RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
遼の最近読んだ本
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Simon Says... / SIMON



1.INTRO (S.I.M.O.N Is Back) 
2.Who Got The Next ? feat. Tomogen (DobermanInc.) 
3.The Locus -軌跡- Produced by 318 
4.Skit-interview- 
5.Knock Out 
6.SIMON SAYS 
7.Super Fly feat.Jay'ed 
8.Live On Stage 
9.Skit 
10.23区 Game Part.2 feat. Smoke=S 
11.Gooday feat. STY 
12.Runnin' feat. 4WD 
13.Jesus feat. 日の丸 240 
14.ある日突然 
15.Dream feat.Anarchy 
16.Outro - I.K.B Style

★★★★★★★☆☆☆

マス対コアの姿勢やらセルアウト叩きやら、最近ではパーソナルな部分に根差した徹底したリアル思考やら。そういった本場のHIHOPにおける精神的な部分はこれでもかというくらいみんな賛美し遵守してるのに、向こうの音楽性を受け継いで曲を作るとなぜか「向こうの猿真似!!日本独自のHIPHOPを模索すべきだ!!」と批判の嵐。スピリットは受け継いでもミュージックは受け継ぐなとでも言う理論なんですかね。そんな風潮にウンザリしつつDSだってTBHだってガンガン聴く僕にとって、このSIMONは久々の「こっち側」の有望株なわけです。( 「Skit -Interview-」で聴ける通り、SIMON自身こうした風潮には思うところがあるみたいですね。)

最近の主にサウス寄りのメインストリームトラックが大半を占めて、なんだかんだ一度聴けば忘れられなくなるSIMONのくちゃくちゃしたフロウが延々と流れる。変にリスナーの顔色を窺わず、徹底して本場志向に拘ってアルバム一枚作り上げれば、それも立派なオリジナルの貫き方。それに同調する客演陣もそっち寄りの面々で、中でも大阪D-ST組が元気良い。尼崎をやたらとレぺゼンするようになるにつれてフロウにどんどん味が出てきたTOMOGENとの「Who Got The Next?
」や、HOOKで圧倒的な存在感を放つ4WDとの「Runnin'」はボトムもガッチリ縁の下を支えた今作の核となるナンバーだ。特に「Runnin'」のトラックの雪崩みたいな崩れ具合はカッコ良い。これを始めとしてハードコアナンバーに外れはほとんどなく、かと思えば「Super Fly」、「Gooday」、「ある日突然」のようなクールダウンポイントが要所要所に配置されていたり。ラストで詰め込み型のフロウが抜群のハマり具合を見せるAnarchyとの「Dream」や、クールな回顧ナンバー「The Locus-軌跡-」も高レベルだ。Anarchyは酷評したセカンドでもこれくらいフロウが奔ってれば良かったのに。リリックの幅は決して広いとは言えなく、その面では物足りなさもあるにはあるが、SIMON自身が特別その点を重要なポイントとしていない以上、そんな批判も元々意味を為さなくなってくる。降神にダンスナンバーを求めるようなもんでしょう。

そういった点を外して考えれば、考え抜かれたアルバム構成で一枚飽きずに聴き通せて、かつ名曲と呼べるほどのものはなくとも各曲のレベルも総じて高い。彼のフロウが納豆みたいなスタイル以外にももう少し引出があればもっと面白くなるかもなぁとは思いつつも、派手ながら長く聴ける佳作です。もし音がつまらないと感じたリスナーがいたら、一度上ネタじゃなく基盤を支えてる変態ビートに耳を傾けてみるのもお勧めかも。
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09:16 | SIMON | comments(0) | -
NEWGIGANTE / KGE the shadowen



1.STAYSTONED
2.NEWGIGANTE
3.奴からのMESSAGE
4.ONE MIC feat.JBM&JAH GOD
5.LUXURY
6.NIGHT MADNESS
7.SOLDIER’Z SOUNDZ feat.MARS MANIE,JBM
8.OH MY MESSIAH feat.DJ JOMO AMBI
9.JUST WANNA CHILL feat.SMITH CN
10.FAGGET feat.B.D.the brobus,MIKRS
11.PSYCHO CARNIVAL
12.THE SHADOW KNOWS
13.STILL STREET
14.迷宮 IN feat.THE DOG(SESAME,MIKRS)


