2011.04.09 Saturday
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1.Fancy Free 2.夢の中で 3.カーニバル 4.A Quiet Sound ★★★★★★★☆☆☆
Small Circle of Friendsはヴォーカル担当の武藤サツキ、ラップ・ヴォーカル・プログラミング担当の東 里起の二人組(この後8thアルバム「SPECIAL」を発表する頃からDJ RIGOも加入)。日本のHIPHOPにおけるメインストリームからは離れた場所で、1992年から現在まで息の長い活動を続けている。今作「Quiet Neighbor」は、そんな彼らが1stアルバム「WONDER」に先駆けて発表した2ndシングル。1995年8月25日発売。
東 里起のラップは、節回しに関してはこの頃はかなり他の日本のHIPHOPと似通っている。自然なイントネーションで日本語を日本語のまま音に乗せる技術を得るのはもう少し先の話。だが語彙の豊富さ、そのリリックの無理の無さは既にその魅力を放ち始めている。倒置を用いずに自然な文章で言葉を紡ぐスタイルは当時のLBにも確認出来るが、Small Circle of Friendsの音楽はLBのようなおちゃらけ感も、それとのギャップを活かして攻める笑顔の裏で見せる批判姿勢も存在しない。もっと品行方正で、まっすぐに正しい大人のリリック。
その豊かな表情を演出出来るリリックを活かして製作されたこの作品は、現実の葛藤から雲を見つめて空想することで逃れようとする「Fancy Free」、まどろみの中で自分のやりたい事(善悪問わず)に気付きそれを実現していく「夢の中で」、更に深く夢の世界へ進んだその先で「君」と出会い、遂に見つけたユートピアで楽しめるだけ楽しむ「カーニバル」、夢から醒め、さっきよりは少し晴れやかな顔でまた現実に戻っていく「A Quiet Sound」で終わる、と見事な起承転結で纏められている。これだけの構成力を持つ人間は日本のHIPHOPに何人いるのか。
このシングル限定収録で、この作品において大事な橋渡し役を務める「夢の中で」は特に良く出来ている。夢うつつなサウンドがえらく幻想的で、ローズピアノの柔らかな旋律が凄く心地よい。
全4曲、夢想を旅する21分間。シングルではあるが、これだけで流れを築きひとつの作品として成立させる手腕は見事。初めて耳にしたアルバム「一日中」がピンと来なかったので敬遠しがちだったが、これは良かった。こうした音楽家然としたアーティストがHIPHOPにはもっともっといても良い。"静かな隣人"のその中では様々な世界がめくるめいている。そのことを芸術的に4曲で描ききった良作。
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