RATID -Realize A Thing In The Depths-

新年度からは下ネタを言わない。
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JET STREAM SALMON / DEJI


1.Intro(track by DJ H!ROKi from 33records,Black Mont Blanc)
2.Jet Stream Salmon(track by DEJI)
3.Attaking Dharma(track by PUNPEE from P.S.G)
4.Black Mont Blanc feat.Black Mont Blanc -死男、TANNY THE VALLEY、家康、EGU- from 33records. track by SIRCHIN)
5.それもまた一興 feat.METEOR from Da.Me.Records. track by Y.O.G from SamuraiTroops)
6.胴田貫(track by DJ H!ROKi from 33records,Black Mont Blanc)
7.草野球のキャッチャー(track by SIRCHIN)
8.刺身のツマ feat.ZOE from SamuraiTroops. track by DJ H!ROKi from 33records,Black Mont Blanc)
9.skit(track by DJ H!ROKi from 33records,Black Mont Blanc)
10.なんばしょっとか(track by SIRCHIN)
11.THE FACT(track by DJ SHIBAKI from buki)
12.プロジェクト X(track by DEJI)
13.下衆 who's back(track by SIRCHIN)
14.ジャンクフードヘドロ2009 feat.KEN THE 390、METEOR(Da.Me.Records). track by SIRCHIN)

★★★★★★★☆☆☆

DEJIの3rdアルバム。2009年6月3日発売。

独特なイントネーションで下町イズム溢れる言葉をムリムリ捻り出すスタイルは、派手でこそないものの、日本のラップスタイルの中でも相変わらず独自の立ち位置を占めている。老後の人生観を綴る「草野球のキャッチャー」の設定や、「それもまた一興」での "最近私いいことない 取りとめの無い話 トリートメント変えたくらいが関の山" なんてラインは、彼ならではのセンスだろう。

前作では多すぎる客演と入り乱れる様がただのお祭り騒ぎと化し、1stアルバムにあったワビサビだとかなんだとかを無かったことにしてしまっていたが、本作は2ndと1stの間のバランスを上手く取ったと言えるのではないだろうか。正真正銘のポッセカット「Black Mont Blanc」だって良い出来だ。DEJIがクッションとなって他のアクの強いメンツを活かしている。

それでもやはりキモはソロ曲。正直に言うと中盤まではそこまで秀でた楽曲があるわけでもないのだが、今回は後半からが本番だ。特に早めのピッチで飛ばす「なんばしよっとか」は面白い。 "父ちゃん母ちゃん 手塩にかけて育てた息子がラッパー..." なんてリリックは、日本におけるラッパーの立ち位置を、残酷にもよくわかっていると思う。1st収録の「握りこぶしざえもん」も同じところに源泉があると思うが、このあたりの自己とHIPHOPに対する価値付けに、DEJIの強味がある。とは言え、この価値観がHIPHOPのある点での核心を付いている限り日本のHIPHOPはこうした言葉を笑い飛ばせない状況が続くわけで、そうなるとDEJIのHIPHOPが「リアル」でなくなるときこそ、HIPHOPというジャンルに希望が生まれるという推測が成り立つのはなんとも皮肉だ。日本のHIPHOPがこんなだからこそ一部の琴線に触れるDEJIのユーモア溢れる言葉は、だからこそ痛い。

そんなわけで、「なんばしよっとか」からの、日の目を浴びずとも必死に仕事をこなし生きるしかない「プロジェクトX」、下衆のための下衆チューン「下衆who's back」の流れは泣ける。そして最後に控えるのは、それでも仲間たちと前を向いて、 "経済的に勝つことが必須 地に足つけ生きる人にピース" と締める「ジャンクフードヘドロ2009」だ。名曲。

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エンドルフィン / アルファ


1.39DMP
2.ALIEN24(&DJ TASAKA)
3.アクティマン
4.エレキテル
5.イーアル雀拳 feat.宇多丸/from RHYMESTER(&DJ TASAKA)
6.ボンマーチ
7.DO DIG DO!!
8.センチメンタルラブ feat.LITTLE/from KICK THE CAN CREW
9.HITORI GOD
10.怪ウツ君 feat.DJ TATSUTA
11.エクスタシー温泉(&DJ TASAKA)
12.BLUN