★★★★★★★★☆☆

古くはMr.Omeri「
招かざる客Remix」、近年でもB.D.とBESを完全に喰った、B.M.W.コンピでの「Over The 修羅場」など、参加する度に言葉で砲丸投げするみたいなそのフロウで圧倒的な存在感を放ってきたKGEの、正式な形では初となるアルバム。2つ上の世代のMURO、1つ上の世代のNITROの背中を追いかけ、独自にオリジナリティを追求し続けた結果、44 BLOX勢のフロウ、声質の奇異さっていうのは今の日本のシーンを見てもかなり独特だ。今作でもMARS MANIE,JBMと共に"We Are Soldier 44 Soldier"と盛大に叫ぶ「SOLDIER'Z SOUNDZ」なんて、奇天烈フロウ博覧会と化してますよ(MARS MANIEカッコ良かった)。

このKGE自身の言葉をブン投げるフロウに、44 BLOX勢も加わってればそれだけでも十分曲に色を付ける事は可能だっただろうし、それでも一定の評価を得る事は出来たはず。でも彼は一つ一つの曲を、その独自性で色付かせ、結果このアルバムは2回も通して聴けば全曲思い出せるような色彩のハッキリしたアルバムになりました。純粋に遊び心が先行した「
NEWGIGANTE」のトラックなんてドラクエ2のダンジョンのBGMですからね(参考→http://www.youtube.com/watch?v=TccQmOzSLEg&feature=PlayList&p=D0FD46E7E61DDA16&index=47)。しかもそれがかなりHIPHOPの感触にハマってて、KGEのフロウが奔る奔る。単純な威力の高さでは間違いなく今作ではこの曲が一番でしょう。また、KGE自身彼のフロウのキャラクターを理解してる風で、歪めたトラックと彼のラップを併せる事で非日常的な異常性を表現しようとしてる曲が2つ。そのうちの1つ、「NIGHT MADNESS」がテクニカルすぎてただただ不安定な感触に終始して失敗したのに対し、もう一方の「PSYCO CARNIVAL」では、少年犯罪者の心理を描いたリリックと投げやりなフロウ、気色悪いグルーヴを醸すホーンが一体となってバッチリな狂い具合。意外な程曲をキャラ立ちさせる技術が長けていて、これは絶対に2ndアルバムもこの方向で作っていくべきでしょう。可能性を感じさせる凄く面白いアルバム。

ネットの動画で見た時は何にも感じなかった「STILL STREET
」もアルバムで聴くとビックリするくらい音の広がりが出てて、セルフボースティングものに特化した中では抜群の出来。ただこの曲や仲間との曲ではほぼ予想のつくようなオレオレ感を前面に出す一方で、SMITH-C.N.との「JUST WANNA CHILL」や「OH MY MESSIAH」みたいに、その握り拳を緩めて一息つく曲ではこの辺のラッパーらしからぬ諦観めいた言葉がぽろぽろこぼれ出てきている辺りが、NITRO全盛期よりはSEEDA旋風以降に名乗り出て正解な、2009年型のラッパーであるとも言える。

ただ絶賛できない理由が少し。トラックは総じてクラシカルな手触りなんですが、全て一定の水準ではあるものの何故かボトムが脆弱なものが多いのが謎。その音にどんどんMUROと同格の匂いを漂わせ始めてるHASSY THE WANTEDのビートを、Interludeとか短尺曲(「
STAYSTONED」のことね)で使っちゃうんじゃなくもっと活かせば良かったのに!!

