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愚者の腑 / 三善出 a.k.a.三善善三
 


1. まいりましょう~乱飛乱外 
2. 財宝 
3. 怪盗夜乃毒露 
4. ここの詩 
5. 宇宙幻想 
6. アブナイ~報告 
7. 今日もいつも同様 
8. 正直者の権兵衛さん 
9. 追想 
10. 巌 
11. 明日
 

★★★★★★★☆☆☆


ラッパ我リヤのオリジナルメンバーでもあり、年中男祭り集団の走馬党を陰で支える良き親父、三善善三が三善出(みよし いずる)と改名し放った3rdフルアルバム。2009年8月1日発売。作詞作曲演奏から録音、ミックスまで全て一人でやってのけた、ベテランによる究極の山篭りアルバムだ。

サウンドも材料はAKAIのMPC(恐らく2500)にヤマハSGにMarshall Amps、これだけ。トラックの幅を意図的に制限している(せざるを得ない制作環境だったのかも知れないが)ため、収録曲も主に2タイプに大別出来るだろう。ひとつは
乱飛乱外」を筆頭とする、ほぼ単語のみがブツ切りに曲中に配置された感覚的なもの。もうひとつは「怪盗夜乃毒露」などのように、曲中に明確な物語が設定されているもの。この2タイプが立ち代りに展開していくことで、トラックが前述の通り同一手段によるサウンドによってアルバム全体の下地を等しく平坦に保っているのに対して、リリックの内容、スタイルの変化性によって非常に気持ち悪い閉塞感が襲ってくる。

この気持ち悪さの見せ場は、間違いなく「
ここの詩」からの一連の流れだろう。上空でアンニュイに展開するシンセが比較的ポジティヴな空間を作り出す中、母の胎内から生れ落ち、家族を築き、しかし争う結果血塗られた人生を歩むことになった情景が「ここの詩」で単語レベルで描かれる。こうして人の生き様を2分弱の曲に落とし込んだ後に、モロにスペースファンクな「宇宙幻想」の音が突然耳に開ける。HOOKの言葉を借りれば「広大な脳内航海」を目指して人が抱え持つ葛藤の部分を、また単語単位で言葉を配置して抉り出す。こうして文章ではなく単語レベルの異常感が感覚的に訴えてくることによって、聴き手は左脳よりも右脳でこの作品を脳みその理性のリミッターが外れた状態で聴き続ける。

続く声ネタのみで構成された「
アブナイ」で言われるとおり、「しっかり狂っちゃって」る状態が完成する。そんな頭にはどんな選りすぐられた名文よりも、続く「報告」でのまたしてもな単語だらけで構成された社会批判の方が遥かに鮮明な情景を右脳が浮かべてくれるし、年老いた貧乏な母子の辛過ぎるルーティンな日々を描いた「今日もいつも同様」で唸る気色悪い低音シンセすら心地良く感じられてくるだろう。続くオレオレ詐欺に騙される老人を描いた「正直者の権兵衛さん」を社会批判の曲ではなく、三善の間の抜けた語りと併せてユーモラスソングとして受け取る事が出来れば、もう作り手の狙い通り。ここまでの鬱屈したサウンドと言葉の配置によって、どんな善人もイカレポンチにしちゃう最高のキチガイアルバムだ。

これ以降の後半には三善が飼い猫に哀悼の意を捧ぐ「
追想」、「ドロドロに渦巻く情念 吐く自己表現」を唯一前向きな意味で解放した、ギターが捻くれずにちゃんと尖ってる「」を経て、未来への期待と同等の不安を抱えながら歩く三善の本音が毀れ出る「明日」と、聴き手の脳みそを弄繰り回すのではなく三善本人の情景が描かれ、奇天烈と言われる三善の作品中でも最もアブナい方向に振れたアルバムは幕を降ろす。

1st「三善的大魔境」のような、純粋な(あれでも一般的なHIPHOPとしては変だったが)ラップアルバムを求めるのであり、ラップアルバムとしての視点でしか評価しないつもりなら、どんな三善ファンでも今作は買うべきではないだろう。ハッキリ言ってラップがフロウ、スキル、押韻という意味でキレてる曲は皆無だし、そもそもラップとして成立していない曲すらある。そうした意味で、ウチが日本のHIPHOPをレビューするブログである以上、その視点からは★は3つ4つといった所に落ち着かせるのが正しいのだろう。

しかしHIPHOPという括りに入れなかった場合、この野生的なファンク感や脳髄までキチガイウイルスに犯されるようなトリップ感はかなり評価すべき点があるのも確かだ。我こそはと思う捻くれ野郎共こそ挑戦して、どうせ見事に打ち負かされるだろうから、この中盤に代表される歪濁な音世界に飲まれて明日からの生活もままならないくらい脳構造を弄られれば良い。声の録音環境が宅録らしくかなり安っぽかったり、やっぱりラップアルバムとして楽しみたいという気持ちも正直あったが、作品としては「おればむ」以上に刺激的な目的地を目指した怪作と言える。これこそオリジナルじゃねーの??
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17:55 | 三善善三 | comments(0) | -
鉄拳外伝 / 三善善三