★★★★★★★☆☆☆

アルファの1stフルアルバム。2002年11月13日発売。

メジャーフィールドに進出したことで独特の音楽性に聴きやすさがブレンドされ、現在のアルファのスタイルを確立した一枚。彼らの音楽的特徴の多くを担うのはやはりDJ SUZUKIが中心となって手掛けるそのトラックだ。電子音楽全般をセンス良く取り入れたその音には程好いポップさが加味され、その手のHIPHOPに免疫の無いリスナーはもちろん、HIPHOP自体に免疫の無い一般層すら飲み込んでしまった。

トラックが差し込まれ引き抜かれ、とにかく変化球を全部投げ尽くすようなスタイルは、ワンループの美学に染まったヘッズほど新鮮に響くのではないだろうか。冒頭の「39DMP」や「ALIEN24」、そしてエクスタシー温泉にしろ、TSUBOIとWADAのリリックこそファニーで一般受けする向きを忘れていないが、サウンド面では既存のHIPHOPに挑戦しているようにしか聴こえない。

ひたすら音遊びを披露するノイジーなリピーティション型ラップの「エレキテル」も、DJ SUZUKIがメインに立って欲求のままに作った曲は楽しいという、後の作品にも通ずる法則の源流と言えるだろう。

ただ、曲によってはただ凡庸なポップに陥る一歩手前で何とか踏み留まっているような曲もある。特に宇多丸との「イーアル雀拳」、LITTLEとの「センチメンタルラブ」なんかはやりすぎだと思う。聴きやすいが曲の寿命が非常に短く、すぐに飽きる類のそれだ。その辺りの音楽的なバランスでは、やはり3rd『Alien』が至高だろう。しかしインディーズ時代の雑多な趣向を纏め直し、現在までの独自路線への足がかりとなった作品として、重要な意味を持つアルバムではある。


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15:17 | アルファ | comments(0) | -
Science Nonfiction / RHYMESCIENTIST


1.R指定
2.BE LIT TO DA WESTERN
3.BROTHER feat.KURA (浪速FLAVOR)
4.STUDIO PLAYAZ
5.MONKEY NA BUSINESS
6.SPACE KEN (N’n THE HOUSE)
7.HI SPEED EATER ~21bounce MIX~

★★★★★☆☆☆☆☆

RHYMESCIENTISTは大阪を中心に活動を続けるHIPHOPバンド。ジャズ、ファンクを中心に多様なジャンルを混ぜ合わせたその音楽性を、彼らは「HIPBOP」と呼んでいる。本作は彼らが2001年8月22日に発売した1stミニアルバム。当時のメンバーはTARMAN(MC)、DAI-Z-LOW(DJ)、MSA(ギター)、BOOKDEN(ベース)、仁(ドラム)。

帯に踊るROY Z(Cypress Hillの一員として日本ツアーに帯同していたのか?)の言葉や冒頭のシャウトから「R指定」までの流れにも見て取れるように、そのサウンドには2nd〜4th辺りのCypress Hillの影響が色濃く感じられる。もちろんそれで全ての説明がつくほど単純な音楽ではなく、バンド形態のHIPHOPらしく、雑食な嗜好を反映した変化球が7曲続く作品だ。

特にモロにSoul Assassinスタイルの「R指定」、続く「BE LIT TO DA WESTERN」なんかは、実際に向こうのアーティストにも決して劣らないくらいの迫力はある。その後もジャズピアノが踊ったりドラムンベースが疾走したりと、彼らのフレキシブルな音楽性を十分に感じさせてくれる。

惜しむらくは、まだ未完成なTARMANのラップ。遥か先を行くサウンドを遠くに見詰めながら、前時代的なフロウに終始する。このラップスタイルは関西勢には決して珍しいことではない。しかし彼らの場合、その泥臭さが90'sの匂い満点のトラックと上手く調和する多くのアーティストと異なり、あまりにも古めかしいラップと、右へ左へ様々な音楽を追い求めるサウンドとの相性が悪すぎる。

