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1.プロローグ
2.ライミングサン feat. MAKI THE MAGIC
3.透明人間
4.言えません feat. SHINGO☆西成
5.警告
6.続ホラー話 feat.漢
7.セールスマンfeat. ERONE,HIDADDY
8.鏡
9.In The Rain feat.遊戯,勝
10.道頓堀通りストーリーfeat. 燦早
11.息子へ・・・ feat. 秋田犬どぶ六
12.Tussy Tussy Pt.2
13.エピローグ
★★★★★★★★☆☆
韻踏合組合組長がぶっ放したソロ一作目は、ほぼ全曲ストーリーテリングもので固めた一枚に。今までの、主に外仕事での楽曲を見ればこの流れもさして驚くほどのことでもないんだけれど、そうやって彼が様々な曲で多様な物語を展開してきたことによって、リスナーにとってのSatussyはそこらの一般ピーポーと同じ感覚を共有し吐き出してくれるエンターテイナーとなった。上の世代のブリンブリンな価値観との差別化を図るため、そして何より苦しい自分の感情を吐き出すために、今シーンで勢いを持つ若手の多くが身体的な立ち位置をリスナーと同目線に合わせることで「弱い自分」を示しシンパシーを得ようとするのとは対照的に、Satussyは感覚的な部分でリスナーと距離が近いことをアピールした。もちろんそれだけなら他にも同じようなことをやってるラッパーはたくさんいるわけで、そこで彼らとの差別化のためにSatussyは表現方法としてただのリリック垂れ流しではなく、ストーリーテリングという方法を多く使うようになったのだと思う。
そこで更なるキャラ立ちのために放ったクリティカルな一撃が、反則的クラシックとして名高い"Tussy,Tussy"。この曲で彼は、自分自身をもオブジェクティブに解釈しリリックをしたためることでリスナーと感覚を共有するという荒業を成し遂げる。この一曲によって、どこか遠い存在に思われがちなアーティストという偶像の破壊と、リスナーとの感覚距離を縮小すること、その二つに成功したことになる。これはダウントゥアースである事が求められがちなHIPHOPにおいては、達成必須項目とも言えるでしょう。そうなるとこのタイミングで出すソロアルバムが更にその路線を強めることは自明で、逆に言えばこれまでの彼を聴いて良い印象を持った方に対しては確実に一定以上の質を保証できるってこと。
ストーリーテリングという手法を採用している以上どうしても曲の出来にバラつきも出てくるが、その辺りは人気曲の続編がキッチリカバー。日本のHIPHOP史に残る怪曲の第二弾となる「続・ホラー話」でSatussyが語る物語は相変わらず救いようがありません。客演の漢が曲のテーマ無視していつも通りのリリックをキックしちゃってるのもご愛嬌。「In The Rain」ではシビアに攻める三人がカッコ良いし、また普通の男を主人公に仕立てて恋愛を語る「道頓堀通りストーリー」も中々切ない展開で締めてくれる。そしてラストにはこの手法を支えてくれたリスナーへのプレゼントと言わんばかりに「Tussy,Tussy Pt.2」が用意されている気の配り様。フィリピーナのエピソードが特に印象的な、前作にも劣らない一曲。唯一オレオレものとしてストレートに勝負したMakiとの「ライミングサン」もファンキーで良いし、どこにも文句付ける理由なんてないっす。