1.怒号二〇〇一
2.鉄拳〜其の参 feat.Mine神-Hold
3.夕陽談義
4.激論!!日本列島 feat.Indemoral, Ark from Backgammon
5.鉄拳〜其の伍の前だから四? feat.Mine神-Hold
6.鉄拳〜其の伍(後) feat.Mine神-Hold


★★★★★★★★☆☆

6曲入り、うちラップのある曲は4曲、更に「鉄拳〜其の参」は前に発売した1stアルバムに収録。熱心なファンにとっては実質3曲で、それで1890円もするんだからちょっとなぁと思ったけど、現在廃盤だからこれから買う方は中古だろうしあんまり関係ないか。値段の事を抜きにして見れば良く出来たミニアルバムです。まぁ更に言っちゃえば「激論!!日本列島」以外の残りの2曲もコンピに収録されたりしてるから、いよいよもってやりきれないんだけれど。
走馬党と言えば意外とチルソングの出来が総じて良くて、2006年発売のポッセアルバムに収録された「夜と朝の間」なんかはもっと騒がれていいと思ってるんだけど、今作も激しい怒号が飛び交う中で唯一まったり流す「夕陽談義」が素敵。この他の2曲はもう走馬党の皆さんお怒りのようで、正座して聴かないとぶん殴られそうな勢いです。「激論!!日本列島」ではIndemoralとArkを迎え、四人でいいたい放題。客演陣の豪華さの割にそこまで図抜けた曲ではないけど、それぞれのMCがそれなりの仕事ぶりを見せてます。特にSkippさんは社会派ソングになると性格が一変し、必ず「引きこもってるオタク」を標的に数々の暴言を吐く事でファンの間では恐れられてるお方。この曲でもあの歌フロウでサラッと「ゴキブリ」呼ばわりしちゃったり、いつも朗らかなだけに怖いです。「鉄拳〜其の伍(後)」もシリーズ中最も聴き易く、三善さんのヴァースの踏み方がとんでもない事になってます。聴いてからのお楽しみ。
何度も言うように、収録曲が他のアルバムにもポンポン収録されてるもんだから影の薄いミニアルバムですが、01年の発売当時からすれば、多少高い値段を我慢して買っても満足出来る完成度となってます。ジャケもイカしてて、走馬党が最も勢いついてた時期であった事を改めて証明してくれる作品。
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16:11 | 三善善三 | comments(0) | -
逆マイナスイオン / 三善/善三

1.逆マイナスイオン
2.そのやり方


※i Tunes store限定

★★★★☆☆☆☆☆☆


ちょ、ちょっと三善さん落ち着いて…。あくまでスピンオフ的に繰り出したと思っていた2ndアルバム「おればむ」以降、どうしてしまったのか。取っつき辛さ3割増、迫力4割減の昭和歌謡フロウの勢い未だ衰えず。タイトル曲はエレクトロニカルトラックにあくまでもHIPHOPなビートを組み込んだ音が今までの彼の方向とは全く別次元で、興味深いものはある。が、それはあくまでも姿勢としての話であって、しょっぱすぎるイントロでいきなり曲の出来が予想できてしまう。何度聴き込んでもどうしようもないくらい印象に残りません。従来のファンとしてはむしろ「そのやり方」の方が安心して聴けるのかな。恐らく自身の演奏によるギターにドラムの、REALSTYLAや1stソロで何度も見てきた安全牌構成。……のはずがこちらも微妙。こもった鳴りのドラム一つあれば楽曲をどうにでも支配できるのが走馬党の強みだけど、ここまで薄いとやっぱり落ち着いちゃったフロウの影響が大きいのだろう。結局「「そのやり方」のシビアなメッセージの中の既視感ありありな連続押韻に走馬党の匂いを感じ取るくらいしか楽しみ方がなく、次の作品への不安感煽られまくり。たぶんかなりやりたいようにやって出来た作品なんだろうけど、方向性はともかく今のフロウ、そして単純な楽曲のレベルからリスナーのハートを放しまくりです。早急な改善を切に願ってます。
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01:56 | 三善善三 | comments(2) | trackbacks(0)
三善的大魔境 / 三善善三




1.招待状
2.口撃開始
3.鉄拳〜其の参feat.MINE神-HOLD
4.闇
5.言葉の麻薬
6.言語現象(謎の押韻狂人)
7.問題提起
8.味な旅
9.此の星の悲鳴
10.韻道
11.愛の内容feat.壱
12.爆奏
13.悪夢
14.嘘八百feat.MICADELIC,KM-MARKIT,DBINSKI,INDEMORAL,BACKGAMMON
15.感情論
16.卒倒しそうになるまで続行