とは言え、日本のHIPHOPには欠乏しがちな様々なパーツを持っているバンドなだけに、これから進む方向性によっては、かなり面白いアーティストになる可能性もあった。…のだが、メジャーに移籍して出した2nd『Essentially』からは、見事に悪流に呑まれて有象無象のポップ型ミクスチャーバンドのようになってしまった。それでもこの『Essentially』には韻シストのBASIが参加した「Everyday Everytime Everynight」など、まだいくらか聴ける曲はあったのだけれど、それ以降はいよいよもって薄味の音楽を発信するようになってしまう。
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23:45 | RHYMESCIENTIST | comments(4) | -
lil farm / 韻シスト


1.In Da Farm
2.In The Control Room
3.Set Off The Speaker
4.Formal Pride

★★★★★★☆☆☆☆

MCのFunky MicとサックスのKenjiが脱退した韻シストが、4thアルバム『Big Farm』発売に先駆け、彼らがお世話になっているという福岡、沖縄、京都、大阪の6店舗にて1430枚限定で配布した無料ミニアルバム。2011年2月28日配布開始。

Set Off The Speaker」以外はインストであり、あくまでもきたる新作に向けての前哨戦。『Big Farm』に向けてまずは小農場を案内する、ヘッズに対するオリエンテーションといったところだ。

ベースとギターが仲良しな「In Da Farm」が力強い音圧と共に流れてくると、メンバーの入脱退を繰り返しながらも、やっぱり韻シストの強さは不動だと実感する。 "こんなHIPHOP お前好きか?" と問いかけながらまったり流す「Set Off The Speaker」にも、彼らの変わらぬ姿勢が見て取れて安心する。揺らがないベースの部分での円熟味を感じさせながらも、 "過激なバンド いつも挑戦" と歌うように、本作からはベースのSHYOUがボーカルで参加することもあるようだ。実際この曲でもその歌声でオーガニックな味付けを施しており、彼らのスタイルのうち、特に「」や「Relax Oneself」のような、スロウな曲において幅が広がりそうだ。バンドの力量、2MCのラップ共に相変わらず揺るぎ無いので、こうしたほんのスパイスを混ぜ込みながら自身のスタイルを求道してくれれば、新作も期待出来るものになりそうだ。
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12:58 | 韻シスト | comments(0) | -
RHYME RHYTHM / MOTOY


1.イントロ
2.ゲーム
3.改タクシャ
4.現実逃避 feat.Yes, Ido. a.k.a. IDOX
5.ウマシカ
6.Funky feat.ダースレイダー
7.回転男
8.ドウケ
9.パイの実  feat.DJ HIMUKI,DJ YASUO, DJ MATSUEDA
10.DAY-Disco Boy Rally mix- feat.漢, O2, ILLMURA
11.D.H. feat.DJ TAKADA, Sierra
12.LIFE feat.DJ TONK
13.アウトロ-太華の太鼓 at connection-

★★★★★★☆☆☆☆

MOTOYの1stフルアルバム。2004年6月18日発売。

彼の作品で最も出来が良いのが本作。これ以外の作品では、当時としても古典的なフロウに比してテクニカルな音を求めた結果、ラップとトラックの水と油具合が酷く、失敗した薄味の創作料理を食わされている気分になった。その両者の距離が最も縮まり、かつ一定程度うまく噛み合わさっているのがこのアルバムだろう。特に「GAME」は、両者が均衡を保つぎりぎりのところで上手くバランスを保った佳曲だと言える。ただしこの曲はPVが爆笑してしまうほど酷く、曲の渋みを抹殺してしまっているのだけれど。

数か所でミックスしたトラック(1曲はなんとCHI3 CHEEEがミックス)も総じて綺麗に低音が際立つ処理が施されている。これにより、芯のあるビートがMOTOYのストレートなラップをガッチリ絡め取っている。この良さは、酷評した前作のEP、後の2ndアルバムにはなかったものだ。特にミックス処理の酷さが際立ったEPとは見違えるほど良くなっている。さすがにあのミックスはまずいと思ったのだろうか…。

