1.Starting 11
2.Antenna of the Empire
3.Under the Sun
4.Station to Station feat.ロボ宙
5.Swing '75
6.ライツカメラアクション
7.壊れかけの… feat.bird
8.ON AIR
9.Hey! Hey! Alright / スチャダラパー+木村カエラ
10.ベカラズ
11.Good Old Future(album version)
★★★★★★★★☆☆
スチャダラパーの通産11枚目となるアルバム。9th Sense以降どんどんハウス傾倒していくシンコの音に対して、BOSEとANIが遂に言葉を載せ慣れてきた感あり。これまでの彼らの社会派なリリックは常にシニカルな言葉で吐き出されていましたが、今作ではそうしたお笑い要素も無くひたすら批判的な言葉がずる剥けで出てきます。「
Under The Sunも表面的なおちゃらけ方なわけだし。こうしたリリックは全てバビロンに搾取、振り回される一般人という構図を以って共通性を持ってるんだけど、このリリックをエイベックス所属の彼らが吐き出す事で逆に説得力を増す事になってます。かつての遊び心の下で行っていたシニカルなリリックは、こうした状況の下で非常に現代的に姿を変える事に。ここに遊び心どころか焦燥感、悲壮感を感じたのは僕だけじゃないはず。初っ端の「
Antenna of the Empire」から終盤の「
ON AIR」までほとんどの曲がこうした側面を持っていて、各曲の出来に多少バラつきはあるものの、アルバムに込めたメッセージ性としては十分その役割を果たしていると思う。
そしてこうした欝展開を続けてきたからこそ、シングルカット時には不評だった「
Hey! Hey! Alright」が非常に重要な意義を持ってくるんですよ。頭空っぽにJ-Popのアイコン、木村カエラと希望を歌い続ける。アルバムを通しで聴いた時に、この曲にシングルの時とは全く違う魅力を感じた方は少なくないでしょう。「救われる」んですよ、この曲に。ここにこそ自称音楽ファンが敬遠しがちな空っぽJ-Popが、HIPHOPとは別に存在し続けるべき必要性が示されてるわけです。コンセプトを忘れさせないためにこの次にまた軽くジャブ程度の「
ベカラズ」こそ挟むものの、ラストの「
Good Old Future」で希望を見せて締める。この一連の流れにこそ彼らの強いメッセージが集約されてます。およそ文脈とは関係のない、唯一社会でなく個人の行動意識に焦点を当てた「
ライツカメラアクション」が白眉である事と併せて、スチャダラパーの希望は「このようなアルバムを出さなくても良い状況」ではないでしょうか。バビロンなんてファックだ!!しか叫ばない自称社会派ラッパー共に見せつけてやりたい、真のメッセージアルバム。シンコの音の変化が個人的に苦手ではあったけれど、出来そのものを客観的に見れば傑作の出来栄え。