あと「
迷宮 IN」でのKGEのフロウがなんかすげーかわいい。あのラップ好きだ。
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13:13 | KGE | comments(2) | -
路上の太陽 / JUN-GMC
 

1.RISING SUN 
2.ええじゃないか feat.KOOZI & 烏龍,姫 
3.行きずり 
4.吾輩は猫である 
5.世のため人のため 
6.断罪 
7.青春旅行 
8.感謝 feat.三善善三,K ダブ シャイン 
9.太陽の町 

★★★★★★☆☆☆☆

ここ数年での客演におけるその手堅いライミングで一気に名を挙げてきたJUN-G。遂に届いたこのファーストミニでは注目を集めてきた韻そのものよりも幅広いトピックと実験的な音作りに重点を置き、言葉遊びだけではないソロマイカーとしての見事な立ち回りを見せてくれている。曲毎に明確な主題を打ち立てて、それが恋愛(?)であろうと政治であろうと感情先行で好き放題に目一杯叫ぶ様は単純に聴いてて気持ちが良いし、そこにこそ今作の楽しみがあるように思う。若さっていいですね。まぁそうなるとセンチメンタルな
太陽の町なんかでは矢継ぎ早に繰り出される韻が逆に煩わしくなったりする時もあったりするんだけれど。曲の雰囲気は好きなだけにもうちょっと落ち着いて聴きたかった。だがストーリーテラーぶりを見せつける「我輩は猫である」や和製パーティーチューン「ええじゃないか」では、一転してその押韻技術が「フロウにリズムを持たせる」という韻本来の役割を存分に引き出していて、緩急のついたラップが最後まで飽きずに聴かせてくれる。技巧派MCにありがちな地味でコンパクトな作品になってはいるが、裏を返せば燻し銀でストイックに技量を見せつけた作品であるのも事実。最早高みに達した感もあるおける韻の名匠、三善&K DUBとの競演も普通に良かったりするし(流石に食われまくって跡形もなくなっちゃってるけど)、まぁ挨拶代わりの作品としてはそれなりに器量を示せたんじゃないでしょうか。

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17:59 | JUN-G | comments(0) | -
DAってDA BONGZ DAモン / DA BONGZ


1.HIGH SCHOOL HIGH feat.ASIAN STAR
2.ROLLING ROLL feat.Cheif-low
3.INSTANT feat.KEITA
4.ゴロアワセ feat.B.D
5.NEWブリブリ伝説 feat.P.JOSE,BIGZ.KENWHEEL
6.FULL CONECTION feat.MARS MANIE
7.COUCH-LOCK
8.ALL ROUND PLAYER.feat KGE,MIKRIS,JBM
9.DURN BURNIN feat.DELI
10.UP IN DABONGZ
11.RETURN TO MYSELF
12.CHAMPION SOUND feat.XBS
13.CHIBA CHIBA DREAMLAND feat.MIKRIS
14.愛 SO HIGH feat ESSENCIAL
15.COUCH-LOCK2
16.B.O.B(BLACK OF BLACK) feat.KGE,MARS
MANIE,G-SPICE,JBM.GOCCI
17.RETURN TO MYSELF(SMOOTH SMOKE REMIX)

★★★★★★★☆☆☆

どうですかこのチープなジャケットにテキトーなタイトル。加えてMIX加減もテキトーなローファイ音質にゲストごちゃ混ぜ参加で荒っぽいマイクリレーの嵐。ついでに言うと内ジャケもホゲてます。いいですね、NITROと近しいBASS、JAH GODとDJ MAILMANによるDA BONGZ。このノリと勢いだけで届けられた現場直送感、最高ですよ。

DELIの諸作品で客演する度に話題を掻っ攫ってたBASSですが、あの独特なライムデリヴァリーに加えリリックの幅もユニークに広がり聴いてて飽きません。一方JAH GODのラップがどうも弱弱しく、フロウで緩急も付けれないので全くグルーヴが生まれず。マイクリレーものでは正直彼のヴァースで流れがもたつきまくって何度もヒヤヒヤしました。そんなわけで激しい力量差が感じられる2MCですが、NITRO周辺からの強力なバックアップもあって粒揃いのアルバムに。ここ数年で急激に腕を上げたHASSY THE WANTEDによる荒くれビートが気持ち良い「B.O.B(BLACK OF BLACK
」や、多人数マイクリレーでかつてないほどJBMが活きたMACKA-CHIN作の「ALL ROUND PLAYER」なんかでは若手組が現在の勢いそのままに光りまくってます。GOCCIを食っちゃうこの爆発力ってどうよ?その一方でニヤリとするネタ使いの元、ダウナーにチルった雰囲気を醸し出すスルメナンバー「DURN BURNIN」が非常に出来が良い。この曲のHOOKでいい味出してるDELI始め、NITRO勢はみんな手堅い仕事してます。そしてラストを飾る「My LAdy」使いの「RETURN TO MYSELF(SMOOTH SMOKE REMIX)」は「RETURN TO MYSEF」にシンセ一本足しただけなのに、何か変なエモさが生まれてて困る。

