1.VALON
2.VALON-MOLD MIX-
★★★★★★★★★☆
HIPHOPという音楽を聴いている中、色んな場で感じるのがHIPHOPに対する保守的な姿勢である。やたらとこれはHIPHOPだ、あれはHIPHOPではないと蛙鳴蝉噪でムリに線引きしたがるリスナー。勿論批判されて然るべき偽者も多く蔓延るが、同時にポップだというだけで批判にさらされてきた実力派も少なくない。その最たる例がキングギドラが「公開処刑」でdisした後のRIPやKICKに対する聴き手のバッシングだろう。日本のHIPHOPの保守的で扇動され易い姿勢が一般人にも見える形で露呈した出来事であり、僕個人としては今となってはこれを恥としてみている。なんというかね、HIPHOPかどうかなんてそんなに大きな問題なのかと。HIPHOPっていうのはその枠から少し出るのも、その枠に入ってこられるのも許さない、不可侵で崇高な音楽なんですかと問いたい。勿論中途半端な姿勢で携わろうとする奴は問題外だが。もっと純粋に色んな音をHIPHOPの枠に捕われず、「音楽全般」として楽しむべきだと思う。アングラ、ハードコアというだけでHIPHOPだ、と持ち上げる輩。売れてる、キャッチーなメロディというだけであいつらはセルアウトだ、あんなのはHIPHOPじゃないと言う輩。そんな馬鹿みたいな意見には正直ウンザリだ。
前置きが長くなってしまったが、そうした中で放たれたこのシングルはまさしくHIPHOPかどうか、なんて事だけで音楽性そのものまで評価しようとする奴に送り付けたい素晴らしい一枚である。ジャンル分けする事も愚かしく思えてくるような不思議な音。構成だけ見ればILMARIのラップにSalyuの歌と、今までにもよく聴いてきたラッパー×シンガーのコラボなのだが、この独創性は革新的。ILMARIも「語り」としてのラップはあまり見せず、どちらかというと歌い上げる方に重みを置いている。元々甘い声質のためこの幻想的なトラックにも非常に適応し、RIPのILMARIとはまた違った魅力ある一面を見せてくれる。そしてILMARIと同等以上の存在感を見せ付けてくれるSalyu。今回始めて耳にしたがその鼻にかかった甘い伸びる声は天性のものを持っている。サビを中心にの仕事だが今作の鍵を握っていると言っても過言ではない、それほどまでにこの名曲において重要なファクターを担っている。
言葉で説明するのも難しい独特な空間を創りだしている名曲で、もっと話題にならなかったのが不思議なくらい。幻想的な空間でのその「癒し」のヴァイブスは空前絶後であるといえる。日本のシーンに対しての問題提起、革新性、異色性、そして圧倒的な魅力。非常に稀少な異色作品であり、かつ正統派な名曲だ。RIPはWACKだとか、あれはHIPHOPだ、あれはPOPだ、売れたからもうリアルじゃねぇとか。そんな事ばかり言って枠組みばかり気にしている輩に着払いで50枚送りつけるべき作品。