ただ、作品の組み立て方は3作品で最も上手く出来ているものの、相変わらずほとんどが無味乾燥な出来にしかならない、華の無さは変わらない。前述の「GAME」と、続く「改タクシャ」を除けば、ラップの局所的な巧さ以上に、その声の軽さ、ライムのつまらなさが圧倒的に上回ってしまっている。音選びのセンスなどは当時として非常に特殊なものがあったと推測されるが、肝心のラッパーとしての売りがほとんどと言って良いほど無いのはやはり痛い。結局は「他のアルバムよりは良い」というパッシヴな評価に落ち付けよう。

MOTOYのラップは、テーマにしてもリリックにしても「アングラ」の看板を背負って立つほど独自の世界を見せる方向に舵を切ってはいない。アプローチが面白いのは人生の光と影を、DJ TONKのトラックを変化させることで描こうとした「LIFE」くらいだが、結局リリックもつまらないし、せっかくの場面転換にも、ラップがパッとしなさすぎて耳が惹き付けられない。そうした、ラップにおけるそのメーターの振り方の中途半端具合に物足りなさを感じる一方、トラックについては、そのラップに合わせる形で中道を希求すると、こうして上手い具合に体裁が整った。結局、ブッ飛んだアングラを突き詰めることが出来ずに中庸なHIPHOPを打ち出すことしか許されなかったのが不憫ではある。

なお、原曲のトラックがうるさすぎてラップが何も聴こえなかった「DAY」のリミックスは、一転して抜きのグルーヴでリコンストしたぶん、少なくともラップが主役になった。しかし変化球を狙い過ぎてまた外した感があり、全体のクオリティとしては大差ない。


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01:01 | MOTOY | comments(0) | -
Xカリバー / 剣桃太郎


1.其の壱
2.HYDRO PANIC
3.WINS MAN with WINS MAN
4.LAST OF SAMURAI feat.K5R, 般若, ASHRA
5.仁義
6.夜桜
7.さからうな!
8.Xカリバー
9.実況トニー
10.死刑執行0:01
11.三味線
12.野良犬 サパ ピルカ セタ feat.SHINNOSK8,神,響言奏
13.ウロヤケヌマ feat.GK MARYAN, D.O.
14.違えんだよ feat.RINO LATINA II
15.ブリブリテーマソングpt.III feat.DEN, TWIGY

★★★★★☆☆☆☆☆

妄走族の一員・剣桃太郎のソロデビューアルバム。2007年8月8日発売。

妄走族の中では般若に次ぐパンチライナーとして光っていた彼だが、初のソロとなる本作は存外キツイ。グループの中では8分の1だけヴァースを埋めれば良かったものが、1曲丸々リリックを書くとなると、それまで覆い隠されていた作詞能力の低さが露わになってしまった。 "学習しとけ ノートはジャポニカ" "100%ジュース絞り出し おかわり"(「HYDRO PANIC」)など、パンチラインと紙一重でダサい方に傾いた言葉達がそこら中に無残に転がる。ある意味般若よりも攻撃に特化したそのスタイルが作中で一貫するため、余計に言葉の振り幅も限定され、たまに外れ値で変な言葉が転がり出てくるだけといった感じ。

腕の見せどころであるDISソング「さからうな!」はスタイルと抜群の親和性を見せたぶんまだ聴けるが、リリックが聴けるようになっても、今度はフロウの貧弱さが気になるようになる。オンビートで単調な乗せ方しか出来ないラップを延々と聴いていると、「LAST OF SAMURAI」で縦横無尽にビートを駆け巡る般若との差は、フロウに関しても大きいのかもしれないと思った。

ソロ曲で一定水準以上に達したのは「Xカリバー」くらいなんじゃないかとすら思うが(「実況トニー」を曲として扱ってよいならあれが一番だが。あれは面白かった)、この曲にしろどの曲にしろ、HOOKが壊滅的に酷い。このせいで、せっかくソロ曲での損失分を取り返せるはずのマイクリレーものですら、HOOKが回ってくる度にリスナーをげんなりさせることになる。

