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JUST / 田我流



1.INTO / Pro. COMMAND 
2.ICE CITY / Pro. ZIPSIES 
3.ずんぶいSaturday Night feat. STILLICHIMIYA / Pro. おみゆきChannel 
4.坂 / Pro. YOUNG-G 
5.SKIT / Pro. YOUNG-G 
6.BACK IN DA DAY / Pro. BIGBEN 
7.墓場のDigger feat. BIGBEN / Pro. BIGBEN 
8.ラーメン feat. MMM / Pro. Flammable 
9.国道20号999 / Pro. BIGBEN 
10.明けない夜 / Pro. YOUNG-G 
11.約束 / Pro. BIGBEN 
12.138 / Pro. おみゆきChannel 
13.JUST / Pro. NO.1 おみゆきBAND


★★★★★★★☆☆☆


山梨県一宮町(現在は周辺6市区町村と合併し笛吹市となり消滅)を拠点に活動するグループ・stillichimiyaから田我流の1stソロアルバム。

人間味のある、だとか等身大の、だとか、そうした形容詞が頭につくHIPHOPはどうしてもその内向きさゆえにカタルシスが欠乏しがちで、僕なんかは何で音楽でも人の悩みに付きあわなあかんねんとか思ったりするわけだけれど、このアルバムはその系譜にある作品ながらも好きだったりする。都会の空気に汚染されたようなやさぐれ感やその瞳が目の前ではなくアメリカを見ているような見栄っ張り精神が溢れるHIPHOPに比べると、どちらかというと中高生の頃に聴いたポップパンクのような健康的な気持ちよさの漂うアルバムだ。

メジャーなアーティストの作品と比べてファンダメンタルからどうしようもなく劣っている点は幾らでもある。明らかにSEEDA影響下のラップを聴かせる田我流はSEEDAと比べるとまだまだ至らないし、音質はどうしようもなく低音が出ていなくて安っぽいし、トラックも正直大半が有り合わせで作ったようなチープさだ。だがこうしたハンデも作風のありようでどうにでも出来る。「地元」が絡まない曲が一曲も無いこのアルバムの中で、一連の音の不備は逆に何度も自分の街に文句を付ける田我流のラップにどうしようもないリアリティを与えている。

初々しい喜びが曲から零れ落ちる「
INTRO」の後に「ICE CITY」で地元に思いっきり絶望したり、「明けない夜」で今度は自分の現状にどうしようもない焦りを感じた後に「約束」で昔の仲間を思って前を向いたり、田我流のラップは地元への不満と、地元で得たかけがえの無い財産の間で葛藤する。そんな自分を創ってくれた地元に結局やっぱりどうしようもない愛を捧げる「138」なんかもあって、そんなアーティストとして不安定な姿が物凄く人間臭くて良い。これはレコ屋が全然ない、ラーメン屋の親父がすぐ不機嫌になっちゃう、地方営業の食い物にされちゃう、そんなこの街で培われてきた音と彼のラップで語られなければ意味が無いし、SEEDAにだってZEEBRAにだってこんなアルバムは作れない。地方根性と成り上がりイズムと、それに逆流する現状への不満が今この時期彼らにしかこの作品を作らせなかった。最高のB級アルバムだと思う。

前述した後ろ向きな楽曲群や、チープさがチープさでしかない(それもまた全体を俯瞰してみるとユニークに思えるんだけれど)、「
ラーメン」や「ずんぶいSaturday Night」みたいなくだらない曲もごろごろ収録されてるからこそ、「約束」や「JUST」で晴れやかな顔を見せてくれるときは本当にこっちまで清々しい気分になれる。

曲単位で一番良く出来たのはフルートループのトラックが味わい深くて、グレイヴディガズな田我流とBIG BENのラップがいやらしくがっつく「
墓場のDigger」なんだけど、こうして一曲抜き出すよりはアルバムを頭から聴いて、地元仲間ラップ全てを歌い全てを飲み込んだ上で「JUST」で田我流が前を向く、その過程と結論にこそこのアルバムの最大の旨味が詰まっている。ラブソングよりも綺麗なHIPHOPを頂きました、ごちそうさまです。
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10:51 | 田我流 | comments(4) | -

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