直送なガレージ感溢れる一枚ゆえ曲の出来のバラツき方はけっこうエゲツなくて、まったく印象に残らない曲もいくつかあったりするんだけれど、だからこその推進力をアルバムに得たのも確か。下手に小細工せず、現在の彼らの力量をそのままぶつけた一枚と言えるかと。

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10:27 | DA BONGZ | comments(0) | -
0 (ゼロ) / タイプライター
 


1.プラチナダイヤ 
2.星の数 
3.噂通り 
4.MICロ波 feat. SIMON 
5.それだけ 
6.最後には 
7.おかしな奴ら feat. BACHLOGIC 
8.間違いねぇ feat. DEN 
9.ない!! feat. STCKY, JASHWON 
10.東西南北360 feat. HABISCREAM 
11.ふざけんな 
12.誰がやばいか? feat. DAIGO, SAYTO Z 
13.今日明日明後日 
14.特殊MIC部隊 feat.RINO LATINA II, ZEEBRA, DABO

★★★★★★☆☆☆☆

日本語ラップ創成期から精力的に活動を続けるタイプライターが2008年10月8日に発売した、1st(だよね?)アルバム。トラックメイカーとして語られることの多い彼ですが、有名所では四街道ネイチャーの「惨事
」や"黒"としての活動など、ラッパーとしてのキャリアも長いんですよね。そんなわけで今回のアルバムはゲストも満遍なく配置しつつ、メインに据えているのはあくまでも自らのラップ。何の制限もなくリリックを書こうとすると今まで客演で散々披露してきたセルフボースティングに特化したものになるのは目に見えているので、アルバムとして目新しさを加えるためにも曲ごとのテーマを明確に定めて様々なトピックで攻めています。

ただそういう意味での面白みは確かにあって楽しめるんだけど、もう一歩踏み込んだリリックが欲しいところ。元々スキルフルなラップを披露するタイプじゃないので、せっかくこだわったはずのリリックにも今までどこかで聴いたフレーズが並ぶばかりでは、う〜んと首を捻るしかない。あと単純に、リリックに「マジで○○」「〜でさ」が多すぎ。前からだけど。そんなわけでどうしてもゲストが参加してる曲をサーチボタンで選びがちになります。HABと二人で和やかに「もしも…」を突き詰めていく「東西南北360
」なんかは普通に面白いと思う。他のゲスト曲に関してはこれまた可もなく不可もなくくらいなな感じでアレなんですが、大物3人が矢継ぎ早にキックしてあっという間に駆け抜ける快速チューン「特殊MIC部隊」が短めながらかなりカッコ良いのでもうなんでもいいや。

あと、タイプライターのラップには苦言を呈しましたが、インタビューによると全曲をアカイのS900とMC50で作ったらしく、トラックがこれまでよりサンプリングネタを丁寧に活かした作りになってたのでそっちに注目するともっと楽しめるかも??一昔前まで(例えばZEEBRAの「
Oh Yeah」とか)のあのカラオケみたいな安っぽい音ではなくなってるよ、というのはプラスポイントとしてきっちり書いておきます。
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10:53 | タイプライター | comments(1) | -
Art Of Smile / Smile Blossum



1.Intro 
2.万華鏡 feat. BOO 
3.兎と亀(SLOW ver.) 
4.菫 
5.砂漠 
6.言の葉 
7.枯れ葉 
8.Interlude 
9.Straight Out The Jungle (SMILE BLOSSOM ver.) feat. KN-SUN, JAB, NAJIMI & Q-ill 
10.半ズボンの少年 
11.Interlude 
12.色彩画 
13.目蓋 
14.青色コントラスト 