結局、山積みになった課題がありありと見えたソロデビューとなってしまった。妄走族に特有なギャングスタとは違う日本のチンピラフレイヴァをクルーで最も受け継いだ彼。それを活かそうとした「夜桜」、「三味線」も本作では目も当てられないクオリティでしかないが、事実持っているパーツ自体は面白いのだから、方向性は変えずにきっちりソロマイカーとして成長してくれれば、と思う。唯一「ブリブリテーマソングpt.III」でダウナーに決めるTWIGYには期待して良い。


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12:44 | 剣桃太郎 | comments(2) | -
24 HOUR KARATE SCHOOL CARREC REMIX / CARREC


1.ZEEBRA,SIMON,D.O.,SHINGO☆西成 - 24 Bars To Kill feat.DJ TY-KOH(CARREC REMIX) 
2.GAZZILA - MY CITY (CARREC REMIX) 
3.SEEDA - GO (CARREC REMIX) 
4.SMITH-CN - FOLLOW ME(CARREC REMIX) 
5.バラガキ&ZEUS - RUNNIN' (CARREC REMIX) 
6.韻踏合組合 - AMEMURAN DREAM(CARREC REMIX) 
7.TETRAD THE GANG OF FOUR - JAPANESE TOKKOTAI BANCHO (CARREC REMIX) 
8.ISSUGI & S.L.A.C.K. - HEY TAXI(CARREC REMIX) 
9.ANARCHY,LA BONO,RYUZO - ROC RATED(CARREC REMIX) 
10.RYUZO & B.I.G.JOE - HEAVEN'S DOOR(CARREC REMIX) 
11.KGE THE SHADOWMEN - REMEMBER SHADOWMEN(CARREC REMIX) 
12.Anarchy, Rino Latina II, 漢 & Maccho - 24 Bars To Kill(CARREC REMIX) 
13.般若 - 日本人ラッパー総選挙(CARREC REMIX) 
14.TWIGY & DABO - MCW "MUCHA CUCHA WARU" (CARREC REMIX) 

★★★★★★★★☆☆

早くからMICROPHONE PAGER「改正開始'08」のリミックスなどをYoutubeに投稿し、韻踏合組合「前人未踏」のリミックスなどで着実に名を挙げてきたトラックメイカー・CARREC(石川RAP委員会)。本作は、昨年発表された話題作『24 HOUR KARATE SCHOOL』収録曲全てを彼がリミックスしたもの。これらのリミックスは彼のbandcampYoutubeで聴くことが出来る。

和モノをサンプリングしてのトラックメイクにこだわる彼の音は、その信条の通り、日本の昭和歌謡(と、本来は一緒くたに括るべきではないのだろうが)が持つドラマチックで扇情的な音を存分に活かしたもので、日本人の耳によく馴染む。SKI BETZの、いかにもアメリカンな音に絡め取られたラッパー達をリコンストするCARRECの救出活動は、その信念のもとに行われる。

異次元空間でふわふわと漂っていたS.L.A.C.K.とISSUGIのラップをモダンでハイカラな昭和の日本風景の中に連れ込んだ「HEY TAXI(CARREC REMIX)」や、各人の代表曲を差し込みつつ、激情的なサウンドながら無機質だった原曲をより「やりすぎでない」ハードコア感に連れ戻した「24 Bars To Kill(CARREC REMIX)」あたりは、オリジナルより好きな方も多いのではないだろうか。「韻踏のフィールドはこっちだろうよ!!」と言わんばかりに祭囃子調の音でドンドコ盛り上げに盛り上げる「AMEMURAN DREAM(CARREC REMIX)」や、これぞCARREC節といった声ネタ使いの「RUNNIN' (CARREC REMIX)」も、確実に原曲にはない面白さがある。

報酬や名声から離れたところで、ただ愛情のみを行動原理に作り上げた手の込んだ本作にあえて何か申し述べるならば、各曲の方向性が似通っている点だろうか。トラックメイクの際の信条がハッキリしており、それぞれの曲の統制が取れているからこそ、ひとつひとつ取り出してみると凄く面白いのだけれど、全体を俯瞰すると、ややそれぞれの色調が重なっていることに気付いてしまう。

