD.O.Iのミックスだ。僕は特段彼が好きでも嫌いでもないが、このアルバムの音はないわ。物凄く平坦になったボトムにキンキンにハイファイにされたトラック。InovaderにDJ OASIS、Mr.Beats、Ben The Aceといったベテラン陣からBEAT奉行といった新進気鋭のトラックメイカーまでが音を提供しているのに、見事にほぼ全て没個性化。平坦化されたトラックに平坦なK DUBのラップが乗るアルバムを楽しめという方が無理な話だろう。

唯一UBGの良心、Di Oriが手掛けた「
シ・ョ・ク・シ・ツ」と「誰か教えて」だけがそんな改悪にも負けずに魅力を放っている。特に虚無感溢れる後者はOASISのラップも良く、このアルバムではかなり聴ける出来だろう。前述のゲスト陣が参加した曲は、アルバム通して聴いたときには新鮮味はあるが、一曲ごと取り出して評価するとやっぱりパンチは弱め。「日本人天才」はこれまたOASISのラップが間の抜けた感じでかなり良かったが。まぁ黒人天才はあくまでもイロモノとして聴くべきでしょう。嫌いじゃないけど。

そんなわけで、アトミックボムらしい、どんなテーマでも一曲丸々書けちゃう作詞能力の高さ自体は評価するが、それ以前の問題要素が大きすぎて評価を高めるまでには至らない。「
Bボーイロジィ」でのOASISのネットレビュー批判に対しては、ただ一言、「金払ったメシ屋が不味かったら不味かったと言って何が悪いの??」とだけ言っておきます。具材の詳細や料理のルーツは知らない人でも、その店の料理自体が良いのか悪いのかは(そうした部分を狙ったよほど特殊なものでもない限り)おおよそわかるものでしょう。
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ICE CITY BREAK / DAI-HARD
 

1 .LIKE A... 
2. HA-NA-BI-RA 
3. HERE I AM feat. MARS MANIE 
4. NEW WORLD ORDER feat. HOKT, 565, TWO-J
5. DIRTY ROUND feat. NORTH COAST BAD BOYZ
6. WOOOHH 〜Mr. SP〜

★★★★★★☆☆☆☆

本隊であるNORTH COAST BAD BOYZによる先の「The Mission」から余り間を置かず、2006年11月22日に発売されたDAI-HARDのソロミニアルバム。NORTH COAST BAD BOYZの中でも一人立ちできるだけのスキルを持つ数少ないラッパーだが、実際このソロ作の方が先の本隊のミニアルバム以上に聴き応えがある。ちゃんとラッパーとして一定の器量を持つことの証明だろう。

考え無しなオラオラ感だけで構成されてると予想していると、「
LIKE A...」で早速ガツンとやられた。この手のラッパーらしからぬ情緒的なトラック(ネタが聴いたことある気がするけど思い出せない…)の上での決意表明。ありがちな無根拠な自信なんてものは排除され、ストイックに志を示す姿勢が良い。続く「HA-NA-BI-RA」ではしっかりとしたストーリーテリングを披露。ここでも余計なリリックは排除し、6分近くかけてススキノで夢が散っていく少女の姿を歌う。FREE-JAYの扇情的なトラックも手伝って、ここまででDAI-HARDへの評価はある程度上がったと言える。

だがソロ作として良かったのはここまでで、この二曲が終わればあとは歌詞カードは放り投げて「雰囲気で聴く」HIPHOPの聴き方に移行して問題ない。ビッチだのギャングスタだの言葉は実は一度も出てこないが、普通に典型的なセルフボースティングものがゲストを交えて開始される。別にそれ自体は良いのだが、何故かMARS MANIEが参加してる「
HERE I AM」、これまた何故か565がいる「NEW WORLD ORDER」と、共に「隙間」を際立たせる引き算的なトラックが勢いを封殺していて勿体無い。これこそまんまNORTH COAST BAD BOYZのノリでやれば良かったのに。あとII-Jはトラックは毎度良いものを作るのに、ラップは無意味な中学英語ばかりで聴いてて退屈。

ただ本隊を引き連れての「
DIRTY ROUND」はかなり良い。明らかにサウスの影響を受けまくったS55によるダーティなベースなんかはまんまLil'Jonだが、やっぱりあのサウスもの特有の勢いがここでも生まれていて、自らよく頑張ったS55始め、各々先のミニアルバムよりずっと良い働きをしていた。