★★★★★★★☆☆☆


人は、情報が抽象的であればあるほどそこに意味を読み取ろうとし、具体的になるほどその努力を怠るように思う。そうであれば、目下の主流であるパーソナルな写実型リリックによってここ数年でリスナーに根付いた価値観が「いかに実体験に根付いた出来事を表現出来るかによってリアルの度数は決定される」ことなのだとしたら、笑うに笑えない。SHIKIの「言葉の裏側がわかるかな」をパンチラインとしででなく、メッセージとして受け取っている人がどれだけいたのだろうか。音楽においての歌詞とは、歌い手の価値観が、それに基づいて優先度の高い言葉たち、事象たちを音に載せたものであるはず。

そういう意味で最近の写実型のHIPHOPは、自分のバックグラウンドを包み隠さず曝け出す事で自分への理解をそこから読み取ってもらおうという、非常にリスナーを信頼した類の物だったと言える。しかしその結果、それらのリリックが「実体験に基づいてるから、イコール正真正銘のリアルだ!」なんて形で評価されているのならあまりにも気の毒だ。これらのリリックは、アーティストが体験した出来事に自己の感想を付加してそのままアウトプットしてくれるのだから、逆算的に読み取ればかなり限定的にそのアーティストの実像に迫れるはず。経験描写という有限的な資源を用いて丹念に選び取ったリリックを、そんな表面的な部分での評価で留めて置くべきではないし、ましてや機械的にリアル度測定の方程式に代入するような行為は安直過ぎる。マジで「もっと言葉の裏側」を理解しようとする努力が成されるべき(勿論僕も含めて)。 自分の半生を規格にして言葉を紡ぐ事、自分という規格を捨ててエンターテインすること。それ自体がHIPHOPとしてリアルかどうか、優れているかor劣っているかに直結するなんて、そんなアホな話ないですよ。

そんなわけでこのSmile Blossom(スミレブロッサムと読む)が、「Intro」でわざわざアルバムコンセプトを説明してくれてるのを聴くと申し訳なくさえ思えてくるんだけど、その内容が面白かった。
Smile BlossomはCLEA (MC)、Takashi (BEAT)、3422 (DJ)、qmute (FLUTE)から成る神戸のJazzy HIPHOPグループ。今作で彼らは日常にいつもと違う色付けを行うことで、曲の対象物を独自に解釈し表現した。

全編に渡りピアノの旋律が印象的なトラック群は総じて高レベルに纏められていて、その上で清浄なリリックを紡ぐCLEAのラップと交わり更に魅力を増す。BOOとの意外な相性の良さを見せ付ける「万華鏡
」や、HOOKの言葉が印象的な「枯れ葉」辺りの心が洗われるような気持ち良さは確信犯的。特に「枯れ葉」のHOOKは歌とは違う、語りとしてのメロディが非常に巧いメロディを作ってると思う。また、唯一エレクトロニカとHIPHOPビートを融合させた「Straight Out The Jungleの、強烈なマイクリレーなんかも何度もリピートしてしまう中毒的魅力を持ってます。異色のマイクリレーだが全員絶好調。この「Straight Out The Jungle」なんて普通なら流れをブチ壊すところだけど、「Interlude」でワンクッション置く事で何の違和感も無く聴き続けられる。これを始め繊細にこだわり抜いたアルバム構成は非常に凝っていて、14曲サラッと疲れず聴けてしまう。後はリリックは良いのにフロウに緩急が無いため、言葉の落とし方が多少弱く単調になってしまっているCLEAのラップが進化すれば文句なしのグループだと思う。本当気持ち良い一枚でした。

なんにせよ、アーティストの創作物をもう一度解釈し直す事。その積み重ねによって平たく言えばアーティストとインタラクティヴな交流が持てることになる。「月とミラーボール」、「兎と亀」、「光とセピア」etc…。彼らがその価値観で、対象性のあるものを交わらせた世界をどう見るか、どう解釈するかもリスナー次第。


