2011.04.09 Saturday
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1.地球人? 2.被害妄想 3.地球人?(Instrumental) 4.被害妄想(Instrumental) 5.Freestyle〜地球人?[Live] ★★★★★★★★★☆
MCU、VOICE、DJ TATSUTAの2MC1DJで成るRadical Freaksの、恐らく彼ら名義では唯一となる作品。1997年4月1日発売。ちなみに名作コンピレーション「悪名」収録の「地下室」で話題を集めた彼らだが、音源デビュー以前にはT-1(現TAICHIMASTER)も所属していたらしい。
「悪名」で様々なアーティスト達が断片を持ち寄り収斂したそのエネルギーが、この作品で結晶化した。断言しよう。このシングルに収録された2曲が、日本のHIPHOPが90年代に突き進んだホラーコアブームの到達点だ。「せんれい」なんかに代表される、初期我リヤの頭のネジが外れたようなコミカルさも中々に奇異だったが、それすら上回るこの2曲の気持ち悪さはもうそうそうあるもんじゃない。
しかもこれらのトラックを手掛けたのがあのDJ TATSUTAという事で更に驚いた。彼のソロアルバムで見せたあの引き算的な打ち込みトラックは薄っぺらいし耳に痛いしでかなり苦手だったのだけれど、現在のFGのイメージからは対極にあるような、こんな音も作れたのか。アンダーグラウンドにあるHIPHOPの音が一般大衆の目にも届くよう、陽のあたる場所に掬い上げて仕上げるのがFGのおおよその傾向だとすると、この作品でのTATSUTAの音は、ホラーコアの極限を目指してHIPHOPの音を更に深海へ落とし込んだような仕上がり。奇怪に動き回り耳を混乱させる上ネタと同じくらい、下で唸る作り込まれたボトムが、ラインを変えSEを挟んでは胃を鷲掴みにしようとしてくる。レビューのためにヘッドホンでずっと聴いてると本当に気分が悪くなってきた。音だけでも落ちるところまで落ちるので、これから正念場な受験生はくれぐれも聴かないように。
そこにこの二人のラップが乗るわけだが、その巧みなラップをまた暗黒面に使っちゃってるから更に曲は混沌としてくる。VOICEはまだいいとして、「地下室」でもそうだったが、MCUのドン引きしてもらってナンボみたいなホラーなラップは何なんだ。これでもかと声を震わせニヤニヤしたそのラップは、現在の彼のロウなスタイルとは似ても似つかない。あのクールなラッパーがこんなお化け屋敷ラップをしているなんて。家族連れのMCUに出くわしたリスナーが最も気を付けなければならない事は、間違っても彼の家族の前で「Radical Freaksの大ファンでした!!」と言わない事だろう。
曲の傾向としては2曲とも似たものではあるが、特に「地球人?」は宇宙人が地球に到着する様を自らの登場に見立てて描いているという、書いてる方が訳わからなくなりそうな設定なのだが、この気持ち悪いラップとトラックにそのシチュエーションがハマってしまうからよりタチが悪い。僕はTATSUTAが、MCUがこの作品以降どうなるかわかっている2009年の世界でこの作品を聴いているわけだからまだいいけれど、リアルタイムで聴いてた方にこの作品は本当に怖かったんじゃないだろうか。このグループは、日本のHIPHOPはこれからどうなってしまうのか。そんなモヤモヤした気持ちだけを抱かせて去っていくこの作品での彼らの存在のおどろおどろしさは、誤解を恐れずに言えば、身近な所に狂気を持った犯罪者が潜んでいる恐怖感にも似た、どうやっても払拭できないようなねっとりとした不安感を当時の日本のHIPHOPに植え付けたのではないだろうか(勿論彼らの目指した音楽的に、これは褒め言葉だ)。LITTLEとは別の意味で、KICKがあって本当に良かったね。御世辞にも上手いとは言えないMCののちE.S.G.「U.F.O」始め定番ネタに「地球人?」のラップを乗せていく「Freestyle〜地球人?[Live]」は、逆にそのお粗末さ故に彼らもまともな人間だったことを確認出来て安心するばかり。
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