1.開放
2.本物feat.Q
3.生命〜声明
4.R.S.
5.異変
6.汚染
7.職人feat.BACK GAMMON
8.余談
9.絶叫
10.一掃(ILLBUM ver.)
11.現状
12.志人feat.NOROY
13.真男feat.山田マン
14.無限
★★★★★★★★★☆
ラッパ我リヤ創設時のメンバーであるMr.RR(≒Q)と三善善三によるユニット、リアルスタイラの1stアルバム。客演は当時の走馬党員を総動員し、それ以外の客演は一切なし。そしてこの曲名の数々を見るだけで、この曲がいかにも走馬党「らしい」アルバムである事が窺い知れる。初聴でのとっつき辛さや一枚通しての聴きにくさは相変わらず。それでも聴き込むほどにどんどん耳に馴染んできていつの間にかすっかり魅了されている。そんな今までに何度も味わってきた走馬党作品特有の中毒的な魅力が最も発揮されているアルバムがこれであると僕は信じて疑わない。(我リヤの5thアルバムが双璧を成すようになったが)
随所に感じる漢の匂い。勿論二人のこのアルバムでの絶対的なカッコ良さがそれを匂わせるのだが、この作品についてはもうMr.RRより更にキレにキレている三善善三に賞賛を送りたい。この時のフロウと声質、韻のスゴさはもう誰にも到達できないレベルに達している。「汚染」や「余談」のヴァースなんて全て韻で構成されてるようなもので、圧倒される事間違いなし。
三善善三がキレまくってる一方でMr.RRもこの1999年辺りは全盛時。独特すぎるリズムでこちらのテンポを狂わしてくるフロウは唯一無二。そんな二人での曲でお薦めなのは「R.S.」。これこそ走馬党にしか出来ない曲。盛り上がり?派手なトラック?耳障り良いラップ?そんなもんクソ喰らえな日本語ラップが詰まってます。シンプルなビートにやる気があるのか無いんだかわからないHOOK、それに日本語を駆使した韻。それだけでこんな曲が作れるんですよ。アルバムのスペシャルサンクスで家族の名前まで無理に英語にしてるような一部の西系猿真似アーティストはコレ聴いて反省すべし。他にもLIBROの無機質なトラックと二人の社会へのメッセージが物悲しさを感じさせる「現状」など日本人だからこそ良さがわかる曲が随所にちりばめられている。
二人の力でこれだけの曲が作れるのだから、ここに最盛期の走馬党員が加わったとなればもうとてつもない事になるのは必然である。現INDEMORALのNOROYが参加した「志人」はコミカルな押韻合戦が楽しく、このアルバムでは最も聴き易い曲。歌うようなフロウが心地良いSKIPPと三善善三が一歩抜きん出ている印象。そしてここまでダラダラと書いてきた中で最も多くの人に聴いて貰いたいのが、やはり「真男feat.山田マン」。三善ビートの真骨頂である鋭さと重厚さが同居した骨まで響いてきそうなとんでもない迫力のトラックに合わせて走馬党代表格三人のラップが展開される。意外な正統派フロウで魅せてくれる山田マン。押韻、フロウ、どれをとっても今までの作品で最高レベルの仕事をしていると個人的に思っている三善善三。漢臭く真摯なメッセージを深く突き刺してくるMr.RR。どの面を見ても文句のつけようのない名曲を送り出してくれた。
はっきり言って聴き易さはない。韻踏合組合のようなフロウの面白さを加えた韻で魅せるタイプの方が万人受けは間違いなく良いだろう。しかし、それを身をもって感じてきながら自身のスタイルを変える事無くここまで貫き通せる彼らは只者ではない。とことん「日本語ラップ」を愛し、自らの方向性の正しさを信じて突き進んだ彼らの産んだ傑作のひとつがこのアルバムだ。もっと多大な評価を受けるべき作品。