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09:02 | Smile Blossum | comments(0) | -
The Genesis / B.D. The Brobus



1.Return Of The B
2.Poison feat.Nipps
3.Worst feat.JBM
4. 火迺要鎖
5.Bull's Eye feat.Bull Dawgs
6.Shine
7.Dirty Time
8.ダンタラ〜Tokyo Underworld〜


★★★★★★★★☆☆


頭悪そうに金・女・車、オレらスゲー!!と叫ぶか、ひたすらネクラに自分のリアルサイズを作品に投影してグチめいた悩み事相談室化するか。リスナーもアーティストも好みが二極化する中で、B.D.、そしてかつてのThe Brobusが持っていた適度なやさぐれ感っていうのは現代のシーンにおいて貴重な存在だなぁとつくづく思う。「ハードコア」、そのただ一点を射抜いてくる宇田川サウンドの血筋を引くBULLDAWGS周りの存在感は増す一方だ。

そのメンバーによる「Bull's Eye
」はその勢いがそのまま出たベースがブイブイいわしてるイカした男汁ナンバー。NITROイズムを彼らの下できっちり継承し、かつマス対コアの姿勢やファンクネスなサンプリングイズム(HASSY THE WANTEDにBIG UP!)も融合したこの辺の面々が今最も面白いことになっている。その延長線上としてMUROのホーンとベースで深みを出したトラック上でJBMも珍しくビートに乗ってくる「Worst」もあれば、まさかのNIPPS参加となる「Poison」も。NIPPSの登場(あんまり迫力は無いです、ぶっちゃけ。)以上に、こんな黒いピアノやベースの上で吼えてくれるB.D.の存在がたまらなく頼もしい。最近の若手でこういうの本当いなかったよなぁ。

B.D.のラップは巧さはあれど、終始ビートにきっちり合わせるフロウ。だからリリックが印象に残りにくかったり客演が来ると喰われやすかったりと、これからのソロ活動においてその辺りにはまだ改善の余地はあるかな、と。でもひねくれたこと思ってたら、ラストの「ダンタラ〜Tokyo Underworld〜
」で見事にノックアウトされました。なんじゃこりゃ…JASHWON製の強烈な前のめりトラックの上でB.D.が見事に一本立ち。いや〜このイケイケ感だよ、「リアルなリリック」を盾に規格内に収まっちゃう今の日本のHIPHOPに足りないのは!!もう最後に強烈な名曲が待ち構えてました。そんなわけですいません、もう文句付けようがありません。

でもCDに値段は書いといた方が良いと思うよ。税込2300円です。
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18:46 | B.D. The Brobus | comments(0) | -
俺ガレージ Organization / ダースレイダー
 


1.ORGANZM EXPRESS feat.THC CREW
2.DARKSIDE OF THE FORCE
3.「TACO社長(LIVE AT 全日本社長会議feat.太郎、YOSHI)
4.一瞬一秒をファンクしろ!ロックしろ!爆破しろ! feat.ガスケン
5.FRENCH CONNECTION
6.WHY WE BURN!? feat.GOCCI、GOUKI
7.NIGHT OF THE LIVING DEAD(腐った死体賛歌) feat.METEOR、PUNPEE / 「ORGAN SKIT」
8.MASTERPLAN feat.GRANDSLAM
9.ハネタハネラレタ feat.ラップマニアック
10.銀河系最大のテレビfeat.METEOR
11.WHO AM I?? feat.PONY、DEJI、DEFLO
12.元メジャー feat.真田人、DJオショウ
13.SOUL LADY
14.GOOD NIGHT、GOOD BYE
15.LIFE IS BEAUTIFUL feat.インダラ、環ROY、METEOR、KEN THE 390、EI-ONE、はなび、ガスケン、ATIUS、CUTE、チャカ・パーン


★★★★★★★★☆☆

アルバムが出る度にやたら派手なキャッチコピーに釣られて買って聴いてみれば、毎回彼のとっちらかった部屋を見せつけられたような感覚になったわけですが、今回も例外ではありませんでした。見事にごちゃってます。