しかし、それを裏返せば、和モノネタで勝負する姿勢は貫きつつ、初期のように必要に応じて洋モノでの曲も差し込んでいけば、バラエティもオリジナリティも兼ね備えたとんでもない作品が出来るだろうということだ。その独自のサウンドは既にtwitterなどで話題になっているが、アルバムを一枚丸ごとリミックスした本作で、より多くのリスナーのもとに彼の音が届くことを願う。間違いなく今のしてきているトラックメイカーの一人。冒頭の「24 Bars To Kill REMIX (CARREC REMIX)」を聴けば、彼の持つ可能性が理解出来るだろう。D.O.とSHINGO西成のヴァースなんて、原曲の何倍カッコ良く仕上がっていることか!!
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01:29 | CARREC | comments(0) | -
RHYME RHYTHM #2 / MOTOY


1.intro
2.夜中
3.1→6 feat.嶋,S.G.
4.Love MONEY feat.S.G.,YU-key
5.くび
6.Yo! My God
7.junk thing
8.OutinSIDAZ feat.嶋
9.Y.F.S. feat.クリ
10.盲目2005 feat.amigo
11.INSP
12.Beat generation feat.Signal the I.T.
13.Yesterday once more

★★★★★☆☆☆☆☆

前作の発表から一年半のスパンで届いたMOTOYの2ndアルバム。2005年12月2日発売。

彼が一躍脚光を浴びた2000年のB-BOY PARKから、何の進歩もなし。MIC BANKやRUFF RHYMERSと共に、「フリースタイルでのし上がってきたラッパーはアルバムが微妙」という法則の先駆者と言えるのかもしれない。

脚韻にフロウが引っ張られる彼のラップスタイル自体が悪いというわけではない。しかし、90年代に隆盛を極めたそのやり方が2011年現在から見れば古臭いということを抜きにしても、その引っ張っている韻が貧弱に過ぎるし、リズムのずらし方が中途半端過ぎて、凄く窮屈で性急に聴こえる。最初は、その点のリズムへのアプローチで典型的な脚韻スタイルを脱却しようとしたのかもしれないとも思った。しかしよく聴くと、細かな韻を詰め込み過ぎてそれに引きずられているだけという、韻先行型のラップにおけるデメリットを最大限に引き出しているだけだった。それこそ典型的な脚韻に終始する客演勢のラップの方がまだ落ち着いて聴いていられるくらいだ。

本作の直前に1stアルバムをリリースしたばかりのHIMUKI制作の「夜中」、「くび」あたりの音は、変則的なドラムパターンと上手く踊れるラッパーに渡せば凄く面白そうなものが出来そうなだけに勿体ない。というか、本作のHIMUKIの音には、MOTOYのラップスタイルが一番相性の悪いタイプだと思うのだけれど…。

ラップについては結局一時が万事その調子で、テーマやリリックにも目新しい何かが潜んでいるわけではない。なにかある点に関して突出したものを備えているわけでもなく、凄く無味乾燥でつまらないアルバムだ。

唯一MOTOYが所属するクルー・JRによるポッセカット「Beat Generation」だけは、一昔前のラップスタイルにトラックが歩調を合わせたことで、2005年という時代を無視して聴けばそれなりに勢いもあって良い。やっぱり、変化球な音ばかり好まずに正攻法のトラックでやればもう少しそのラップが力強くなるんじゃないかと思うばかり。




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TOKYO TRIBE / ZINGI


1.INTRO feat.Ganxta DX
2.闇夜鴉
3.TOKYO TRIBE
4.2XXX prod.DJ KRUSH
5.馬鹿はどっちだ
6.DAMAGE
7.我道烈伝
8.RHYME遊戯 feat.DANTE, SKIPP (NOROY),OCHI, LITTLE (音戯),POLEE-K,IQ,DEPAS, SPPITE (FUSION CORE),BIG-JOE, WATAMAN (RAPPAZ ROCK)
9.空空理
10.不良少年
11.OUTRO