トラック選びが少し勿体無かったという思いは残るが、ソロ立ちするだけの意味は見出せる作品は出したと思う。なんか活動方向が怪しくなってる本隊の作品に下手に手を出すなら、こっちから始めてみるのもありかも。全6曲、尻上がりにテンションを上げていく構成で、ちょっと時間が空いたときにでも聴き疲れなく聴けるのも良い。
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08:42 | DAI-HARD | comments(0) | -
The Mission / North Coast Bad Boyz


1. 狩り込む夜~Bigg Buddz Boyz~ 
2. D.E.A.R...  
3. ハイドローラーズ feat.EL-REY
4. ROOF ON FIRE
5. THE MEN WE LOST  
6. DIRTY NORTH HEAVEN

★★★★★☆☆☆☆☆

北海道出身の、まぁジャケット通りそっち系のグループであるNORTH COAST BAD BOYZが2006年1月11日に発表したミニアルバム。メンバーは定かではないが、HOKT,1-KYU,DAI-HARD,DAIS,SHUに、SPOCK名義でトラックも手掛けるS55の恐らく6MCから成るようだ。彼らの1stアルバム収録の「SAPPORO KRASSIC
」は発売された時からカッコ良いと思っていたし、いわゆるウェッサイ系のアーティストが集まったコンピ「GROOVE」でも、散々なレベルの楽曲が並ぶ中、彼らの「Badboy Please」が思いの他良かったので気になって今作を買ってみた。(余談だがこのコンピ収録のGDX「I'm Back」には、クレジットは無いがZEEBRAが参加してることはあまり知られてない。たぶん。)

ただ彼らに関してもスキルは決して高いとは言い難い。この手のグループでのスキルアベレージの低さはもうある程度事前に覚悟はしているのだけれど、そういうグループに限ってやたらスロウに流してメロディアスな楽曲を作ろうとして、結果大したことないスキルを露呈させてしまうという自爆技を用いるのは何故なのか。今作でも恐らくトラックを手掛けたLil'Jによるのであろうヴォコーダーだけ良い、聴き飽きた形式的ラブソングである「
D.E.A.R...」や、タイトルの割に結局何が言いたいんだかな「THE MEN WE LOST」のようなナンバーは、先のメンバー紹介での後半3人のラップが総じて酷いことになっている。

逆にオーソドックスなフロウのDAI-HARD、通りの良い声で前掛かりにスピットする1-KYUのラップはまだまだ伸びしろを感じさせる。それからスキル自体はそれほどではないものの、存在感という意味でHOKTは流石。「
ハイドローラーズ」では一人堂々とした佇まいで曲を支えていた。

とにかく似たり寄ったりなラブソングやらなんやらを変に入れちゃうよりは何も考えずにオラオラなスタイルを貫いてくれた方が全然聴ける。その勢いに乗って、アレなスキルもそれに準じた魅力を放ってくるし。チープなホーンとのっしりしたトラックがいかにもな感じで良い「
狩り込む夜」はその路線で今作唯一成功した曲だろう。何よりこの曲名がカッコ良くて好きだが、ラップにしてもやっぱ上手い1-KYUを筆頭に好き勝手大暴れ。こういう曲の方がずっと自分達のスタイルに合ってるし、彼らを支持するリスナーもこういうのを望んでるんだろう。でも最近の作品を見ると、どうやらラブソングやらなんやらの方向性に目覚めてしまったようで……まぁ、ね…。

追記:
書き忘れてたけど、Kazuyuki Okamotoの手掛けるジャケットやブックレットの写真が良い。
滅茶苦茶エフェクトかけてメタリックな質感を醸す写真がかなり特徴的で印象に残る。
DAI-HARDのソロ作品や、買ってないHOKTのソロ作品もジャケットを見ただけで彼の手によるものであろうとわかる。
地味にNorth Coast Bad Boyz関係者の中で最も手放しちゃいけない人なのでは??
 