例えばMUROのファンクイズムっていうのが「HIPHOPの上でファンクしてやるぜ!」って姿勢なのに対して、ダースのそれは極端に言ってしまえばその真逆な姿勢であることがほとんどで。「そのビートをそんなネタに合わせるの!?」みたいなカオス構成なトラックを作るもんだから変な化学反応を起こしておかしなことになる。当然そんなトラックに放り込まれるHIPHOP大好きMCズはどう対処していいかわからず、結果こちらもカオスなテンションでスピットしはじめるっていうカオススパイラル。自身のアルバムの五倍は元気溢れてるTHC CREWが拝める「ORGANZM EXPRES
」、キチガイMCズが水を得た魚の如く嬉々としてゾンビを語る「NIGHT OF THE LIVING DEAD」なんかはその最たる例。更にDEJIのフロウ巧者ぶりが冴える「WHO AM I??」にマイカ再結成でまさかの自虐ネタの「元メジャー」(真田人がほんと上手い)などとくればもう手がつけられません。

一方でビートありきで作られたトラックでダースとGOCCIそしてGOUKIがクソカッコ良くキックしてくれる大好評「WHY WE BURN?
」など、ストレートなHIPHOPもきちんと披露。まさかの"かんしゃママ"クラスの涙腺刺激チューン「GOOD NIGHT,GOOD BYE」はほんと言葉が感情を持っててグッとくるものがあります。ここから「だから人生は素晴らしい!!」と締める久々のメンバーアルバムでのポッセカット、「LIFE IS BEAUTIFUL」(細かいメンバーに突っ込んじゃダメだよ)までの流れがもう完璧。間違いなく現段階での彼のベストとなる作品。良作として名高いが悪ノリが過ぎた感もあった2ndをよりアーティスティックに昇華させた、堂々の4thアルバム完成です。
なぜ未だに燃えてるかって?聴けばイヤでもわかる。

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19:14 | ダースレイダー | comments(0) | -
Realize It's All Real / ILLBLAST



1.INTRO
2.Guerrilla6 feat.DOROC
3.STREET WALKIN feat.FRANKEN
4.NOMBE-2007
5.MAGIC STICK
6.RESTLATION
7.-Skit-
8.MYBREATH feat.RIPTRAP
9.AROUND THE HOOD
10.WE RUN THINGS feat.STEELOW and Sir-Vibe(THE8BULLET)
11.I just wanna say feat.KAKO
12.Realize it's all real


★★★★★★★★★

2008年1月4日発売。MCのS-1,SARU,Free-SK,KIG,PUSH、DJのDJ EDOから成る群馬のグループ。実はここ数年で有望な若手が数多く現われてきているが、その中で感じていたことがあった。それはPAGER、雷、NITROと受け継がれてきたHIPHOPにおける花形・多人数マイクリレーによるハードコアスタイルを継承する者の少なさ。日本的にHIPHOPを咀嚼したスタイルが明らかに追い風を受ける中で、モロメインストリームなタイプにおける有望な若手がかなり少なかったように思う。そんな中で全く事前知識無しで聴いたのがこのILLBLASTだったわけだが…いや、凄いグループに巡り合えた。NITROにも通じる頭で考えずとも右脳が直感で反応するような、そんなズドンと落ちてくる直接的なカッコ良さがこのグループにはある。MC陣のタイプも誰一人被らず、正統派あり、押韻至上主義スタイルあり、ラガティックスタイルありと実にカラフル。それでいて今まで作品をリリースしていなかったのが信じられないくらい全員スキルフル。特に一人で何度も曲を荒らしまわるS-1のあの存在感は、新人のレベルじゃないでしょう。多彩なメンバーで手掛けられたトラックもとてもインディーズ作品とは思えないくらいスタイリッシュかつ高水準で、結局出てくる感想は「とても新人の作品とは思えない」という着地点にただただ帰結してしまう。HOOKとトラックの勢いだけで鼓膜をロックする「Guerrilla6」、荒っぽく打ち鳴らされるドラムにFRANKENのクールなラップが映える「STREET WALKIN」、タイプライターらしからぬ分厚いトラックが勢いあるラップを強力に援護する「AROUND THE HOOD」など衝撃の楽曲がただただ続く。そして終盤に控えるは彼らの今作ベストの「WE RUN THINGS」と文句無しにタイトルナンバーを掲げられる「Realize It's all real」。KIGの「今はその日暮らし でも人生の中で今がクラシック」のラインはグッとくるし、苦しい現状を不満として描くのではなく、一応の是として吐き出すラップって意外に少ないので面白いと思う。成り上がっていくその先の光しか捉えてないリアル系ラップよりも、その過程に「今」を捉えてるラップの方が本人にとってもずっと意義があるはず。
アルバム全体を通してみて、やっぱりそこらのメジャー作品よりもよっぽど洗練されてます。若手の作品を聴いてて久しぶりに震えあがったアルバム。ハードコアなラップが好きなら間違いなく買いの一枚だ。1500円と値段も魅力的。全国発売はしてないので購入は下記の彼らのHPからどうぞ。最後にもう一度だけ言わせて下さい。
いや、ほんとになんで今までこの人達が騒がれてなかったの??