★★★★★★★☆☆☆




非常に奇怪な作品。自身が影響を受けたギターサウンドを積極的に使った激しく自己主張し脳内を暴れまわるトラック群。この頃特有のガナリを含んだ低い声で韻を畳み掛けるように踏みまくるラップスタイルと、それが生み出す不気味な佇まい。そしてそのラップから放たれる言葉達は豊富な語彙を武器に、全てこのラップスタイルを媒体にしたまま恋愛から社会風刺まで様々なテーマについてのリリックを作り語る。その全てがアンバランスで綺麗に纏まった印象など微塵も受けず、完全にアルバムの雰囲気がカオス化している。例えるなら薬剤師が調合した薬というより魔女が煮えたぎる釜の中に様々なゲテ物を突っ込んで作り出した秘薬といったところ。雰囲気だけで生理的に受け付けない人が出るまでのアクは漂っていないが、ただでさえその濃さ故に聴き手を選ぶ走馬党作品。そのクルーの特色とはまた別次元のところで多少聴き手を選ぶ事になっている。実際僕もこの独特の感触に慣れるまで少し時間がかかった。しかしこれに慣れて同化してしまいさえすればこのアルバムが一気に楽しめるようになり、これが三善善三の魅力を十分に詰め込んだ力作だという事がわかると思う。韻踏み職人としての技量を見せてくれる「言語現象(謎の押韻狂人)」や「鉄拳〜其の参」辺りのカッコ良さもさることながら、今作はメッセージ性溢れる曲がとにかく熱い。「此の星の悲鳴」、「愛の内容」、「卒倒しそうになるまで続行」など良い曲を挙げるとキリがないが、その中でも一際強烈なメッセージを発している「感情論」を特に推したい。重犯罪者に対する僕も思ったことのある考えを怒りのメーターぶっちぎり状態で吼える三善善三が熱すぎる。強烈な憤怒。リリック内容に対してタイトルも秀逸だ。そして避けて通れないのがこのアルバム全体のカオスが生み出したある意味伝説になりつつある怪曲「嘘八百」だろう。8分超えの長さを感じさせない超ド級に楽しいマイクリレー。個人的にはマイカの二人とARKの嘘がドツボ。単純にマイクリレーとしても非常に聴き応えある仕上がりだ。このとんでもない化学反応を是非味わって欲しい。ラストのDBINSKIだけ趣旨を履き違えてるのもご愛嬌。アルバム全体に漂う不気味な空気とそれと相反するように明るさを纏ったリリック内容。全体にいい感じに壊れた感が漂っていて、このバランス良いアンバランス感がこのアルバムに唯一無二の強烈な個性を植えつけている。三善善三という男が好きな方は勿論、そうでない方も挑戦してみる価値は十分にある作品だろう。
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18:53 | 三善善三 | comments(2) | trackbacks(0)
おればむ / 三善善三



1.さんさんさん
2.じんせいげきじょう
3.いっしょうがいおんがくあいこう
4.すきぶしぶぎ
5.しょうわ
6.しょうわぶるうす
7.りょじょう
8.いいよかくたす
9.ひとりごと
10.なりわい
11.わふう 客演者 JUN-G、壱
12.よれよれのひ
13.よるとあさのあいだ
14.あちいまち
15.わなげ
16.みち
17.あうとろ




★★★★★★★☆☆☆




走馬党最年長、町田が誇る押韻職人三善善三の2ndアルバム。全編に流れる昭和歌謡の音。聴く前は数曲挟んである程度だと思っていたのでこれには度肝を抜かれた。むしろこれはHIPHOPから限りなく離れている。三善善三のラップもラップとよべるかも微妙なラインで、ほぼ「歌っている」といった方が適当であると思われる。ただしだからといって楽しめないのか、と言われるともちろんそんな事はない。総じてその生音トラックのレベルは高く、全ての音楽ファンを唸らせてくれることうけあい。更に音が一貫して昭和歌謡風のため「これがこんな曲で、あれがあんな曲」と認識するよりもアルバム通して一曲を構成しているかのような統一感だ。新しい音楽を求めている方は「さんさんさん」開始直後にその新しいカッコ良さに心酔できる事だろう。
しかし全ての三善ファン、ひいてはHIPHOPファンがこの異様なまでに新しい試みの音楽性を受け入れられるかどうかはもちろん疑問が残る。そんなファンをも納得させてくれるのが唯一客演を迎えた「わふう 客演者 JUN-G、壱」だろう。トラックこそ一聴すると他曲と大差ないが、アルバム中最もHIPHOPテイストが強くなっている。特に先のDJ OASISの「ウォーターワールド」で三善と共演し話題を独占したJUN-Gには圧巻。GDXのアルバムに参加している時とこれほどまでに変わっているとは。全ヴァース韻で固めたラップには衝撃を受ける事必至。
音楽性が非常に新しいためいかんせん評価を☆で単純に表したりしにくい作品。そのため潜在能力は未知数であり、聴く人によっては永遠のクラシックにさえ成り得る可能性がある作品と言えるだろう。その逆の場合も然り。新しい音を求めている方は是非聴いてみる事を薦める。三善善三の影響を受けてきた音楽をそのまま自己の作品に投影した、彼の渾身を籠めた問題作だ。
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17:31 | 三善善三 | comments(3) | trackbacks(0)

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