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09:44 | North Coast Bad Boyz | comments(0) | -
NO FOUNDATION EP / NAGAN SERVER



1.NO FOUNDATION (Track by Eccy) 
2.ZIG ZAG (Track by Mass Cut Herzegovina) 
3.more&more (Track by super smoky soul) 
4.9:53 (Track by FAKEFAM a.k.a.ナカイトモヒコ) 
5.NO FOUNDATION (Track by DJ ARCHITECT) 
6.NO FOUNDATION (Track by DJ Robonoid Remix) 
7.NO FOUNDATION (Inst) 
8.ZIG ZAG (Inst) 
9.more&more (Inst) 
10.9:53 (Inst) 
11.NO FOUNDATION (DJ ARCHITECT REMIX Inst) 
12.NO FOUNDATION (DJ Robonoid REMIX Inst) 

★★★★★☆☆☆☆☆


大阪を拠点に活動するAbnormal Bullm@から、メンバーであるNAGAN SERVERが2008年7月18日に発表したソロEP。リミックスも含めてラップ入りの曲が6曲に、丁寧に全曲のインストも収録して1050円という値段設定は中々親切だと思う。

でも残念ながら、作品の出来としてはかなり微妙というのが正直な感想。なんだろう、器用貧乏なアングラ作品を聴いた時の、あの悪くは無いが釈然としない気持ちがドロドロと残る感覚。それがあった。まぁこの感覚の原因はその多くがNAGAN SERVERのラップに起因するものだと思う。良くも悪くも無個性な韻を律儀に踏んで、通りの良い声で正統派なフロウで攻めるNAGAN SERVERのラップは今の日本のHIPHOP界では逆に貴重であるし、そのスタンダード感ゆえに他のラッパーとの組み合わせという意味ではかなり使い勝手が良い。だから彼がMonch,アンチキジョイの怪人2MCを支えなければいけなかったAbnormal Bullm@なんかは、その限りでバランスの取れたメンバー構成だな、と思う。

ただこうして客演もなしのソロ作品になるとその万能型のラップには課題の方が色濃く見えてくる。要するにソロ作品なのにラップの意識が「誰か」を支えるような立ち位置のままで、つまりは彼のラップの主張が聞こえてこない。それはそのままトラックに対して無抵抗すぎる、という批判に繋げることも出来るだろう。ネタ感を前面に押し出し、短く切った上ネタのループでいつになく前に出ようとするEccy作の「
NO FOUNDATION」ではラップが脇役扱いで遥か後方からの援護射撃しか行えていない。

余りにトラックに対して無抵抗すぎるから、「
NO FOUNDATION (DJ ARCHITECT REMIX)」で好き放題にイジられちゃったり、「ZIG ZAG」ではクルーのMass Cut Herzegovinaのスペースファンク風味の音に乗っ取られちゃったりと、対照的に自分の音を見せたくてしょうがないアングラトラックメイカー達にいいように食われちゃってる。それに対して一歩前に下がったラップをしちゃったもんだから、インストをバッチリ収録した効果もあってトラックは良くも悪くもインパクトの強いものが多い一方で、ラップが何度聴いても全く印象に残らない。唯一DJ Robonoidが「NO FOUNDATION DJ Robonoid REMIX」で自己主張を控えた音を提供するが、それもラップとトラックのどちらも、どっちが前に出るかでお見合い状態になっちゃって、結果腰が引けてしまったラップが剥き出しになるだけ。まぁもう1つハッキリ言ってしまえば、別にトラックの方も全曲特に秀でたものがあるわけじゃないんだけど。

ただ唯一「
NO FOUNDATION」での「壁あべこべ 金にあるコネ それにあれこれ やっぱこれこれ」のラインはその万能型なフロウが上手く音を乗せた箇所で、おぉっとなった、というのをせめてものフォローとして付け足しておく。とにかくもっと好き放題やっていい。これからのソロ作に関しては今回のように色んなトラックメイカーに頼るよりは、トラックメイカーは少数に限定し、彼らに強弱ついた様々なタイプの音を用意してもらってゲストも交えながらよりハングリーにラップする方が絶対良いでしょう。その点、後のコンピ「OSAKA HIPHOP INDUSTRY」の「nubia ego」で耳に残る腰の据わったフロウを見せたのは良い傾向だと思う。同じく通りの良い声、ひねくれてないフロウをもってファンク入道のパワハラファンクトラック&ダメレコの超アバウトなミックスにも負けないキャラ立ちを見せたカルデラビスタの1stのように、NAGAN SERVERもその領域に辿り着けるだけの力は潜在的に持っているはず。次頑張ってください。
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09:49 | NAGAN SERVER | comments(6) | -

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