★★★★★★★★★

ZINGIは、リーダーのMC仁義、凱(GUY)、MAR、DOHZI-T(童子-T)、DJ BASS、GM KAZからなるHIPHOPグループ。1989年にECD主宰のイベント"Check Your Mike"で優勝し、渋谷クアトロでHIPHOP勢として初のワンマンライブを成し遂げるなどの実績を持つ。本作は3rdアルバム『』でロックに寄った方向性を再びHIPHOPに戻し、それによりDOHZI-Tもカムバックした、満を持しての4thアルバム。1996年2月21日発売。

ようやく形を成してきた日本のHIPHOPにおいて、いわゆる「アンダーグラウンド型」のHIPHOPの中でも、更にディープなところに潜むのが本作だ。ジャケットや参加メンツを見て、このアルバムに現在まで続く「不良のためのHIPHOP」の源泉を感じたなら、その感覚は正しい。MICROPHONE PAGERがHIPHOPの基礎的価値観を説き、キングギドラがHIPHOPを使ってラップを社会的価値観へ投入したとするなら、ZINGIは不良のための、HIPHOPの持つ最もダークな側面を提示して見せたと言える(この当時彼ら以外にこのスタンスを採っていたのはGANG-Oくらい?)。

そのスタンスの集大成と言える本作では、自らを鴉に例え街の裏側を覗かせる「闇夜鴉」、狂ったオルガンがリスナーを戻れなくさせる「TOKYO TRIBE」など、名曲のほとんどでKAZUO ISHIJIMAが中心となってトラックを手掛ける。更にこの世界観に当時のDJ KRUSHがマッチするのは自明であり、DOHZI-Tが今よりもずっと「自分で練った」ライムを吐き出す、将来を見据えた「2XXXX」での音は、DJ KRUSHの名曲「KEMURI」なんかの頃に近い質感があると思う。

中でも6分に渡って「オレスタイル」を貫くことを延々と宣誓する「我道列伝」は紛うこと無き名曲だ。後述のように、あえて欠点を挙げるならフロウの弱さがことに目立つ本作だが、他の曲と異なりビートの跳ねを重視してラップとがっぷり組んだこの曲は、今でも素直にラップそのものを楽しめるクオリティだ。特にMC仁義とMARのヴァースは、曲名を引用して締め括るベタな手法ではあるのだけれど、良い。

"馬鹿ばっか" とHOOKで連呼するだけの「馬鹿はどっちだ」のような、今に比べると洗練されていない曲の作り方であったり(それでもカッコ良いのだけれど)、この頃のHIPHOP全体の傾向としてフロウが全員似たり寄ったりのため、差別化のためにややキャラ芸のような寸劇、声色の変化に逃げる部分があったりと、今聴くとそのスタイルの目的に反してやや滑稽に聞こえる部分がないでもない。しかし、現代のHIPHOPに馴染んだ耳を持つ人間としてそうした要素を差し引いても、本作はなお名作の水準にある。「知る人ぞ知る」レベルの位置に留まってはならない一枚。一時の「不良型のHIPHOP=ダサい」の定式が崩され、MSCやSD JUNKSTAなど、このタイプのHIPHOPも多様化してきた。そうしたアーティストからHIPHOPに入ったリスナーも、本作で彼らの原点を確認してみてはどうだろう。

ちなみに彼ら主宰のイベントと同名の「RHYME遊戯」は、フリースタイルでマイクを回すゆる〜い出来なので、クオリティについて期待は禁物。NOROY(現INDEMORAL)やFUSION CORE、LITTLE、BIG-JOE、OCHI(FRAGRANCE)といった面々の若かりし日の声が聴けるのは貴重だが、まぁ名盤たる本作のオマケ程度ということで。


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06:24 | ZINGI | comments(4) | -
WONDER WHEEL / サイプレス上野とロベルト吉野


