2011.04.09 Saturday
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1.Sound of Joy 2.Tokion Jazz 3.路上 feat. Funky Mic 4.RHYME WIRE feat. TAKATSUKI & HISOMI-TNP 5.Inverse feat. MC TETSU 6.Tokyo Avantgarde feat. SD JUNKSTA(Bron-K,K-NERO,TKC) 7.Gold Moon feat. TAKATSUKI 8.カーバイト倉庫 (dedicated to 宮沢賢治) 9.NOAH feat. Spinna B-ill 10.3rd Eye feat. Mika ARISAKA 11.ビリジアン 12.LAW 13.2005
★★★★★★★☆☆☆
東京の路上を音楽に変える詩人・Q-ILLの2ndアルバム。1stアルバムでタッグを組んだ生バンド・diy Tokionの参加は5曲に留め、外部のトラックメイカーを多く起用した作品だ。2005年4月27日発売。
"真実"と"詩人"のシンボルとされた"羽毛"を表す言葉に由来するQ-ILLという名。JAZZを基調とした響きの良い音。Q-ILLの豊富な語彙で適度に感覚化された言葉達。こうした表面だけなぞれば、今やそこら中に溢れる下らない「洒落たJAZZY HIPHOP」なんて枠に気の毒ながら追い込まれてしまうのかもしれないが、このアルバムはどうしようもなく純HIPHOP的なカウンター精神を内包した作品だ。
Q-ILLが上手く言葉を切り貼りしたリリックは東京を舞台に描かれ、その裏に隠れているのは一貫して東京を中心としたバビロンへの反抗心だ。ピアノの旋律とムーディなビートだけでは判断出来ない、明らかな不満が渦巻く。
その思いの丈を割とオープンに吐き出した「Tokyo Avantgarade」が尋常じゃない迫力を備えているのは半ば当然の事だ。巨大組織東京への第一突撃部隊として仲間に加えたのはSD JUNKSTA。最早全てに毒づくSD JUNKSTAの面々がQ-ILLを完全に食っている。中でも荒っぽくマイクを回すカッコ良いHOOKから間髪を入れず苛立ちを吐き出すBron-Kは良かった。ダークなトラックによって、逆にそのひょうきんな声に怪奇さを備えたTKCもそのコントラストが良く映えている。
抜群に出来が良いこの曲を軸に、客演を一気に固めた中盤がアルバムの核。「Tokyo Avantgarde」に先んずる、群馬から遂にその姿を現したHisomi-TNPがTakatsukiビートを誰よりも乗りこなす「Rhyme Wire」と、MC TETSUの技量よりも感情が先走るラップが熱い「Inverse」も何年も付き合っていける耐久度の高い楽曲だろう。
惜しむらくはdiy Tokionの生音がグルーヴィな「Gold Moon」以外ではさして成果を残せていない事か。Q-ILLの葛藤をぶつけるにはあのアンビエントなサウンドは温か過ぎた。
全体としてその美的センスで彩られた裏に、一人の人間が時代を抉り街に傷を抉られる痛みを投影した作品。ある意味そこらのヨーヨーチェケラッチョなマッチョラッパーよりもあからさまに、HIPHOPをレペゼンしたストリート感が溢れるのはそのためだ。ラストに控える、Q-ILLが痺れを切らしてもうストレートにアンチバビロンした反戦歌「2005」は決してそこらのラッパーがアルバムに適当に突っ込んでるそれではない。このアルバムに蓄積した苦しむ言葉達を誰の耳にもわかる形に変換した、自分を主人公にした心の叫びだ。最初に「Tokion Jazz」で彼が言った"近所の森だけでも残すぞ"は笑えるパンチラインなんかじゃない。
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