ILLBLAST HOMEPAGE
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=ibcgunma


追記:多分COMPASS時代に巡り合った新人のアルバムの中では最大の衝撃でした。
    COMPASS AWASRD2008で僕の年間ベストアルバムに選んだ一枚。
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12:32 | ILLBLAST | comments(0) | -
赤落 / 鬼一家



1.小名浜 / 鬼
2.甘い思い出 / 鬼
3.スタア募集 / 鬼 客演 D-EARTH
4.見えない子供見てない大人 / 鬼
5.スキット
6.ontime07 / 鬼 客演 BES
7.鬼節 / 鬼 客演 GOUKI
8.我道 / 鬼一家
9.我道 鬼がらmix / 鬼 客演 NORIKIYO, Guinesse
10.スキット
11.都心 / BLOM
12.BOIDY SNATCHER / D-EARTH
13.都貘 / K.E.I
14.シェケバデ / 鬼三家
15.アウトロ


★★★★★★☆☆☆☆

SACのアルバムやCONCREET GREENへの参加などで、一部マニアから絶大な支持を受けていた鬼。彼を中心とした鬼一家から遂に1stが到着!!…なんですが、少なくとも僕が期待していたものとは大きく異なる毛色の一枚かも。そもそも鬼のこれまでの"挨拶"や"小名浜"が名曲たる所以といえば、リリックはもちろん、基軸としては正統派なビートの上で情感たっぷりに歌う伸びやかなフロウにあったわけで。それがこのアルバムでは、キンキン響く上ネタとせわしないビートが彼の長所を見事に打ち消してくれてます。ビートに追われてせわしなくスピットする曲の多いこと多いこと…。韻の堅さもさることながら、フロウで誰なのか気付ける数少ないラッパーだっただけに、今作のこの傾向が物凄く残念。一方的な見解に終始する政治批判がやたらに多いのもマイナス。

もちろんそうしたしがらみから逃れて軽快にかっとばせた我道シリーズや、ファンクウイルス満載でお送りするGOUKIとの真っ黒変態セッション鬼節みたいにそこそこ楽しめる曲があるのも事実。直接に政治に文句を言うのではなく、東京の一人の人間から見た世界を、主体的な狭量視点でシニカルに描く都獏」(良いタイトルだ)も面白い。7分間耳がK.E.Iのラップにひたすら惹きつけられます。

とまぁ評価すべき点もありますが、やはりメインである鬼の不調が痛すぎる。やっぱりトラック選びがちょっと勿体無いなぁ。ラッパーとしての力量は申し分ないのに。今作にも収録されたクラシック、「
小名浜なんてSEEDA周辺が盛り上がってきたここ数年で最もドラマティックな詩だと今でも思ってるし。またあんな名曲をボムってくれることを期待しながら、次回作「獄窓」を待つことにします。
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21:53 | 鬼(鬼一家) | comments(2) | -

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