1.INTRO
2.サ上とロ吉
3.WONDER WHEEL
4.START LINE feat.RYUZO
5.TIME IZ ONLY IT THAT CAME
6.担当者不在
7.契り外伝pt.II
8.IT'S MY TURN feat.竹内朋康
9.ハヴァブレイク
10.FEEL LIKE DANCE feat.SLY MONGOOSE
11.MASTERSオブお家芸 feat.宇多丸
12.PRINCE OF YOKOHAMA
13.ボンクラの唄p.k.a僕等の唄(東スポLUV)
14.BABY LOVE feat.将絢
15.Dear MaMa
16.NEXT EPISODE
17.ZZ CAMP FIRE feat.ZZ PRODUCTION

★★★★★★☆☆☆☆

1stアルバム『DREAM』発表以降フジロック出演も果たした、「横浜ドリームランド出身」の1MC1DJ・サイプレス上野とロベルト吉野の2ndフルアルバム。2009年1月21日発売。

INTRO」から挨拶代わりの「サ上とロ吉」にかけては、現場で見るととんでもなく楽しいとの評判をあちこちで聞くそのスタイルをそのままブチ込んだ流れ。現場で聴けばとんでもなく楽しいのが想像出来る一方、CDだとサイプレス上野のコールが一方通行に流れてくるだけで、客がレスポンスするために用意された拍の間には逆に虚しさが残る。ライブでの盛り上がりのために誠心誠意取り組む様が楽曲の作り方からも伺えるからこそ、これをCDにコンパイルしないのもひとつの手なのではないか、と酷なことを考えたりもした。

IT'S MY TURN」や聴き手を置いてきぼりで勢いだけピカイチな「PRINCE OF YOKOHAMA」など、他のライブ向けと思われる楽曲も押し並べてパンチは弱い。結局「ライブだと映えるだろう」なんて条件付きの回りくどいフォローも無駄なところで、要するにイマイチなのだ。

例外なのが、「FEEL LIKE DANCE」と「MASTERオブお家芸」。前者はリズムを滅茶苦茶に引っ掻き回すギターをその都度ベースとドラムでバチっと締め直すSLY MONGOOSEの技術でもっただけの楽曲だが、事実その点での聴きごたえは十分。後者はRHYMESTER「ONCE AGAIN」より一足先にBACH LOGICと共演した宇多丸が、リリックにまさかのMISTA O.K.I.を投入し、サイプレス上野顔負けの尻上がりヴァースを披露する。個人的に、啓蒙的な楽曲のときは押し付けがましいところが大嫌いな宇多丸だが、こういう盛り上がるための言葉遊びでリスナーを捕獲しにかかるときの彼は、地頭の良さが見え隠れして本当に巧いと思う。

また、「WONDER WHEEL」や「START LINE」、「Dear Mama」のように、自分を冷静に見つめ直したり、音楽に救われてきた自分を真摯に語る曲については、CDに収録してこその曲だと言える。こうした曲はライブでやるのももちろんだが、それ以上に「意志を伝える」ための大切な楽曲だからこそ、きちんとリスナーに坐して聴いてもらう環境に置くことが必須だからだ。これらの曲は、打って変わってCDにコンパイルしたことに価値がある楽曲と言えるだろう。

熊井吾郎作の「BABY LOVE」のような仰々しい泣きの音も、この手のトラックの専門家・将絢を組み込んで綺麗に調理している。結局、専門分野でド派手に空振った部分もいくらかはあるが、所々で実力派の底力は見せてくれる作品だとは思う。

そして、前述のように、これまでの作品よりも真面目に向き合った楽曲が多くなった。そのことから遊び心が減ってつまらないとのとの声もあるだろうが、個人的には特に気にならない。おちゃらけて騒ぐ彼らの人間臭さが魅力なのだとしたら、遊んでいるだけではない、その裏でこうやって悩む姿だって、同様に人間臭くて良いじゃないか。とは言ってみたもののその結果がいまひとつパッとしなかったのが今回だったわけなのだけれど、それは次回作に期待ということで。飲んで騒いで笑って、翌朝何も覚えてないアホな彼ら像だって、ラストのやかましいことこの上ない「ZZ AMP FIRE」を聴けばわかる通り、クルー全体で保持出来てるから大丈夫、と信じたい。


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