2011.04.09 Saturday
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1.INTRO - pro. MANCHEESE 2.THE 親不孝 BREATH - pro. MANCHEESE 3.NO RETURN RIOT - pro. DJ MOTORA 4.ONE MIC - pro. DJ SEIYA 5.SKIT - pro. MANCHEESE 6.舌打ち feat. REIDAM - pro. CHAF 7.SOUL TRAVEL - pro. FUNK入道 8.WRITERZ HIGH - pro. DJ INO-UP 9.ムジナ - pro. DJ 441 DA FINGER 10.SKIT - pro. MANCHEESE 11.REPRESENT - pro. MANCHEESE 12.夜明け feat. 智大 - pro. 圭角パビリオン 13.みちしるべ - pro. AIR EI-ONE ★★★★★★★☆☆☆
2009年9月2日発売。福岡は親不孝から名乗りを上げた18歳の新人、POCKYの1stソロアルバム。ダメレコから1000円シリーズとしての登場だ。このシリーズはこれまでの作品で築き上げた信頼感とこの価格を武器に、新人が作品を発表する場としてはこの上ないステージだなぁ。こういうフックアップはどんどん積極的にしていってほしい。
そして、まずレビューに入る前にひとつ。このアルバムの評価に際して、「18歳にしては」「18歳でこれだけ出来れば」といった類の言葉は用いずに進めていこう。本人も「舌打ち」で言及しているように、どんな年齢だろうが他のベテランラッパーや有名ラッパーと対等の場で評価されるためにこの全国区に出てきたわけで、そこにこのような副詞を用いて評価をゆるめてやるためのユース枠を作るなんて、誰よりPOCKY本人が不本意だろう。「18歳だから」こそ出来た作風等については勿論その都度評価していくが、スキルやアルバムの全体評にあたっては年齢を理由に評価を甘くすることは全くない事を始めに断っておく。
アルバムの内容に目を移すと、非常にHIPHOPマナーに乗っ取った、教科書的な作品だ。これがエクスクルーシヴ・プロデューサーを務めるダースレイダーの指示によるものかはわからないが、等間隔で2曲SKITを配置し、前半が新人としての勢いをそのままコンパイルしたような決意表明、中盤では地域色を強めてより具体的なテーマをユニークさも交えて描いていく。そして後半ではその地域色を別視点から哀愁感を強めて描いたもので、「これから」を見据える方向にシフトしてアルバムは幕を閉じる。
POCKYのラップもその構成をソツ無く乗りこなせるだけの振り幅をもった、的確なライムデリバリーに背伸びしないリリックを組み合わせたスタンダードなタイプだ。こうして目指されたアルバムの構成方法とその目的をミクロ(楽曲毎でのフィット感)、マクロ(アルバム全体の統一性)単位で支えるのが、恐らくは地元仲間で固めたのであろうトラックメイカー陣。一言で言えば、揃いも揃ってみんな90年代の米HIPHOPを彷彿させるあの音の使い手達だ。ただ軽く苦言を呈すと、Funk入道とAIR EI-ONEを除いても7名のトラックメイカーが参加(つまりSKIT、INTROを除けば全曲違うトラックメイカーが担当)しながらアルバムとしての纏まりが確保出来て「しまっている」のは、このアルバムの「次」を見据えるならば、個々人の特徴の出し方として考えるべき所は多いのでは。
ただこのアルバムの話として言えば非常にうまく統一されているのは間違いない事実。いかにもSoul Assassinsな音でアルバムの冒頭を黒く染め上げるMANCHEESE作の「THE 親不孝 BREATH」とDJ MOTORA作の「NO RETURN RIOT」、正統派東海岸なDJ SEIYA作「ONE MIC」で構成される前半は特に良い。後ろ向きな匂いがするダウナーなトラックをPOCKYが青臭いリリックと正攻法なフロウで乗りこなしていて、そのコントラストが非常に映えていてカッコ良い。ここから中盤、REIDAMのPOCKY以上に勢いに任せたラップが耳に楽しい「舌打ち」まではかなり楽しめる。ただそこからは正攻法、正攻法とひたすらまっすぐに突き進むPOCKYのラップに疲れてきてしまうのが正直なところ。楽しげにファンクに振れるトラックも凡庸で面白みが無い。
特に「WRITERZ HIGH」と「ムジナ」は、地域色が強い上にそのメッセージに共感出来ないためダレる。中でも「WRITERZ HIGH」ではグラフィティを歌っていて、タグを消すバビロンにファックサインを出しているが、もう、なんていうかね。みんなが平等平穏な状態で使えるのが公共の場なわけで、それを自分達の主張(というか実質落書き)で汚して割れ窓理論を実践しちゃってる人間が文句言うなと。それはバビロンじゃなく公共の安全を守る「政府」としてごく正当な行為だ。クソつまんねータグを街中、人様の家にブチ撒けるな。せめてまず自分の家の壁で練習しろよ。もし自分の壁にスプレーをブチ撒けることに何らかの拒絶感、汚したくないという気持ちを感じたならば、その気持ちを他の人の家や場にも向けろ。僕がHIPHOP文化とやらがわかってないと言われるならば、それはそれでいい。そんなところにHIPHOPの本質が眠っているなら、僕はそれを掘りだす事より他人の気持ちを考える事の出来る人間になることを優先する。自分達だけが満足する為にある世界じゃねーんだよ。 ただ勿論B-BOY PARKのグラフィティコーナーみたいなのは大歓迎です。めっちゃ楽しむ。
話が逸れてしまったが、こうしてダレる中盤を抜けての後半はまた中々良い。がしかしやはりトラック、ラップ共に互いを活かしきった前半3曲に比べるとやはり小粒感は否めない。 ラップ、トラック、ライム、テーマ、どれも非常に優等生然としたHIPHOPアルバムを聴いたからか、大きな不満は特に無い。がしかし同時にどれもあと一歩キャラクターが確立していないため、手放しで褒められる出来ではない事も確か。次回作へ向けて本人がこの作品で手応えよりも反省点を多く見出しているならば、次回作はより大きくなって帰ってくる。それを期待出来るだけの力量、サポート陣を得ているラッパーであるのは確かだ。
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